第2話 同居人と異常執着者

「章にも陽キャ時代があったんだ…。」

「知られたところで話すことも無いけどな。」

あの後昼休みまで全力で知らないフリを続け、

今は体育館裏のベンチに座って萌歌と昼めしにありついていた。

人が少ないのもそうだが、社会教師の源垣先生に目立たない

静かなスポットを教えてもらって最近はココで過ごしている。

「てかあのときの女の子がココに来る意味がわからん。」

「ちょっと殺気放ってたけどね。はい。イチゴ。」

萌歌が爪楊枝で刺したイチゴを章の口に近づける。

「サンキュー。てか帰りに買い物寄ってかないと…。

昨日のカレーの余りってあったっけ?」

組織に加入してからは二人で借用マンションで同居している。

当番は決めているが、作り置きもしたいのでたまには

二人で買い物をしている。

弁当に入っているおかずは、組織最強の1人、田中さんが

作ってくれた物でできている。

「…章。反応が。」

「だよな…田中さんの部所の人が襲われてるな。助けに行かないと。」

弁当を早急に片付け、その場を後にする。

反応があったのは第2棟屋上。魔能の反応がブレている。

「章。時間止めるから手、かして。」

「分かった。」

この数日で二人は能力の現段階の限界を理解していた。

まず萌歌だが、〈見通す光眼〉。ただの未来をみる能力でなく、

見た未来とその物事が起こるまでの時間を自由に操ることが出来る。

時間を戻す以外の方法なら、ほぼ何でも出来ると言っても

過言では無いのだ。

章の手を掴んで、時間を停止する。現在時間から見た未来までの

ラグは3分。時を止める前に掴んだモノや人物は対象から外される

能力を持っており、そのため、以前的永製薬での戦いでバットを

振り回すことができたのだ。

「萌歌。未来で見た情報をくれ。」

「謎の黒服が三人、二部局情報整理担当の三島さん。」

「了解。」

停止した時間の廊下を走り、屋上へつながる中央階段まで来た。

「あと1分か。いけるな。」

階段を登りきり、屋上の扉をこじ開ける。

情報通り、黒服三人と三島さんがいた。三島さんは主に

情報を握っている分、狙われるのだが、九番の審判に田中さんが

ついたことにより、最近は減ったはずだった。

「田中さんってマジで何者?」

「面倒くさいから潰しといたら?」

時間停止を停止するとともに、黒服達の前に滑り込んだ。

「…⁉なんだこのガキ!」

「構わん。殺すぞ。サシでもチャカでも構わん。」

「アニキ…!コイツお嬢のターゲットじゃ…」

一切動揺を見せず、襲いかかってくる分、手練のヤクザとでも

いったところだろう。

「何言ってるか知らねーけど、ごめんな。」

章の手が輝き、男たちが地面にめり込む。

『カハッ…。』

衝撃よスピードを重点的に学んでいった章は、

重力の操作も可能であることに気づき、最近はモノを浮かすことも

出来るようになっていた。

倒れた男たちを重力で浮かせて三島さんの安全を確認する。

「大丈夫ですか?」

「まぁなんとかね。田中さんからさっきから着信来てたのに

離れなかった私も悪いから。」

そう言って再び学校の中に姿を消した。田中さんから

言われたサポートは、主に高校生活の監視のみなので、

そこを狙われるケースが多かった。

それを防ぐためにも俺と萌歌は強くなっているのだと

実感できている。

「スーパーでなに買う?」

「カツにしよ。」

「二人揃って何をしているんですか?」

後ろから声がして、思わず振り返る。

そこには、先程教室で出していた殺気を超えるほどのどす黒い

何かを撒き散らしている加賀美さんだった。

「もう一度聞きます。お二人は付き合っているんですか?」

どうしようと考えていた俺を見て、萌歌の口が動いた。

「私、執着系の女の子と仲良くできない。ちなみに

彼女ではないけど同居人です。」

空気が変わる。加賀美さんの殺気とともに、魔能の気配が

うっすら見えた。

「萌歌さん…?何でホントのこと言っちゃうかな?」

「…面倒くさいから?」

「このおバカああああああああ!」

ゆらゆらと黒いオーラを纏った加賀美さんが

走り出してきた。

「章くんの横はワタシノモノなの。」

黒い魔能が、二人を襲う。






続く。












次回  逃げる日常、遂げた進化










「作者より」

応援してくれる皆様のお陰で、なんとランキングに

入っていました。今後は加賀美さんを含めたやばめな女の子が

増えますが、どうか章くんの身の安全を願ってあげてください。

それではまた次回。

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