第22-1話 幼馴染からの告白
今回は、紅葉と若葉メインのお話です。若葉視点でお話が進んでいきますので、ご了承ください。
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「…………………………………」
「…………………………………」
妖崎くん達と別れてから、クレに連れられて、モール近くの広場のベンチに座っている。けど、お互い、道中も、広場に着いてからもずっと無言を貫いている。
気まずい……小さい頃からずっと一緒に過ごしてきたクレとは、不思議なことに喧嘩とかもしたことがない。だから、こんなに気まずくなることは初めての経験で、どうしたらいいのか全然分からない…。
「なぁ」
「ねぇ」
沈黙を破ろうとした私とクレの声が重なる。それでまた、気恥ずかしさを感じてしまい、お互いに黙り込んでしまう。
「私から話してもいい…?」
「っ!……あぁ、分かった」
私は少し声が震えたし、クレからも、緊張しているのが伝わってくる。
「澪ちゃんの言ってたこと……私のことが好きって本当なの?」
「っ!」
私は気になっていたことをストレートに聞いた。あの時、クレは黙るだけで、否定も肯定もしなかった。だからここで、クレの気持ちをはっきりさせたい。
もし、澪ちゃんの言ってたことを肯定するのなら……その時は……。
「………あぁ。好きだよ」
「それは…幼馴染として? それとも、1人の女の子として?」
「………………1人の……女の子として……好きだ」
クレの言葉に、思わず目頭が熱くなるのを感じる。言葉にできないくらいの嬉しさが、体の奥から込み上げてくる。大切な幼馴染からその言葉を聞けたことが、何よりも嬉しかった。
「なっ、なんで泣いてんだよ……」
「うっぐ……ひっぐ……だって……嬉しくて」
「そ、そういうお前こそどうなんだよ! ひゅうが先生に指摘された時、なんも言わなかったじゃねぇか。言っとくけど、俺だけ言って、お前は言わないってのはダメだからな」
ずるい。もうとっくに私の気持ちなんて気づいてるくせに……。でも、確かに…クレにだけ言わせるのはずるいよね。
「私も……好きだよ。クレのこと。もちろん、1人の男の子として」
「そ、そうか……」
「うん……」
「…………………………………」
また沈黙が訪れる。けど、この沈黙はさっきと違って、気まずい沈黙じゃない。
だって、横に座っているクレが、もごもごと口を動かして、何かを言おうとしているのが分かるから。こういう時くらいは、少しずるい女の子になってもいいよね。
さっきまでの涙はどこへやら、私は、クレの様子に愛おしさを感じて、気づけば、今の状況を楽しんでいる。
「な、なぁ!」
「………なに?」
「あ、いや………その………なんというか」
もうっ! やっと口を開いたかと思ったら、またもごもごし出したんだけど! 男の子なら、ハッキリ言ってくれないと! 私、我慢できなくなっちゃうよ?
「なぁに?」
「いや……えっと……」
あー! もうっ! 焦れったい! こうなったら私からやってやるんだから!
「………ねぇ、クレ? ちょっとこっち向いてくれない?」
「なに……んん?!」
私は、こっちを向いたクレの顔を引き寄せて、思いっきりキスをしてやった。もちろん、唇に。
「んっ……んっ……ぷはぁ! い、いきなり何すんだよ!?」
「なにって………キスだよ?」
10秒ほどキスを続けた後、クレが顔を真っ赤にさせながら抗議してくる。さすがに舌を入れることはしなかったけど、それでも、クレには効果てきめんだったみたい。
「そうじゃなくて! なんで急にキスしてきたかを聞いてるんだよ!」
「クレが中々私の聞きたい言葉を言ってくれないからだよー!」
「ぐっ………」
私の言葉に唇を噛みしめるクレ。その様子がすごく可愛くて、もう1回キスしたくなったけど、我慢する。
「ほら、早く言ってよ」
「急かすなよ……まだ心の準備が……」
「キスしたのに心の準備も何も無いでしょ」
「だぁー! わかったよ! 言うから少し待ってくれ!」
そう言うと、クレは、何度か深呼吸を繰り返す。そうして、ゆっくりと顔を上げ、わたしを見つめてくる。私も、クレの目を見つめ返して、じっと待つ。
「暁 若葉さん。あなたのことが大好きです。……僕と…付き合ってください!」
そう言って勢いよく頭を下げるクレ。
ずっと待ち望んでた言葉を、やっと聞くことが出来た。最愛の幼馴染………いや、最愛の『彼氏』から。
「うん! 喜んで!」
私の長年の恋が実った瞬間だった。
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