第17話 幼馴染と待ち合わせ
「財布持った。スマホも持った。格好、髪型よし‥‥そろそろ行くか」
最後の身だしなみチェックを終え、俺は家の扉を開ける。
週末、澪ねぇちゃんとの約束通り、俺は澪ねぇちゃんと遊びに行こうとしていた。
「うーん、春になったとはいえ、まだ少し肌寒いなぁ。ジャケット着るのは正解だったな」
家を出て
ちなみに、今日の俺は白のニットを中に着て、その上から紺色のジャケットを羽織っている。下はカーキのパンツを合わせているから、多少は大人っぽく見える‥‥はず。
澪ねぇちゃんと出かける以上、大人っぽく見せた服装じゃないと、澪ねぇちゃんに申し訳ないので、少し頑張ってみたつもりではある。異論は受け付けない。
「待ち合わせ場所は駅前の広場だったよな‥‥まだ約束の時間には早いし、まだ来てないよな」
澪ねぇちゃんに「10時に駅前広場に来てね」と言われたのが昨日。わざわざ俺の家に来て言いに来たものだから、それを聞いた母さんが「デート?!デートなのね!?」と女子高生のようなノリで騒ぎだしてしまった。正直、とても面倒くさかった。
「まだ15分早いのか‥‥さすがに早すぎたかな‥‥ん?」
待ち合わせ場所にやってきたが、まだ約束の時間までは余裕がある。だから、まだ澪ねぇちゃんも来てないと思っていたのだが。
「あれ、澪ねぇちゃんかな‥‥?」
少し離れた場所に、澪ねぇちゃんのようなシルエットを見つける。特徴的なナチュラルブラウンの髪は、遠くからでもよくわかる。けど、少し気になることもあった。
「あれ‥‥もしかしてナンパ‥‥?」
澪ねぇちゃんの近くには、男二人が、澪ねぇちゃんのことを囲うようにして立っている。しかも、その二人はしきりに澪ねぇちゃんに話しかけているように見える。
「はぁ‥‥いきなり面倒くさいなぁ‥‥」
澪ねぇちゃんの方へ近づくにつれ、澪ねぇちゃんの様子もはっきり分かってくる。
露骨に嫌そうな顔をしてるし、知り合いとかではないだろう。ナンパとみていいはずだ。
「あの様子だと、簡単には引いてくれないよな‥‥」
そう思った俺は、近くの自販機で温かい飲み物を2つ購入し、少し駆け足で澪ねぇちゃんの方へと近づく。
「澪。ごめん、待たせちゃったかな。それにしても、今日ちょっと肌寒いね。温かい飲み物でもどう?」
出来るだけ冷静な口調でそう言いながら近づくと、澪ねぇちゃんはさっきまでとは違い、パァァと顔を明るくする。
「ううん、大丈夫! 気遣ってくれてありがと!」
「気にしないで。それじゃあ行こうか」
「「いやいやいや、待て待て待て」」
完全に存在を無視されていたナンパ野郎二人が、そこで待ったの声を上げる。
できるだけ関わりたくなかったけど、やっぱり簡単にはいかないか。
「なんですか?」
「なんですか? じゃねーよ! 今俺たちがそいつに声かけてたの! それなのに、なんで無視して二人でどこか行こうとしてんの!?」
「なんでって‥‥澪は僕のツレなので。ナンパなら他当たってくれません?僕たちの邪魔しないでほしいんですけど」
「あ、はい。すんませんした‥‥」
少し強い口調でそう言うと、ナンパ男たちは、すごすごと帰っていった。あんまりしつこいタイプじゃなかくて助かった。さすがに殴り合いの喧嘩にまで発展してしまったら、勝ち目はないからな。
「ふぅ‥‥ごめん澪ねぇちゃん。来るの遅くなっちゃった」
「ううん、大丈夫。私が早く来過ぎただけだし。それより―――」
澪ねぇちゃんは、そこでいったん言葉を区切り、少し俯く。
そして、すぐに瞳をキラキラさせた状態で、顔を上げる。
「もう一回『澪』って呼んでくれない?!」
うん、絶対言われると思った………。
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