第22ー2話 幼馴染と映画

 日暮たちと別れてから30分ぐらい経っただろうか。澪ねぇちゃんもだいぶ落ち着いてきて、今はフードコートでのんびりと談笑している。


「ところで、この後どうする? 別のお店回ってみる?」

「うーん、せっかく来たのにもう帰るっていうのももったいないし、もうちょっといろいろなところ見て回ろうか」

「了解。それじゃあさっそく行こうか。あんまりここにいすぎてもほかの人の迷惑になっちゃうし」


 そう言って、俺と澪ねぇちゃんは席を立つ。食べ終わった後のごみなどを片づけを行い、相変わらず込み合っている人の合間を縫うようにして、フードコートを出る。



「それで‥‥どこ行こうか?」

「うーん、さっきは雑貨屋さんに行ったから‥‥映画でも観に行ってみる?」

「いいね。そうしようか」


 そう言って俺たちは、映画館へと歩いていく。


「と言っても‥‥映画って何観るの? 俺、今の時期に公開されている映画とか知らないんだけど」

「うーん、私もあんまり知らないんだけど‥‥まぁ行けば何かあるでしょ」


 無計画な状態で映画に行くこともなかなかないだろうけど、澪ねぇちゃんの言うように、行けば何かしらの映画は公開されているだろう。



「やっぱり映画館も結構混んでるねぇ‥‥」


 映画館に着いて早々、澪ねぇちゃんがうんざりしたような声を上げる。フードコートよりはマシとは言え、それでも人が多いことに変わりはない。


「うーん、今の時間だと恋愛映画が一番近いかな?」

「そうだね」

「私はこの映画でいいけど‥‥航くんは?」

「俺もいいよ」


 お互いが同意したことで、俺たちは恋愛映画のチケットを買う。幸いにも、後ろ側の席で二人並んで座れる席があったので、その席のチケットを買う。前側だと、ずっとスクリーンを見上げてないといけないから、首が疲れるんだよな。


「ポップコーンとかどうする?」

「俺はさっきお昼ご飯食べたばかりだし、俺は飲み物だけでいいかな」

「そうだよね‥‥」


(ん・・・・?)

 澪ねぇちゃんの表情が一瞬曇った気がするが、気のせいだろうか。


「航くん、何飲む?」

「うーん、無難にオレンジジュースかな」

「わかった。じゃあ私が買ってくるから、航くんはここで待ってて」

「え?」


 そう言い残して売り場へと走っていく澪ねぇちゃん。


「いやいや。俺も一緒に行くよ。お金も払わないといけないし」

「私が払う! さっき航くんにプレゼントももらったし」

「いやいいよ。あれは俺が勝手にやったことだし。気にしないでって」

「だーめ。私が払うの! 大人として!」


「あの、お客様~?」


 俺と澪ねぇちゃんが言い合いをしているうちに、どうやら俺たちの順番が回ってきたらしく、店員さんに声をかけられる。


「「あ、すいません」」

 二人で声をそろえて謝りながらレジへと並ぶ。


「えーと、オレンジジュースが一つと―――」


 そう言いながら澪ねぇちゃんの方を見ると、澪ねぇちゃんは何やら、店の上側へと並べられたメニュー表の一点を見つめている。


(あー、そういうことか)


「澪ねぇちゃん。何飲むの?」

「あ、あぁ。えっとジンジャーエールで」

「わかりました。ご注文は以上でよろしいでしょうか?」

「お願いしm‥‥」

「あ、待ってください」


 澪ねぇちゃんの言葉を遮り、俺は店員さんに言う。


「キャラメルポップコーンのLサイズ一つもらってもいいですか?」

「え‥‥?」

「かしこまりました。お会計は――――」



「ちょ、ちょっと航くん!」

「ん? どうしたの?


 二人で会計を終えた後、澪ねぇちゃんに引き留められる。


「なんでポップコーン買ったの?」

「なんでって‥‥澪ねぇちゃんが欲しそうにしてたし」

「でも、航くんいらないって‥‥」

「大きいのを二人で分ければいい感じになるでしょ?」


 俺がポップコーンをいらないと言ったのは、一人で食べるのが厳しいと思ったからだ。澪ねぇちゃんは食べたそうにしていたけど、頼もうとしなかったのは、この前学校で言っていたように太るのを気にしているからだろう。だから、二人で分ければお互いの問題を解決できると踏んだのだ。


「まーたそういうことする‥‥」

「アハハ。まぁ許してよ。澪ねぇちゃんも食べたがってたみたいだし」

「むむむ‥‥」


 澪ねぇちゃんは不満そうな顔をしているけど、まぁポップコーンを一人で抱いているし、めちゃめちゃ美味しそうにほおばっているから満足はしているのだろう。それなら問題はないだろう。

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