第8話 これはいわゆる密室事件?
警官が救急車で運ばれて行ったあと、僕らは第一発見者として事情聴取を受けた。
他の警官に連れられ、警察署に行くと、キャプテンは、ずっと、そわそわ、きょろきょろしていた。犯罪とは無縁そうに見て、実は前科者なのか?そう思うぐらい妙に落ち着きがなかった。
「どうして、そんなに、そわそわしてるんですか?まさか、昔、捕まったことがあるとか…?」
「ちょ、バカなこと言わないでよ!僕は、人生のほとんどを引きこもって来たんだよ!問題なんて起こすわけないでしょ?ただ…、警官に知り合いがいるんだ。万が一でも、その人に会ったり、この話が伝わったら嫌だなって思ってさ。」
ふーん。と思っていると、幸いにも、この日はすぐに解放された。とはいえ、ショッキングなものを見たせいで、一人で家に帰るのが怖かった。だからお願いして、キャプテンと一緒に事務所のソファーで眠むった。
次の日、朝早くに事務所の扉が開き、社長が入って来た。これに起こされた僕らは、瞼を擦りながら、何かあったのか尋ねた。
「おはよう。昨日は大変だったようだね。あまり、こう言うことに深入りするのはよくないけど、菊ちゃんに伝言を預かったから伝えに来たよ。」
はい、と社長は、自身の携帯をキャプテンに渡す。誰かからのメッセージのようだが、キャプテンは背中で僕に壁を作り、見せてくれない。
そして、心底嫌そうな顔をして画面を見つめていたが、内容を読むや否や良いことを聞いた!という顔をした。それを見て、社長はため息をついて言った。
「はぁ…。まったく。私を仲介せずに、君たちで勝手にやり取りしてくれよ。一々、めんどくさいよ、本当に!じゃあ、私は会社に行くから。二人ともあんまり危ないことはしちゃダメだよ。」
僕らは、事務所の外まで社長を見送った。そして、部屋に戻るとキャプテンが何を読んだのか教えてくれた。
「警官に知り合いがいるって言ったじゃん?その人に、僕が事情聴取受けたのがバレたんだけど、それでダメなんだけど、ちょっとだけ情報を教えてくれたんだ。」
その人曰く、昨日の事件で交番の防犯カメラを確認したが、事件が起きる少し前に防犯カメラの電源がオフになり、被害者の警官が外に出たあたりで電源が戻り、何も手掛かりになる物は撮れていなかったらしい。しかも、その時間、つまりは犯行時間はたったの3分だと言う。
これは、本当に能力者が起こした事件かもしれない。そうだとしたら、かなり強い力を持っているのか、複数犯にちがいない。
周辺の防犯カメラも、特に何も映っておらず、捜査は、難航しているようだ。僕らも、これ以上は、どうしようもないので、もう少し何か手掛かりになるものはないか、瀬川さんに再度話を聞きにいった。
「こんにちは。眞壁と山岡です。大変な時に何度もすみません。」
挨拶をして病室に入ると、誰か来ていたのだろうか、飲みかけの紙コップが二つ机に並んでいた。
「あ、こんにちは。こちらに座ってください。…人が来ていたので、散らかっているかも。」
「ご家族の方が来られていたんですか?」
何となく、僕が聞くと、瀬川さんは少し困ったように言った。
「あの、しゅんちゃん…。初めて会った時に車椅子で突っ込んだ子が来てたんです。」
ああ!しゅんちゃん!そう言えばそんな子がいた。そう言えば、この間会った時、しゅんちゃんはサングラスをしていたが、彼も目に何かあるのだろうか。
「ああ!覚えてますよ。彼は元気ですか?そう言えばですが、彼サングラスしていましたよね?彼も目に何かあるんですか?」
不思議に思ったことを聞いてみると、彼女は余計に困ったような顔をした。
「実は、しゅんちゃん。最近、目が見えなくなっちゃったんです。」
瀬川さんは、言葉を選ぶようにポツポツと話し始めた。
「しゅんちゃん、学校で転んで目を怪我したんです。それでよくわからないんですけど、転んで目に石かなんかが刺さって、あまりの痛さに、自分えぐり出しちゃったらしいんです。」
「え、自分で?」
意味がわからないとキャプテンが声を漏らす。
「そうなんです。自分で。しかも、それで病院に行ったら、なんだか心まで病んでいてうつ病にパニック障害まであるってことがわかって…。」
その原因が何かって話になり、いじめを疑われたが特に証拠もなく、高校3年生なので、受験勉強のストレスや、家庭環境に問題があったのではないかということになった。そして、養生のために、祖父母の家に移って来たらしい。
「そもそも、しゅんちゃんのお母さんが生きている時は、今のおじいちゃん、おばあちゃん家に住んでいたんですけど、お母さんが亡くなって、お父さんが再婚するっていうので出ていったんです。なので、私も3、4年ぶりに再会したんです。だから、学校でも家でもどうやって過ごしていたか全くわからないんです。」
なるほど、だからあの時、あんなにも塞ぎ込んでいたのか。
「その、しゅんちゃんは、どこの高校に行っていたの?」
渋い顔をしていたキャプテンが瀬川さんに聞いた。
「南花藤(みなみはなふじ)です。」
南花藤、南花藤…。
「あ!一人目の被害者の男子高校生と同じ学校じゃないか?!」
僕は、ここ最近で一番の閃きをした。それを聞いてキャプテンも「そうだ!そうだ!」と少し興奮して頷いた。一方、瀬川さんは口を固く結んで布団を握りしめていた。その顔は、心なしか青白く見えた。
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