第30話 幼馴染とファミレス2

「なんで澪ねぇちゃんいるの?」

「んー? なーんか若葉ちゃんが誘ってくれたんだよ!」


 お互いに「ねー」なんて言いながら笑いあっている暁と澪ねぇちゃん。いや、いつの間にそんなに仲良くなったの二人とも。澪ちゃんだったり、若葉ちゃんだったり、俺の知らないところで、めちゃめちゃ仲良くなっていない?


「あー、まぁ日向先生いたところでそんなに影響はないから全然いいけどよ」

「いやいいのかよ。めっちゃ適当だな」


 まったく興味なさそうにしている日暮に思わずツッコミを入れる俺。なんでそんなに簡単にあしらえるのかが気になるんだが。


「まぁまぁ。細かいことは気にしないで。それよりも、クレ、妖崎くんに話があるんじゃなかったの」

「あー、そうそう。忘れてたわ」


 さっき頼んだドリンクをちまちまとストローで吸いながら、話を切り出す暁。もうツッコむ気力すらなくなってきたわ‥‥。


「なぁ妖崎。俺と若葉、お前と日向先生でダブルデートしようぜ」

「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥は?」


 なに言ってんだコイツ。俺と澪ねぇちゃんは付き合ってないし、デートなら二人で勝手に行ってくれないかな。


「いいじゃん。面白そうだし」

「うんうん! 四人で遊ぶの楽しそう! この前は、偶然鉢合わせただけだし、今度はちゃんと遊びたい!」


 えぇ‥‥。なんで二人ともそんなに乗り気なの。日暮と暁はともかく、俺と澪ねぇちゃんは教師と生徒だぞ。バレた時の危険性が高い。


「却下だ却下。頼むからデートは日暮と暁の二人で行ってくれ。俺と澪ねぇちゃんはバレた時が怖い。この前、ショッピングモールで出会ったときに言っただろ。俺と澪ねぇちゃんは教師と生徒なんだ」

「えー、けちー。いいじゃんかよー。遊びに行こうよー」


 俺の意見に澪ねぇちゃんは、口をとがらせて抗議の意を示す。そんな顔されても嫌なものは嫌なんだ。


「そんな堅苦しいこと言うなよ。ちょっと出かけるだけじゃんかよ」

「そーそー。一緒に遊ぼうよ」

「嫌だ。断固として拒否する」

「ったく‥‥仕方ねぇ奴だな」


 やれやれといった様子で、ため息をつく日暮。そして、すぐに真面目な表情になって、俺にぐいっっと顔を近づけてきてこう言う。


「お前と日向先生のこと、学校にばらまくぞ」

「はぁっ!?」

「やめてよ!?」


 澪ねぇちゃんもダメージを受けているが、俺もさすがに驚く。モールでは、黙っておくといったはずだ。


「いやなら、ダブルデートの件、承諾しろよな」

「それはずるだろ!?」

「だったら来い」

「ぐっ‥‥」


 こいつ、めっちゃニヤニヤしてやがる‥‥。俺が断れないことを踏んでるから‥‥。


「‥‥わかったよ。行けばいいんだろ」

「最初からそうやって素直になればいいんだよ」


 はぁ‥‥。なんでこうなっちまうんだろうなぁ。またこの前みたいに、知り合いと出会ったりすることがなければいいんだけどなぁ。


「うぅ‥‥やめてよ? ぜったい、ぜーったい私と航くんとのこと言わないでよ?!」


 涙目になりながらずっと机の端っこの方で、縮こまっている澪ねぇちゃん。そんなにおびえなくてもいいのに‥‥。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る