第4話 森とギルドとお叱りと

森に入ってからしばらく草やきのみ、きのこ

に芋類などを【鑑定】し、食べられるものや

薬になるもの売れそうなものを選んで集めて

いたが、量が多くてバックが溢れてしまった。


「なんとかして持っていけないかな」


欲張りな俺はどうしても集めた素材を

ここに捨てていくのを避けたかった。


スキル【圧縮】を使いきのみを小さくし

持ち運びやすいようにする。

 これで問題は解決したと思ってしまうが圧縮を解除してもきのみは縮んだままだった。

 やはり物体を空気のように圧縮してからもとの状態に戻すのは難しいようだ。


だがここで終わるルクスでは無い!


「【圧縮】」


また圧縮を使うだが、今度は肝心の圧縮した

ものが見当たらない。


だが圧縮を解除すると

どこからともなくきのみが現れた!


それも元の大きさのままに。


実は今回圧縮したのはきのみでは無い。

その周りの空間を圧縮したのだ。


なんとこのスキル【圧縮】は空間すらもその

対象であるらしい。

さすがユニークスキルぶっ壊れ性能である。

物体とは空間があるから存在でき、形を保つ

ことができる。なので空間が圧縮されても

それに合わせているだけで物体自体が縮んでいるわけではない。きのみが無事だったのはそういう寸法なのだ。


ただ相当に集中が必要らしく負担がすごい。


だが脳内に流れ込んできた情報によると

どうやら新しいスキルを獲得したらしい。



スキル【空間収納ストレージ


!!なんと

言わずもがな超有能スキルであるストレージをゲットしてしまった。

これでいちいち圧縮しひとつひとつ管理する

必要がなくなったわけだ。とてもうれしい。




興奮を落ち着かせて、さっそく集めた素材をストレージに収納していく。

そんな時

前方から『グギギギ 』と音がした。




エンカウント!


緑色の肌に醜くい容姿。


ゴブリンだ。




数は2体。きのみにでもつられたのだろうか?


とにかくこの世界に来てから初めての戦闘

である。気を引き締めていこう。


 奴らの目的が何なのかはわからないが、明確な敵意もとい殺気をこちらに向けてきていることはわかる。


「グガァ」


最初に1体が襲いかかってきたので、腰に付

けてたナイフを引き抜き敵の心臓部を目掛け

突き刺した。


「ギ、ギャアアア」という、耳元に響く断末魔の叫びに気を取られることなく魔力を練る。

絶命したのを確認しナイフを戻す。


「グギッ」


「【ファイアーアロー】」


もう1体は仲間がやられ怯んでいたので、他の仲間を呼ばれる前にファイアーアローで頭部と腹部を貫いた。

こちらは、断末魔をあげさせることなく倒すことに成功した。


あっさりとしているがこの世界での負けは死である。

余裕のない戦闘なんてまっぴらごめんだ。

後になって考えればもっと上手く戦うこともできたと思う。

魔法やスキルを鍛えなければ。

ちなみにスキルも魔法と同じように鍛えれば

スキルレベルが上がり性能が向上するらしい。

頑張り甲斐があっていいな。



残ってた素材を全て収納し、ゴブリンの身体

から魔石を回収する。魔石は魔物の魔力の源のようなものであり魔力を取り出すことができ、冒険者ギルドなどで買い取って貰える。 だいたいは大きいものの方が価値が高いのだがゴブリンの魔石は小さい。


魔石も収納し音を頼りに近くの小川に向かっ

て移動し始める。



川辺には鹿の群れが水を飲んでおり

攻撃するのを躊躇ったがこればっかりは迷っ

てはいけない。

俺の食生活のため。

セシリアの笑顔のために。


「【ファイアーアロー】」


2頭を仕留めることができた。解体はギルドの

人に任せればいいか。鹿の肉体の鮮度を保つ

ために魔力で全体を覆ってからストレージに

収納する。

あとは水を確保しよう。

綺麗な水は貴重だからな


小川に近づくと、水面に反射する自分の顔が見えた。

髪はセシリアと同じ銀色で

耳も少し尖ってる

瞳はポピーレッド

鼻筋が通っていて

潤いのある唇

綺麗な形の眉

全体のバランスがいい 

 母が美人でセシリアがあんなにかわいいんだから、大体わかっていたけどなかなかの美少年である。

前世では地味めだったのでありがたい。

 

 少し残念なところは全体的に痩せていることだろう。これはセシリアにも言えるので早く食べさせてやらないと


水をストレージに直接【収納】し森を引き返す。

途中では目についた素材だけを鑑定し集める


 またゴブリンに出会ったが初撃のファイアーアローで軽く倒した。


 森を抜け草原を抜けスラム街に戻り今度は街のギルドを目指し歩く。

ギルドは街の中心部にあり少し遠い。


大きな通りを歩いている途中視線を集める事が多々あったがあれはなんだったんだろう?服がボロいからかな?

子供がナイフを下げているからか?


