第23話 幼馴染とコーヒー

「えっぐ……ひっぐ……」

「澪ねぇちゃん泣きすぎだよ」

「だってぇ…………」


 映画を観終わったあと、俺はずっと泣き続けている澪ねぇちゃんの肩を抱きながら、映画館の外へ向かっていた。


「最後……主人公と……ヒロインの子が………結ばれでよがっだよぉぉぉ……!」

「そうだね。とりあえず、ここを出てからにしようか」


 後ろから歩いてくる人の邪魔にならないようにして、澪ねぇちゃんを連れて歩く。澪ねぇちゃんは、

 ひたすらに泣き続けているせいで、足元がおぼつかない。



「澪ねぇちゃん、ひとまず落ち着いた?」

「うん……ありがと」


 俺たちは、映画館から、モール内に併設されているカフェへと移動し、澪ねぇちゃんが泣き止むのを待っていた。


「それにしても、澪ねぇちゃんがあんなに泣くなんてね」

「うん。私、感動系の映画とか見たら全部泣いちゃうんだよね。今回みたいになることは少ないけど」


 アイスコーヒーを啜りながらそう語る澪ねぇちゃんは、さっきまで号泣していたとは思えないくらい凛としている。こうしてみると、澪ねぇちゃんは、本当に大人びているし、かっこいい。


「航くん?私の顔になにか付いてる?」

「ううん、ごめん。ちょっと考え事してただけ」

「本当はそんなこと言って、私に見惚れてたんじゃないの?」


 ちょっといたずらっぽく聞いてくる澪ねぇちゃん。


「うん。そうかもしれない」

「………ふぇっ?!」


 俺がそう言うと、澪ねぇちゃんのいたずらっぽく笑っていた顔が、今度は赤く染まり、口をポカンと開ける。


「澪ねぇちゃん?」

「航くんが生意気だぁ………」

「えぇ……?」


 両手で顔を覆いながらそういう澪ねぇちゃん。俺は素直に思ったことを言っただけなのに、なんでそれで生意気だと言われるのだろうか。


「おーい。澪ねぇちゃ〜ん?」

「うるさい。今話しかけないで」

「えぇ……」


(他でやってくれないかな……)


 その場にいた人のブラックコーヒーは、その日なぜか甘くなったそうだ。



 カフェで休憩した後、俺たちはモール内を散策していた。

 本屋に行ったり、アニメ関連のグッズを売っている場所に行ったりした。


 そんなことをしているうちに、少しだけ外が薄暗くなってきた。


「ねぇ航くん?」

「ん? どうしたの?」

「最後に行きたいところがあるんだけどいいかな?」


 澪ねぇちゃんが首を傾げながら聞いてくる。別に俺は断る理由もないので頷く。


「ありがと。それじゃあ私に着いてきて」



「ここは………服?」

「そそ」

「でも、ここメンズじゃない?」


 澪ねぇちゃんに連れてこられたのは服を扱っているお店だ。それはいいのだが、ここのお店は基本的に男性用のものを扱っていて、女性用のものは少ない印象だ。


「そうだよ。だからここに来たんだし」

「え?」

「航くんの服選んであげようと思って」


 なぜか澪ねぇちゃんは胸を張って、張り切った様子である。


「えっと……なんで?」

「だって、今日は航くんに助けて貰ってばっかりだし、色々プレゼントも貰ったし! それに─────」

「それに?」

「─────航くん、色々着せ替え甲斐がありそうだし!」


 あーなるほど。要するに俺の事をおもちゃにしたいってことか……。


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