ta・ka・ha・shi

𓆩⋆𓆪‬ 𓆩꙳𓆪‬ 𓆩⋆𓆪‬ 𓆩꙳𓆪‬ 𓆩⋆𓆪‬ 𓆩꙳𓆪‬ 𓆩⋆𓆪‬‬


 明るくまっすぐな、

 体育会系おにいさん。


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 結局、この部屋からも印は見つからなかった。

 顔を上げると、アヤサキは額の汗を手の甲で拭っていた。


 正直なところ、出口の印を探すことよりも『神隠し会社ビルヂング』と『社長と社彼ら員』の謎に、強く惹かれていた。

 もちろん、元の世界に戻りたい気持ちはある。でも、それ以上に魅力的だった。


「アヤサキさん、次の部屋に移動しますか?」


「そうだね。ここには無さそうだし。」


 アヤサキは、私に笑顔を向けた。


「アヤサキじゃないか。」


 ミーティングルームを出たところで、とてもよく響く力強い男性の声が、背後から聞こえた。振り向くと、会議室で見かけた『体育会系男性』だった。

 まるで体操のお兄さんのような笑顔で近づいてくる。

 誰からも好かれそうな好青年の印象なのに、アヤサキは顔をこわばらせて身構えている。


「……タカハシさん。」


「出口の印は見つかったのか?」


「……企画部とミーティングルームには無かった。」


 アヤサキは、人間に牙をむく捨て猫のようにタカハシを睨みながら、正直に答えている。もしかしたら、ミフネよりは心を許しているのかもしれない。


「そうか。俺は向こうから探したんだが、やっぱりなかったよ。ミフネも無いって言ってたから、たぶん、この階には無いな。俺は上の階を探すよ。アンタはどうする?」


「……下の階に。」


 タカハシは、アヤサキの言葉を聞いてニカッと笑った。


「おう! じゃあ、あとで教えてくれ。こっちも結果を教えるから。それより――、」


 タカハシは腰に手を当てて私に顔を向けた。


「会議室でも気になっていたんだが、アンタ誰だ?」


「私は――、」


「まあいいか。ここにいるってことは、印探しゲームに参加してる仲間ってことだよな。よろしくな。」


 そう言うと、タカハシは手を振りながら階段を上っていった。


 『タカハシ』と名乗ったこの男性は、どうやら悪い人ではないようだ。


「アタシたちも行こうか。」


 アヤサキは私の手を取り、階段を下りた。

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