第2話見たこともないぬいぐるみの世界

目が覚めた。


朝がきたのか…

眩しい光が差して、うっすらと目を開けた。


しかしそこには綺麗な青空が見えた。

雲は優雅に流れている。


ここは一体どこなんだ…

ぼーっと見ていると


「おい!時桜!」

急に僕の名前を呼ぶ声がした。


慌てて起き上がると、一匹のくまのぬいぐるみが

目の前で座っていた。

紫色の目がくりっとしていて、ふわっとしていてリボンが付いている可愛いぬいぐるみだ。

くまのぬいぐるみは僕を見つめている気がする。


「時桜!」

もう一度僕を呼ぶ声がした。

ぬいぐるみが僕を呼んでいる…?


そして、ふと気がついた。

このぬいぐるみ…どこかで見た気が…


「…あ!」

僕は今気がついた。

このぬいぐるみを僕は知っている。


実は僕の部屋はぬいぐるみで溢れている。

小さい時から可愛いぬいぐるみが大好きで、

男の子なのにおかしいと両親からは理解して

もらえなかったが、それでもやっぱり諦め切れず

今日までずっと大好きなのだ。


僕が、人生で初めてぬいぐるみに一目惚れして

親に買ってもらった第1号だ。

ぬいぐるみには1匹ずつ名前をつけている。


この子は…


「たろう…!?くまのたろう!?」

僕はくまのぬいぐるみにそう言って、勢いよく

抱きついた。


「時桜!やっと気がついてくれた!」

そう言って、くまのぬいぐるみは座ったまま僕を抱きしめてくれた。

ぬいぐるみなので、ふわふわした感覚で、とても肌触りが良く気持ちいい。


にしても…

「たろう…デカくね…!?」

思わず叫んだ。それもそうだ。

いつもの家にいるたろうは手のひらよりも

少し大きいサイズだ。


しかし今のサイズは違う。

今たろうが座ってる時点で、僕の身長ぐらいある。

ちなみに今僕の身長は160センチだ。

(男の中ではチビだが、今はそこではない。)


てことは立ったら…170センチは超える…!!

マジででかい…!身長負けた…!


「そこにツッコむのか…?」

たろうは困り顔で首をかしげながら言った。


「えっ違うのか…?ん?確かに喋ってる…?」

僕は混乱している。


それもそうだ、

ぬいぐるみが喋ってる世界なんてありえない。

しかも、僕が可愛がっているぬいぐるみが

大きくなっている。


「本当に…たろうなのか…?」

僕はほんとに分からなくなって尋ねた。


「そうだよ!僕はたろうだよ!」

たろうは嬉しそうにそう言った。


僕は夢でも見ているんだ。

きっと…きっとそうなんだ…


僕は自分のほっぺたをおもいっきり引っ張った。

「痛ぁい…」

やっぱり痛い。夢ではないようだ。


じゃあ…ここは…いったい…


「時桜…今から僕が1から説明する。

しっかり話を聞いて。」

たろうは真剣な眼差しで僕に言った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る