第4話 で、何するバイトなんですか?

 雇用主の名前が判明して、コードネームを頂いた後、あっという間に解放されて家に帰って来た。


 そういえば、何をするバイトなのかも雇用条件も、一切聞くのを忘れていた。普段ならそんなことは絶対ないのに、僕も案外疲れていたみたいだ。


 翌日、10時に集合をかけられていたので、昨日のUFO型の建物に行くと、もうすでに、キャプテンと社長がいた。僕は、社長に挨拶をした。


「おはようございます。僕、ヤマオカフーズに内定をもらいました眞壁大助と申します。来年から、どうぞよろしくお願いします。」


 すると、山岡社長は、昨日のいらいらした面影が一切感じられないほどに爽やかな笑顔で握手を求めて来た。


「よろしく。会社の方の面接会場で会ったのに気づかなかったね。菊ちゃんも会社も色々よろしく頼むよ。」


「こちらこそ、お役に立てるよう頑張ります!」


 キャプテンは、かわいく、菊ちゃんと呼ばれているらしい。


 それにしても、こんな所で、社長との繋がりができるなんて運がいい。しかも、今日の様子を見ると、昨日の社長は、ただただ疲れていただけなのがわかる。


 僕だって、キャプテンみたいなのが身内にいたら気苦労が絶えないに決まってる。心中察しまくりだ。


「プロフェッサー、僕もいるよ?」


 僕にも挨拶してよと、むくれるキャプテンに気づかないふりをしていると、女の子が勢いよく飛び込んで来た。


「おっはよーございまーす!!鈴木・レベッカ・真理子でぇーす!清子 (キヨコ)って呼んでください。よろしくどぅえす!」


 ハイテンションすぎて、びっくりしたものの社長と僕は「よろしくどぅえす」と返した。


 一方、キャプテンは、ひきつった微妙な笑顔を向ける。(心底嫌そうなのを本人は隠せていると思っているみたいだけど…。)


 そして、こほんこほんと、わざとらしい咳払いをしてから、わざわざ集めた理由を話しはじめた。


「みんな揃ったみたいだから、採用に至った経緯とか雇用条件とか諸々話していこうと思う。」


 キャプテンが言うには、スーパーヒーローになりたくて、彼と一緒に活動してくれる仲間を募集していた所、本当に超能力を使えるのは僕と彼女しかおらず、能力もそんなに悪くなかったので採用に至ったとのこと。


「彼女に至っては、僕の意思ではなくて、彼女の能力によって強制的に契約を結ばされたのが、どうしても気になるけど、協力してやっていこう。」


 この、清子と呼べと言うハイテンションガールは、ぐりんぐりんにパーマがかかった黒髪ロングで、まだ春なのに肌は日に焼け褐色だった。ただ、顔立ちは和風でさっぱりしていた。それに、ミドルネームがあるみたいだけど、どこのルーツなのか、外見から感じられるものはないので少し考えてしまった。


 それを察したのか、彼女は棘のある声で、僕の疑問に答える。


「私に外国のルーツは一切ないよ。今の母親はイギリス人だけど、血のつながりはないんだ。元々の私は、鈴木・レベッカ・真理子じゃないから、あんた達は、絶対にその名で呼ばないでよ。」


 ちょっと、めんどくさそうなやつだな。


「僕は、なんだか失礼なことをしたようですね。すみません、清子さん。それで、キャプテン。これから僕たちは何をしたらいいんでしょうか?」


 とりあえず、場の空気を取り戻し、会話を進めようと試みる。


「あぁ、ヒーロー活動について僕もかんがえてみたんだけど、ラジオやテレビで情報を集めてそこに駆けつけるとか、コスチュームを着て自警団結成とかは、どうもこの平和な日本では現実的ではないらしい。だから、困った人のお願いを何でも解決する"何でも屋"をすることにしたんだ。」


 キャプテンが言う、"何でも屋"とは、迷子の猫を探したり、人手の足りないお店の手伝いをしたり、一人暮らしのご老人達の見守りをしたりを想定しているらしいが、そんな事をするなら、都会でなく地方に行った方が、役に立てるんじゃないかと思うが…。


 うーん、探偵事務所と自治体のボランティア活動が合体したみたいなもんだと思えばいいのだろうか…。


 こうして、ヒーロー活動改めて、“何でも屋”のバイトが始まった。








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