第7話 「幼馴染と決意」
「ごちそうさまでした。お昼ご飯、ごちそうになっちゃって申し訳ありません」
「いいのよ、気にしないで。久しぶりに遊びに来てくれたお礼よ」
母さんの作ったお昼ご飯をご馳走になり、満足感に浸っている中、澪ねぇちゃんと母さんは談笑をしている。澪ねぇちゃんは、母さんの手料理を久しぶりに食べることが出来て、かなり嬉しそうだ。
「私もずっと海月さんや航くんに会いたいと思ってたので。本当に、今日の出会いには感謝しかないです。昔の約束も果たせそうですし……」
「ふふ、そうね。私も、澪ちゃんのこと全力で応援してるわ」
約束って、さっき話してた俺と澪ねぇちゃんの結婚があーだこーだっていうやつだよなぁ………。あれ、本気なのかなぁ……
「航、こんなに素晴らしい人をお嫁さんにするんだから、航自身もちゃんとしないとダメよ?」
「うん、分かっt………いや、なんで結婚する前提なの?」
母さんがさも当然のような話し方をするせいで、思わず流されかけたが、寸前で思いとどまる。なぜさっきから、結婚を前提とした話をしてるんだろうか。俺と澪ねぇちゃんは、付き合ってもないし、そもそも生徒と教師という関係なのに。
「ちぇー、航くん、なんで結婚してくれないのさー。ほら、私と結婚すれば、この大きい胸が揉み放題なんだよ?男子高校生の夢でしょ?」
澪ねぇちゃんが、自分の胸を強調するように見せてくる。
……まぁ、澪ねぇちゃんの胸が気にならないと言えば嘘にはなるけど……でも、さすがに結婚することは出来ない。
「何回も言ってるけど、俺と澪ねぇちゃんは教師と生徒なんだから。もし付き合ったり、結婚したりして、それがバレたら、澪ねぇちゃん教師の仕事出来なくなるんだよ?」
「別にいいよ?」
「良くないよ?!」
澪ねぇちゃんのあっけらかんとした答えに、俺は思わず大きな声でツッコミを入れる。なんで職を失うかもしれないのに、そんなにあっけらかんとできるの?!
「別に私はどうしても教師になりたかった訳じゃないんだよね。だから、そんなに職を失うことは怖くない。そもそも私、結婚して、安定してきたら仕事辞めるつもりだし」
えぇ………なんか、澪ねぇちゃんの頭の中で完璧(?)なビジョンが出来上がっちゃってるよ……。
「そんなこと言われても、今は澪ねぇちゃんと結婚することは出来ないよ。俺もまだ学生だし、もしかしたらこれから、澪ねぇちゃんが大好きになる人が現れるかもしれないし」
後者のことを言う時に、少し心がモヤッとしたのは気のせいだろう。俺の言っていることは嘘ではない。
学生の身で結婚なんて法律的に無理だし、そんな覚悟もない。それなのに結婚なんて簡単に決めることが出来るわけがないのだ。
「後者の可能性は一切ないけど、前者は私も分かってる。だから私も今すぐ結婚しようとは言わない。航くんを困らせることもしたくないし。けど──────」
澪ねぇちゃんはそこで一旦言葉を区切り、大きく息を吸う。
「航くんが高校を卒業したら、ぜっっったい結婚するつもり。それに航くんも『今は』って言ってたし、これから結婚することに前向きになってくれる可能性もあるわけだからね」
そう言って澪ねぇちゃんはパチンとウインクをする。
今も既に困らせられてることや、澪ねぇちゃんに好きな人ができる可能性をバッサリ切られたことは置いておくけど、しばらくは澪ねぇちゃんに求婚されることはなさそうだ。
俺はそのことに一安心する。
「あ、そうだ。航くんに私との結婚に対して前向きになってもらうために、これからガンガン攻めてくから、覚悟しててね♪」
前言撤回
求婚どころか、もっと酷いことになりそうである。
「青春してるわねぇ」
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