第3話 採用結果は…
僕が目を覚ますと、部屋の中は薄暗く静まりかえっていた。寝ぼけて、あたりを見渡すと、少し離れた所に、金髪の人が、僕と同じ様にパイプ椅子を並べて横になっていた。
「すみません」
近づいて声をかけると、彼は、ゆっくり目を開けて笑った。
「どう?どんな人かわかった??」
「はい、あの男性は、企業の重役っぽく、採用面接をしていました。おそらく最終面接のようで、それを社長が急に欠席した事に少し怒っていました。で、更にこの人がいた場所は、ヤマオカフーズ…。あ!!」
能力で得た情報を整理しながら話していたが、ようやく僕にとって大事なことに気づいた。
僕がサーチした人は、僕が内定をもらった会社の副社長で、さっきまでここにいた紳士は、社長だったのだ。
しかも、見た場面は、部署は違えど僕と同期になる人の採用中だった。
それに、まさか、こんな場所で社長と出くわすなんて思わないし、社長が超能力者の採用をしているなんて思いもしなかった…。
「どうしたの?なんか問題でもあった?」
僕が、途中で黙り込んだので、きょとんとした顔で、金髪が聞いてきた。その顔になんだか、腹が立った。
「あの、さっきまでいた方はヤマオカフーズの方なんですか?しかも、社長ですよね?」
(一応、僕の中では何気なく)聞いてみた。
「うん、そうだよ!なんで?」
「いや…。ちょっと気になって。失礼ですが、あの方とは、どのような関係性で?彼は、なぜここにいらっしゃったんですか…?」
金髪は勘が良くないのか、再び、きょとんとした顔をした。
「あー、あの人は、僕の叔父さん。僕の母が社長だったけど亡くなってからは彼が会社を継いだんだ。」
と、ちょっと困ったように答え始めた。
「あとは、定期的に僕の面倒を見てくれてて、今回もこう言うことしたいって言ったら心配して一緒にやってくれたんだ。」
まあ、確かに甥っ子が超能力者を集めたいと言い出したら不安に思うに決まってる。というか、彼もヤマオカフーズに関係あるのだろうか。それに、今更ではあるが、彼の名はなんだろうか。ヤマオカじゃない可能性もあるし。
「そうなんですね。教えてくれてありがとうございます。ところでですね。今更かもしれませんがなんとお呼びしたらいいでしょうか?」
この問いかけには、彼も「確かに。僕も君の名前知らないや。」と笑い、「僕は、山岡菊之進(ヤマオカ キクノシン)。でも、キャプテンって呼んでほしいな。僕の憧れの人と同じに呼ばれたいんだ。それで、君はなんで呼ばれたい?」と言った。
この人も、ヤマオカだった。なんでキャプテンって、呼ばせないのかよくわからないが、とりあえず了承して、こちらも自己紹介をする。
「はい、キャプテン。僕は、眞壁大助です。無難に、マカベって呼んでください。ちなみに大学4年生で、来年からはヤマオカフーズで働きますので、後々に影響ある、変なことは絶対にしたくないです。よろしくお願いします。」
キャプテンは、ヤマオカフーズに内定をもらっていることについては、いっさい聞こえてないのか、
「マカベは、つまらないよ。能力的にチャールズ・エグゼビアみたいだから、プロフェッサーにしよう!実は、誰かとあだ名で呼び合うことに憧れてたんだよね〜。嬉しいな。」
なんだかよくわからないけど、好きに呼ばせてあげることにした。
「では、プロフェッサー。君を採用する!あ、プロフェッサーが嫌だったら、Xでもいいけど、荷が重いかもね?」
採用が決まったようだが、相変わらずよくわからない。おそらく何かしらのオタクなんだろうと割り切り、好きに呼んでくださいと言うと、「じゃあ気分によって変えるね」と言われた。
いいか悪いかはまだわからないけれど、とりあえず、学生最後のアルバイトは特別なことができそうだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます