第6話 ついに事件発生

 目玉がくり抜かれた死体のニュースから、1週間もしないうちに、新たな被害者が出た。


 2人目の被害者は、1人目の被害者と同じ町のヤンキーだと言う。そして、1人目は亡くなったが、この人は一命を取り留めた。


 更に、1週間後には、少し離れた場所の女子高生が被害に遭った。彼女もまた眼以外は無事だと言う。


 このような悲惨な事件が連続して起こることは、僕が生きて来た中では始めてのことなので、シンプルに怖くなった。


 こんな感じで、例に漏れず暇を持て余していた時、事務所の電話が鳴る。


「はい。こちら、"何でもやります山岡ヒーロー事務所"です。ご用件をお伺いいたします。」


 僕は、元気に電話に出たが、相手はしばらく沈黙していた。もしもしと、何度か呼びかけると、不安そうな女の子の声がした。


「あの…。私…。瀬川朱莉(せがわ あかり)と言います。公園で車椅子をひいていたものです。あの、初回相談無料って言ってましたよね…?」


「あ!覚えてます。お元気でしたか?」


 あの子が何の用だろうか。僕の心配…な訳はないようだが。


「私…、助けて欲しいんです。急で難しいかもしれないんですけど、会ってお話ししたいんです。でも、とてもじゃないけど、そちらにはお伺いできなくて、申し訳ないのですが、今から言う場所に来てもらえませんか…?」


 何だか、とても怯えた様子で、こちらの返事を聞く前に、場所と時間の指定をして電話を切ってしまった。


 急いでメモをした住所を調べて見ると、そこは大きな大学病院だった。思考停止していた僕の脳みそは、勢いよく動き出し、さっきまで見ていたニュースを思い出した。


 目玉えぐり出し事件、3人目の被害者の名前は、「瀬川朱莉」だったのだ。


「うおおぉお…!」


 不謹慎ながらも、興奮してしまった僕は、ゴミ拾いに行ったキャプテンに電話をして、病院前で待ち合わせることにした。


 病院前で、待っていると、50m走の速さでキャプテンがこちらに向かって来た。


「大助くん、いったい、どう言うことなのさ。急に、連続目玉事件に関われるかもしれないなんて電話もらったからびっくりしたよ!」


 一応、彼なりに周りに聞かれてはいけないと、僕の耳元でつぶやくように言った。


(…これは、関係ないけど、彼は僕にキャプテンと呼ばせるくせに、自分は僕のことをプロフェッサーとか諸々では呼ばなくなった。言いづらいから辞めるそうだ。自分が勝手につけたくせにと、気に入ってたわけでもないのに腹が立った。)


 キャプテンに経緯を話し、病院の中に移動した。受付を済ませて、「瀬川」と書いた病室に入る。


「こんにちは。"何でもやります山岡ヒーロー事務所"の眞壁と山岡です。お話しを伺いに来ました。」


 挨拶をすると、上半身を起こし窓の方を見ていた瀬川さんがこちらを向いた。その顔の目元には、何重にも包帯が巻き付けられていた。


「こんにちは。瀬川です。急な呼び出しにも関わらず、来てくれてありがとうございます。もう、何となく察しているとは思いますが、最近連続で起きている事件を解決して欲しくて連絡しました。」


 こう言って、瀬川さんは弱々しく笑った。


「はじめまして。私は、"何でもやります山岡ヒーロー事務所"の代表、山岡です。失礼ですが、これは私たちが簡単に関われる問題ではないと思います。警察の捜査を待つ方が良いかと…。」


 キャプテンが、気まずそうに伝える。あぁ、キャプテンもまともな事を言えるのだと少し感心した。僕もそう思う。一般人が勝手に入り込める問題ではないだろう。


「…でも、でも!お願いです!事件を解決してください!そ、そうだ!せめてパトロール。パトロールだけでもしてもらえませんか?」


 キャプテンにやんわり断られたことで、瀬川さんは妙に取り乱しはじめた。不思議に思って、僕は瀬川さんに尋ねる。


「どうして、僕たちを事件に関わらせたいんですか?警察でもない僕たちができることなんてないに等しいと思いませんか?」


 すると、彼女は誰にも聞かれてはいけないかのように、声をひそめて話し出した。


「実は、あなた方が超能力者を募集しているの知って、超脳力に詳しいんじゃないかと思ったんです。というのも、私のえぐられた眼の傷ですが、まだ3日しか経っていないのに完全に塞がっているんです。」


 彼女が言うには、こんなに大きな傷が、こんなに早く塞がるのはおかしい上に、えぐられるまでの間に殴られて気絶させられたが、その殴られた時の傷も、他の傷も一切残っておらず、それらによる痛みもないそうだ。つまり、目がないこと以外は、普段と変わらない健康体だと言う。


「だから、これは何らかの不思議な力…超能力が関係しているんじゃないかと思うんです。自分でもバカなことを言っているとは思います。でも、もしそうだったら、警察には手に負えないはずです。だから…!だから、お願いです。」


 彼女があまりにも懇願するので、キャプテンは困った顔をしつつ彼女をなだめるように言った。


「わかりました。できることは、少ないかも知れませんが、見回りなどして、事件解決のために、僕たちも色々調べてみます。だから、安心して体を休めてください。」


 瀬川さんと見回りの約束をして病室をでる。

こうして、キャプテンと僕の見守り運動が始まった。








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