第3話 魔法

この世界の親が今はいない。

父親は見たこともないし

母親は2年前に亡くなっている。


母 ソリアは、ハーフエルフでとても優しく、美しい人だった。流れ込んできた記憶の中で恋をしてしまった程だ。

 彼女は回復魔法が得意で俺(ルクス)が怪我をするといつも暖かい言葉と共に癒してくれた。


 だがそんな彼女は魔力枯渇症という病気にかかっていた。

 これはいくら回復魔法の精度が良くても魔力自体がないのなら意味がなく、直すことのできない難病だった。

 5歳の少年には何もできなかった。母から回復魔法について必死に教わったり、薬を探してみたが結果はだめだった。母は生きる為のすべを教え、貯めていたお金などを全て残し、最後に


「ルクス…セシリアのこと頼んだわよ

そして貴方は貴方の幸せを見つけなさい」


そう言い残し、なくなった。


こうしてセシリアと2人で生活するようになったのだ。


♢♦︎♢



「お兄ちゃんどうしたの?」 


 2人で朝食であるオートミールを食べているとセシリアが聞いてきた。



「いやこのあとのご飯について考えてて

セシリアは何か食べたいものある?」


そう聞くとセシリアは


「おにくー」 


と元気に答え、その後


「でもね くろぱんでもいいの!

 あと豆のスープもねそれとそれと…」


と続ける。

彼女なりにお金の事を考えているのだろう。確かに母が残してくれたお金はあるのだが、使うのが渋られる。いざという時に使えないと困るからだ。だからいつもルクスが働き日銭を稼いで食い繋いでいたのだ。


これ以上 こんなかわいい妹にひもじい想いを抱えさせ続けてはいけない


そう強く感じただから

朝食を食べ終え準備をして


「今日は少し頑張ってみる。美味しいのを

 作るから大人しく家で待ってるんだよ」


と言い、家を出る。



「うん! わかった!

 いってらっさい! お兄ちゃん 」 



と返し見送ってくれるセシリアがかわいい。


♢♦︎


さて家から出て、いつもは草を獲って商会に売ったり街の人の手伝いや子供でも出来る仕事(主に雑用)を探すのだが、今日は違う。 


魔法を使うのだ。 


その為に少し離れた森に向かう。 

ちなみに装備は母の形見であり切れ味抜群なナイフとバッグに数個のポーションがある。


森の手前の草原に着いた。


「ここなら人目もないし問題ないか。」


スキル【自己分析】を発動させる


《ステータス》


名前 ルクス 

種族 人族(クォーターエルフ) オス

年齢 7

職業 無

レベル 2

HP 141/148

MP 606/606

攻撃力 D

防御力 F

素早さ C

精神力 B

器用さ A


特異技能ユニークスキル 圧縮 反転

獲得技能スキル 

自己分析 言語理解 育成 魔力感知 魔力操作 詠唱省略 採取 鑑定 調合 料理 暗視 剣術・短剣術 成長促進


魔法適正 火 光

習得魔法

 火属性魔法 レベル2

 光属性魔法 レベル4

 土属性魔法 レベル1

 無属性魔法 レベル1


こんなものか。

やはりエルフの血を引くだけあってMPが高い

これは非常に嬉しい

MPは高ければ高いほどいいのだ

ステータスは子供にしては高いと言っていいだろう。だが戦うのにはとても足りない。

よし まずは火属性魔法を鍛えよう!


右手に魔力を集中させる

そして手のひらのに集め

赤い炎をイメージする

すると手のひらに集まっていた魔力が

揺らめく赤い炎に変わった 

これを球体にして押し出せば


「【ファイアーボール】」


の完成だ。

魔力はあまり込めなかったので空に向かって飛ばした火球はある程度飛んでから空中で魔素となって消えてしまった。

魔法とは魔力によって魔素を操り存在を変えて世界に干渉する能力である。よって自分の魔力を練り込むほどに魔法の威力や持続力が上がるのだ。


「何か的が欲しいな」


さすがに森に向かって打ったりはしてないが

威力を込めて打ち込めないのでは意味が無い


そうだ! 作ればいいのか


「【アースウォール】」


 両手を地面に向け簡易な詠唱を唱え

土属性魔法で幅1m 高さ2mの土壁を作り、

スキル【圧縮】を使い強度をあげる。

土壁はかなり圧縮され縮んでしまったが、


「これで魔力を込めて実験出来るな」


距離を取ってから、もう一度右の手のひらに魔力を集め火球を作り出し放つ。


「【ファイアーボール】」


火球は真っ直ぐ飛んでいって土壁に衝突したが土壁はビクともしない。あれ?

もっと魔力を込め火球を放つが今度も崩れる様子は全くない。適正属性の攻撃は威力が上がり、レベルも下の魔法に遅れを取る事はないのだけど。多分"スキル【圧縮】"が思ったよりもすごいのだろう。


また魔力を込め炎にするが、今度はそれを3つに分け、速度を重視した細長い形状に変えていっぺんに放つ。


「【ファイアーアロー】」


相変わらず壁はビクともしないが戦闘において素早い攻撃はとても重要だ。さらに身体の魔力を集めより早く魔法を発動させ放つ。

そしてこれを繰り返す。


30回くらいやったあたりで火属性魔法のレベルが上がりやっと壁にダメージが入った。【圧縮】を解除して、ファイアーボールを放つと土壁は崩れさった。


よし

気分もいいしさっさと森に入って食料を確保するのだ!

セシリアを待たせすぎる訳にはいかんのだよ

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