第4話 クラゲと悪魔

突然現れた転校生の加賀美さんによって絶体絶命の危機に陥った

章と萌歌。二人を助けに来たのは、九番の審判、田中さんの部下の

二部局副班長の白園海浜だった。



「開け、〈絶命の海遊岸門うみのじごくもん〉」

白園さんの足元が青く輝き、先程のクラゲとは違う、

白い巨大なウツボと、鋭く歯が光る白い巨大ザメが

姿を現した。

「章くんと萌歌さんは下で待機。一旦二部局に寄る。

砂漠地帯についての新しい情報だ。先行っといてくれ。」

そう言われ、章は萌歌を抱きかかえて屋上から飛び降りていった。

「章くん…。」

意識が逸れた加賀美にウツボが襲いかかった。

魔能で出した手で反応しようとしたが、手を喰らいながら、加賀美ごと

飲み込んだ。ウツボが静止した瞬間、ウツボの体が弾け、

切られたような痕のついた加賀美が出てきた。

「加賀美彩。中学生の際に魔能を発現。いつの日にか助けられた

章を追ってココまで来たようだな。」

白園が送られてきた加賀美のデータを読み上げる。

「その魔能は〈悪魔の古学アクマグーマ〉身体能力の急発達と悪魔の手の顕現が主な力か。」

白園を少し見た後、加賀美が白園の居る地点まで瞬速で近づいた

はずだった。加賀美の移動したところからいつの間にか白園の姿が消える。

周りを見渡しても全く見当たらない。

「逃げられた…。ま、章くんが手に入ったらそれで良いか。」

魔能を解除した加賀美は鼻歌を歌いながら屋上から去っていった。

遠くからその様子を見る影があると知らずに。

学校付近のあるマンションの屋上。

「なんですの?あの女私の章様を取ろうとしてますの…。

いい機会ですわ。あの着物を着たゴリラと地味女まるまる消して

やるチャンスですわ。」

それを見ていたのは以前章に飛びかかり、九番の審判の代理として

来ていた花嶺凜花はなみねりんかだった。

一方その反対側の学校付近の電波塔屋上。

「西洋かぶれの切り屑も影女といい何を勘違いしておるかは

知らんが章は我の所有物だ。なのにまた変な奴が増えよった。

…二ヶ月後の特別遠征で分からせるとしよう。」

同時刻に加賀美を見ていたのは、同じく以前九番の審判の代理人として

きていた春里巳暮はさとみくれだった。

「章様は私がいただきますわ。」

「章は絶対我のものにしてやる。」

「章くんは…ワタシノモノだ。」

章に異常な愛、執着、思いを募らせた三人の魔能使いが

出揃った。彼女らの戦いは章が誰かを選ぶまでは決して終わらない。

いや、選ばれても終わらないだろう。



そのころ、第二部局へ向かう章と萌歌。

学校近くで待機していた二部局の車に乗り込んだ

章と萌歌は施設へ帰っていた。

「すいません。三島さんわざわざ。」

「助けてくれたお礼でもあるので気にしなくてもいいですよ。

それに早く行かないと大変なことになってしまうので…。」

そう言って信号待ちの間に章にある資料を渡した。

「これは…。」

「何者かによって魔能使い専用収容所にいた

囚人5人の脱走が確認されたの。その魔能反応を追ったトコロ、

行き先の予測地点が…砂漠地帯、エギラーゼ。」

乾の残したキューブの行き先、だが、三ヶ月以内に動いたのだ。

魔能使いを消滅させるべく、プルーランが。

「最悪の場合、あと4ヶ月で滅びます。キューブの存在もまだ

知られていない今、選抜を早めることにしたんです。」

信号が赤から青へ変わり、再び車が動き出す。

謎の魔能使い、加賀美彩。動き出した組織、プルーラン。

「この世界で一体何が起きているんだ…。」




エギラーゼの3つ前の国、フィオニーズ。

「おい、INGAUGEのガキは始末したか?」

「いえ、もう少しのところを二部局にやられました。」

薄暗い部屋の中を、タバコの火がゆらりと揺れた。

部屋の中には、金髪の男と、部下らしき黒服が2名。

「あの章っつうガキを使わねーと魔能使いの一掃が

できないんだ。早急に連れてこい。」

「はッ。」

命令を受けた黒服達が部屋から出ていく。

フーっとタバコの煙を吐き出す男が携帯を開いて、

ある人物へ電話をかけた。

「収容所にいる五人の囚人を連れてこい。

総戦力でINGAUGEを潰す。全ては理想の世界のために、だ。」

この男の名前はゲネシス・ヴィッター。

犯罪魔能使い組織、プルーランの総長である。






続く









次回  田中さん
















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