第40話 幼馴染と告白

「――ということなんだけど、澪ねぇちゃん、どうすr――」

「ありがたく受けさせてもらいます」

「そう言うと思ってた」


 明くる日の昼休み、俺は昨日、母さんに言われたことを澪ねぇちゃんに話していた。なんとなく分かっていたけど、澪ねぇちゃんは俺の提案に即答でイエスと答え、ゴールデンウィークの間は、俺と澪ねぇちゃんは一緒に生活することが決まった。


「航くんと一緒に過ごせるなんて夢みたいだなぁ。今から楽しみだもん」

「そうだね。だから、澪ねぇちゃんも頑張ってね」

「うん! よーし、やるぞー!」


 右手で拳を握り、やる気に満ち溢れている澪ねぇちゃん。これなら、休みの間仕事に追われるなんてことはないだろう。


「あ、そういえば――」


 ふと、澪ねぇちゃんが何かを思い出したように声をあげる。


「航くんは、どうして私と一緒に生活することにしたの? 今までだったら、絶対断ろうとしてたじゃん」

「あー‥‥」


 澪ねぇちゃんからしてみれば、そんな疑問が出てくるのは当然か。確かに、今までの俺だったら絶対断ってただろう。俺が今回のことを承諾したのは、俺が澪ねぇちゃんの気持ちにちゃんと向き合うと決めたからだ。そのことに、母さんは勝手に感づいていたけど、澪ねぇちゃんはそうはいかないし、ちゃんと言っておくべきなのだろうか。


「‥‥澪ねぇちゃんは、ずっと俺に対して気持ちを伝えてくれてたからさ。俺も、ちゃんとその気持ちに向き合うべきなのかなって‥‥。この前の観覧車でのキスから、そういう風に思うようになったんだよね」


 あれは、俺も嬉しかったし‥‥。


 最後の方は言葉にすることはなかったが、なんとか、最近、自分が考えていることを、俯き加減でぽつぽつと話すことができた。あんまり大きい声で言えるほど、立派なものでもないし、自信を持てるようなことでもないから、小声になってしまったが。


「‥‥澪ねぇちゃん?」


 俺が顔を上げると、澪ねぇちゃんは目を丸くして、驚いたような表情で俺の顔を見つめてきている。な、なにかあったのだろうか‥‥?


「えっと、澪ねぇちゃん‥‥? 俺の顔に何か付いてる‥‥?」

「そ、それって‥‥」

「ん?」

「わ、私と結婚してくれるってことですか?!」

「うん、それはまだ早いかな」


 机に身を乗り出して迫ってくる澪ねぇちゃんに、冷静に返す。なんとなくそんなことを言ってきそうだとは思ってたから、今更驚いたりなんてしない。我ながら、だいぶ澪ねぇちゃんのノリに慣れてきたなと思う。


「そっかぁ‥‥やっと航くんが、私との結婚に前向きになってくれたのかと思ったのにぃ‥‥」

「まぁ、まだ俺は高校生だし。澪ねぇちゃんの気持ちに向き合うことは決めたけど、そこまで責任を負えるほど、俺は覚悟を決めれてはないからさ」


 そう、‥‥俺が澪ねぇちゃんと一緒になるには、今の俺には荷が重すぎる。だから、俺も澪ねぇちゃん以上に頑張らないと‥‥。


「あ、やば。もうお昼休み終わっちゃう! 私、次授業あるんだった! ごめんけど、もう行くね!」

「あ、うん。頑張って」


 そう言ってバタバタと教室を出ていく澪ねぇちゃん。その場に取り残された俺は、椅子に背中を預け、肩の力を抜く。


(連休‥‥何をしようか‥‥)


 これまで、ショッピングモールにテーマパークと、定番の施設には行ってきた。できるだけ同じところには行きたくないし、どこかいいところがあればいいんだけど‥‥。


「ダメだ。何も思いつかねぇ。紅葉を頼るしかねぇか」


 今まで、全然考えたことがなかったことを、急に考えろなんて言う方が難しい話だ。大人しく、良いところを知ってそうな紅葉を頼ることにする。アイツなら、自分たちにそのつもりはなくても、一緒に出掛けて遊んだりしたことは多いだろうし、良いところを知ってそうな気がする。


「そう言えば‥‥あいつらはゴールデンウィークは何するんだろう」

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