第9話 やっぱり犯人は超能力者?

そのあと、瀬川さんは、他人のことなので勝手に話すのは気が引けると言って、何を聞いても「わからない」としか言わなくなった。しょうがないので病院を後にする。


「そのしゅんちゃん、調べてみたら何かしらわかるかもしれないね。」


キャプテンが言うので、僕も頷いて同意する。


「犯人じゃないにしても何かしらありそうですね。僕の力で、彼がどんな状態か、何をして過ごしているか見てみましょうか。」


事務所に戻り僕は能力を使った。能力を使っている時、体は眠っている状態だが、僕の意識は、幽体離脱をしたような感じで、対象者を俯瞰して見ることができる。さらに、その人に入り込むことで五感が共有され何を話しているのかや、その人の感情がわかる。


なので、今回も入り込もうとしのだが、その瞬間、意識が弾かれて体に引き戻される。


「うあああ!」


僕は、声をあげて起き上がった。こんなことは初めてだ。探している途中で目が覚めたことなんかなかったし、ましてや、誰かに気づかれたことなんか一度もない。


「どうした?大丈夫??」


キャプテンが心配そうに僕の顔を覗き込む。


「しゅんちゃん、たぶん自分の部屋にいたんですけど、その隣には、誰かが、いました。でも、それがどんな人物なのか全く思い出せなくて…。」


確かに、しゅんちゃんの隣には人がいた。その人と目が合った瞬間に意識が弾かれた。でも、何も思い出せない。


「もしかしたら、その人"記憶"に関係する能力かも知れません。」


「そうかも」と、キャプテンが考え込むので、僕も他に何か手掛かりはなかったか記憶を辿る。


…!


「あ!あ!待ってください。しゅんちゃん。しゅんちゃん目がありました!!」


僕は、鳥肌がたった。しゅんちゃんは、自分で眼をえぐり出したはずなのに、僕がみたしゅんちゃんには目があり、何の不自由もなく、立ったり歩いたり動いていたのだ。


「うーん、えー。じゃあ、しゅんちゃんは、超再生の能力者かも…?でもなんで、他人の目玉をえぐるんだろうか。えぇ?」


そう言うと、キャプテンは、より一層考え込んでしまった。とりあえず、しゅんちゃんに、何かあることはわかったので、しゅんちゃんと被害者たちの共通点を探すことにした。


1人目の被害者・田中かずきは、しゅんちゃんの同級生。


2人目・中村しんごは、情報なし。


3人目・瀬川さんは、幼馴染。


1人目、3人目は関係がありそうだが、2人目は接点すらなさそうだ。混乱させるために、あえて無関係な人を巻き込んでいるだけなのだろうか。


「ぴゃあ!!」という、汚い音が聞こえたとともに、キャプテンはソファーに倒れ込んだ。脳みその限界が来たようだ。


これ以上、考えても仕方がないので、しゅんちゃんの学校に聞き込みに行くことにしたが、「そんなことして通報でもされて、内定が取り消しになったら困る」と僕は駄々をこねた。


キャプテンは、何がダメなんだと小動物みたいに黒目をくりくりと潤ませて僕を見つめ、社長に電話をかけた。


数時間後、社長が来て、しゅんちゃんの学校に“若者育成プロジェクト”と称して、企業や業種について知ってもらうための社説明会をすることなったと言った。


「僕が主に話すけど、大助くんも内定者として登壇して、菊ちゃんはアシスタントとして潜り込めば、道端よりは、怪しまれずに話を聞けるんじゃないかな。」


すごすぎる。甥っ子のために、こんなにも動ける意味がわからない。社長は、キャプテンのためなら、火の中、水の中どこへでも行けるんじゃないだろか…。


キャプテンは社長に飛びかかって、「銀ちゃんありがとぉ。」と言った。

(※社長の名前は、山岡銀次(ぎんじ)、キャプテンは銀ちゃんと呼んでいる。)


その姿は、超特大のゴールデンレトリバーだった。社長は、本物の犬をあやすかのように、向かってくるキャプテンをなぎ倒していた。











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