第13話 無双なう
『それはわかりやすくていいな!』
「警備!奴を捕縛しろ!」
『戦えると思ったが不完全燃焼だからな、腕の一本は覚悟してもらおうか!』
コイツらガラ悪すぎだろ。
いや、燃え上がらせたのは俺だけどこんな同時に襲ってくるとは思わなかった。
しかも言語違うはずなのに連携が凄まじい。
光の剣を飛ばしてくる奴、火とか水を操る奴、明らかにヤバい毒を飛ばしてくる奴、もう超能力のバーゲンセールみたいになってる。
なるべく大きな怪我をさせない様に無力化するのを狙っているから圧倒的に不利だ。
1人に狙いを定めて一気に近寄るも、他の奴等のサポートによって攻撃をすることが出来ない。
大量にいる能力者の中でもヤバい奴は早めに仕留めたいんだが。
「こっちだ!」
あれはテレビ中継のカメラか。
まさかとは思うが、さっきから高橋が何処かに連絡しているのが見えていたがカメラを呼んでいたのか?
「現場は大混乱です!」
なんでそんなに近づくんだ。
サッカーコートぐらいの広さがあるとはいえ、瓦礫は飛び回ってるんだぞ?!
『目の前の戦いに集中した方がよろしいかと。』
「貴方は先ほど目が合いました、ね!」
そう外国語で話しかけてきたのは無表情な女性。
俺が見た限りこの中でもトップクラスの力がある筈なのだが、何故かあまり攻撃はしてこずサポートに徹されて厄介だ。
状況は圧倒的に不利、近距離で3人が俺を囲うように攻撃、遠距離からサポートと地味にウザイ攻撃、近距離に居る奴に怪我を負わせても直ぐに交代されてしまう。
戦闘が始まってから10分という短い間だが、俺はかなり消耗させられ、あっち側の明確な被害は最初の鉄球男のみ。
そして俺の武器、糸の強みである場の支配を阻止するかのように伸ばした糸を切る無表情の女性。
怪我を負うかもしれないが奥の手の1つを使おう。
近距離を防御のみに絞り、左手で鉄球男を操る。
『動きが鈍ってる、畳み掛けろ!』
『「うぉぉぉ!」』『……』
防御のみに集中したのを勘違いした奴が更に攻撃してくる。
背後に控えてる油断し始めた奴等を狙い鉄球男を突撃させる、弱かったが無駄に巨大な体でぶつかられた8人は吹き飛んでいった。
『なに?!』
ブツン!
今のうちに追い込もうと、もう一度突撃させようとした瞬間に糸を切られた。
また無表情の女性だ。
『素晴らしい超能力、特に体術は賞賛に値する。』
「ありがとうございます、私からしても貴方が1番厄介ですよ。」
『君は私の言葉を理解してるみたいだが、私は君が何を言ってるかわからない。
こんなに面白い方が居るなら日本語を勉強すればよかった。』
鉄球男を使った奇襲のおかげである程度有利になったとはいえ未だ不利なのは変わらない。
この場にいる唯一の回復系能力者の須本さんが座り込んで戦いに混ざらないおかげで、なんとか戦えていると言っていい。
そもそも回復されたら怪我を負わせないように手加減は出来ないけど……
『ふむ、ふとした疑問なんだが聞いてもいいか?
あぁ、イエスかノーで答えてくれ。』
「イエス。」
『それ程の力があるのに何故正式に抗議しなかったんだ?
何かしらの事情があるならイエス、ただの愉快犯ならノー。』
「イエス。」
『ふむ、では付いてこい。』
超能力を使い始めた。
使われたのにも関わらず詳細はわからない、見たままを説明するなら俺の攻撃が当たったところが霧のようになり当たらないこと。
「なんの能力だ?」
『私と戦った者は皆そんな反応をする、さて話が終わるまで倒れてくれるなよ?』
その瞬間からこの戦いは俺と目の前の女性の独壇場へと変わった。
俺と会話したいがために超能力を使い、戦闘を激しくして周りの奴等が割り込めないようにしている。
『その事情とは祐美加の事か?』
「イエ『ぐわぁぁ!』ス?」
『おっと、手が滑った。』
援護しようと俺の背後に近づいて来た奴に飛び蹴りを喰らわせていた。
その飛び蹴りは俺に当たらない挙動だったし絶対にわざとだ。
『ふむ……
なるほど、確かに求めたくなる訳だ。』
「……?」
『あぁ気にしないでくれ。
友人の夢が叶いそうで良かったと思うのと同時に私も少しだけ羨ましくなっただけだ。』
っと、目の前の相手は話に意識を寄せながら戦える存在じゃない、相手の言葉の意味を考えるのは辞めなければ殺られる。
『さて、1発目だ。』
避けきれなかった攻撃で腕から少量の血が垂れる、この体を初めて傷つけられた。
「クハッ!」
面白い、面白いな。
久しく忘れていた、燃え上がるような感情、神様に貰った能力に体があれば無敵だと思っていた。
それを傷つけられた。
『……まるで別人だな。』
「目が覚めた。
いや、覚めてはいたが忘れていたことを思い出せたよ。」
転生してからは楽しかった、この世界の全てを楽しんでた。
それは、負けることも、苦しいことも、辛いことも何も無いと思い込んでいた。過去の俺は自分が圧倒的に強者だったから楽しめていた。
だけど、
「ここは現実だ、そして私は最強だ。」
ただの心が弱いガキだった。
一度だけ、たった一度だけ予定を外れたからって大人になった気でいたガキだ。
それを体験しても自らの欲を捨てきれなかったガキ。
この世界で超能力者だと認められくても良いじゃないか、実際に戦えば俺が1番。
「申し訳ないが余り長い戦闘はカッコよくない、そろそろ終わらせよう。」
『…!良いだろう、来い!』
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