第3話
「やっぱりみんな、疑ってますよねー」
馬場先生は頬杖をついて不貞腐れたように呟いた。
「ええ、全くけしからん。保護者からの電話も鳴りっぱなしです」
事実、今日は保護者から熊について詳しく聞かせろという問い合わせがひっきりなしに掛かって来ていた。
「あ、私みんなに熊に会ったら死んだフリじゃなくて生きてるフリしなさいって言っておきましたよ」
「へえ」
「そしたらみんな何て言ったと思います?」
「ああ、そうですか」
上の空で聞いていた。このままではデマの発信源が俺だというのも判明してしまう。それだけは避けねば。
「でねー、その子が憎たらしくてねー。私教卓投げつけちゃいましたよー」
「大丈夫でしたか?」
「ええ、私こう見えても力持ちですから」
「ああ、良かった」
周りの教師の目が気になったが幸い、皆電話対応やら事務仕事やらに追われている。
「ああ、そういえばチョークなくなりそうだった。どこに言えばいいですかね?」
「分かりません。俺は隣の教室から失敬してます」
「あー、さすが佐伯先生。あ、見て佐伯先生! UFO‼︎」
馬場先生が職員室の窓を指差す。見ると上空にはUFOが一機フラフラと漂っていた。
しかし今はそんなことに構ってはいられない。くそ、どうしたらいい。
「お二人さんお困りのようですね」
不意に背後から声をかけられた。振り返るとそこには校長先生がいた。
ふっくらとした顔は赤みがかっており、福耳なのも相まって縁起の良さそうな容貌だ。
「校長先生……」
「話は聞かせて貰いましたよ」
校長先生は自信満々の笑みを讃えている。
「一体いつから」
「第1話の米マークの後からです」
「なるほど、ちなみにあれは米マークではなく、アスタリスクです」
「じゃあ話が早い!」
馬場先生は両手を叩き、元気よく立ち上がった。
「佐伯先生、馬場先生。私に任せて下さい!」
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