 それはさておきギルドの前まで着いた。

2階建ての立派な建物で看板は剣と魔法の杖が交差したデザインになっていてここが冒険者ギルドだと一目でわかる。


 大きな扉を開け中に入るとカウンターや討伐依頼の掲示板がある他に酒場も併設されており剣を持つ大男、ローブを纏い杖を持つ女性、武器を持たない半裸の男など様々な人がいた。

 

 一瞬視線を集めるが大半がすぐ視線を外す

それを気にせず1番近くのカウンターの綺麗なお姉さんに話しかける。


「お姉さん」


お姉さんは僕に気づくと少し驚いてから

「やったかわいいショタがきた。」と小さく呟いて(エルフの耳はいいので聞こえた)


「あら、どうしたのボク?」


と聞いてきた。

俺は若干照れながら


「買い取って欲しいものがあるんですけど」


と返すと


「かしこまりました。こちらのカウンターにお出しください」


 そう言われたのでカウンターにストレージから取り出したゴブリンの魔石と鹿をまるごと乗っける。


「へ?ど、どこから……」


「あと実は鹿はもう一頭いて解体もお願いしたいんです。出来ますか?お姉ちゃん」


説明するのは難しいし面倒くさい。

何より空間収納のせいで変に絡まれたくはないのでここは、この容姿と子供ならではの可愛さで情に訴えかけ誤魔化す。



「は、はい 承りました。

ですがここだと解体できませんので

裏まで来てもらってもよろしいですか?」


「分かりました」


スキルで魔石と鹿を収納して

まだ戸惑っているお姉さんに案内されギルドの裏の解体場兼素材置き場にやってきた。


「ここの台においてください」


お姉さんに指定された大きな台の上に鹿二頭とゴブリンの魔石、今日森で採った薬草や食べきれない分の食材を置く。


するとお姉さんは真剣な調子で


「キミは何者なの?」

 

と聞いてきた。

どう答えるべきか悩んだが悪い人では無さそうだったので軽く自己紹介をする事にした。


「僕の名前はルクスっていいます。

 魔法と剣が得意です。

 見ての通り貧民街スラム出身で

 

実は小さな妹がいるんですけど

 親はいなくて……

 あまり良いものを食べさせられて

 いなかったんです。

 なので今日は美味しい物を食べさせて

 やるために森に行ったんです。 」




そう言うとお姉さんは感動してくれたようで

少し涙ぐみながら


「そうだったのね……

疑ってしまってごめんなさい

私の名前はモニカっていうの

 困った事があったらなんでも言ってね

 お姉ちゃんが力になってあげるんだから!


 でも、森は気をつけた方がいいわよ。

 最近ね、盗賊の被害が増えたり

 強い魔物が住み着くようになったから」


「分かりました。

 頼りにしますね。モニカ姉ちゃん 」


やはり良い人のようだ。

有益な情報を得る事もできた

そうか。盗賊に強い魔物か…

気をつけよう。



それから専門の人に鹿を解体して貰い食べる分を引き取り残りは売った。

台に乗せた物は合わせて銀貨15枚になった。


銀貨もストレージに収納し、モニカさんにお礼を言って、ギルドを出ようとすると


「おいお前。

便利な力持ってるそうじゃねえか

 暇なら明日俺達に付きあえよ 」   


高圧的な強面の冒険者に絡まれてしまった!


どうしよう。

何をさせられるか分からないし断ろうかな

でも断って怒らせたら面倒くさいのかな?

スキル【圧縮】を人間に試す良い機会かも!

それともいつも通りの空気圧縮かな?

とか考えていたら


その男の後ろの人が話し掛けてきた。


「やめろよロンメ。そんな態度は 

 すまんなうちのが変に絡んでしまって

 

 でも明日3人でゴブリン退治に行くんだけど

 人手が足りなくて荷物持ちが必要なんだよ

 お金はきちんと出す。

 実は今回の報酬は金貨30枚なんだ

 どうかなキミも来ないか? 」


金貨30枚!!

この世界の金貨1枚の価値は大体10万円。

正直貧乏な今の暮らしには喉から手が出るほど欲しいお金である。スキルを使えば魔石も沢山持って帰る事ができるので追加の報酬にも期待できる。

そしてこの世界では12歳にならないと1人前の冒険者として認められない事が多く、10歳までは1人で依頼を受ける事さえ出来ない。

経験を積む為にもこの誘い受けよう。


「いきます!」


「おぉ よろしく頼む」




明日の予定が決まった所で

今度こそ家に帰る。

大通りを抜けスラム街に戻った時には

すっかり日が暮れてしまっていた。


「ただいまセシリア」


と言い家に入ると、

シュタタタっと猛スピードで


「お兄ちゃんおそい!」


といってセシリアが抱きついてきた。

はやい

ちょっと痛い

でもかわいい


「ごめんねセシリア」


抱きついてきたセシリアの頭を撫でながら

許しを乞うと


「ゆるさないもん」


と言う返事が返ってきた。

セシリア様は相当お怒りのようだ。

いくら謝っても

プイッとそっぽを向いてしまう。


 それでも小さな手で俺の服を掴んでちっとも離そうとしない所がまた可愛いのだが。



「仕方ない。お肉を使った料理作るから待ってるんだよ」


このままご機嫌斜めのままでは(俺の精神が)まずい。


なので鹿の肉を料理スキルや火の魔法で焼き森で採ったキノコと少量の塩胡椒を合わせて

出すことにした。

もちろんセシリアの分は細かく切って

 

「どうぞ召し上がれ」


セシリア期待に満ちた表情でお肉をその小さな口に運ぶ。

すると


「おいしいー」


と顔を綻ばせ、機嫌を戻すことに成功した。

頑張った甲斐があるというものだ

これからももっと美味しい物を食べさせる

そう誓ったのであった。


 


ちなみに夜はセシリアの希望により

抱き合って寝た。

…事案じゃないよ!

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気が付いたら異世界 何の説明もチートも無く異世界に送られたので自分なりの幸せを見つけたいと思います。 なもべ @namobe

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