第41話 幼馴染と同棲1
「それじゃあ私たちは行ってくるから、澪ちゃん、航のことお願いね」
「任されました!」
5月3日、ゴールデンウィークが始まる日のお昼時、俺の家の玄関前で、母さんと澪ねぇちゃんがそんな会話を交わしている。
「航、澪ちゃんに迷惑かけないようにするのよ? あと、ゴムは絶対付けてね」
「うるさいよ! 早く行け!」
「つれないわねぇ」
とんでもないことを言い出した母親を玄関から追い出し、さっさとドアを閉める。急に爆弾を投下されるこっちの身にもなってくれ。澪ねぇちゃんもいるんだぞ。
「ごめん、澪ねぇちゃん。母さんが変なこと言っちゃって」
「あっ‥‥えっと‥‥うん‥‥大丈夫‥‥」
「いや全然大丈夫じゃないよね?」
口では普通を装っているが、目は泳いでて、俺と目が合わないし、顔は耳まで真っ赤だし、変な汗もかいてるしで、あからさまに挙動不審になっている。
「ほんとに気にしなくていいから。絶対そんなことにはならないって約束する」
「いや‥‥えっと‥‥」
俺が強くそう言うと、澪ねぇちゃんは余計目を泳がせる。この感じ‥‥何か隠してる?
「澪ねぇちゃん‥‥なんかあったの?」
「いや別に‥‥? あわよくば、航くんとの既成事実を作っちゃおうなんて、ぜ、全然考えてなかったけど?」
「はぁ‥‥絶対にしません」
とりあえず、澪ねぇちゃんの幻想は粉々に砕いておいた。
「さてと、お昼ご飯どうしよっか」
正気に戻った澪ねぇちゃんと一緒に、お昼ご飯のことについて話し合う。一応、母さんから3日間の二人分の食費として、そこそこの金額のお金を預かっている。出前を取ったりもできるけど、毎回そうしていると、さすがにお金も心配なので、できるだけ自炊したいところ。
「冷蔵庫の中身は‥‥あんまりないな。澪ねぇちゃん、俺がなんか適当に作るから、スーパーに行ってきてもいいかな?」
「え、航くん、お料理できるの?!」
そ、そんなに驚かれることなのかな。イマドキ、料理ができる人なんて珍しくないし、普通のことだと思ってたんだけど。
「うぅぅ、せっかく私のお料理で、航くんの胃袋を掴むチャンスだと思ったのにぃ‥‥」
「どうせこれからもご飯を食べることはあるんだし、その時に澪ねぇちゃんの手料理を食べさせてくれると嬉しいな。とりあえず、お昼は俺が作るからさ」
がっくりとうなだれる澪ねぇちゃんに、できるだけ優しく声をかける。まだ、初日の昼だし、これからも澪ねぇちゃんに料理をしてもらえる機会はあるわけだから、その時の楽しみにしておこう。
「うぅぅ‥‥わかった。でも、私も一緒にお買い物行く」
「いいよ。一緒に行こうか」
なんとか気を取り直してくれた澪ねぇちゃんと一緒にスーパーに行く準備をする。さて、何を作ろうか。いつもだったら、そんなに緊張はしないけど、澪ねぇちゃんに振舞うことを考えると、多少怖くはなる。
いつもより気合を込めて準備するか‥‥。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます