新章 砂漠と仲間とヤバいヤツ。

第1話 ヤンデレ女とマイフレンド

「章くーん?何処行ったのー?後ちょっとで昼休み終わっちゃうよ?」

廊下をコツコツと歩く彼女の目の奥は異様に黒く不気味だった。

俺は佐東章。一ヶ月前にヲタ友と共に事件に巻き込まれ、

訳あって裏社会の世界に放り込まれた。

そんな俺は今、転校生にめちゃくちゃヤンデラれてます。

「どうすれば良いのやら…。」

階段の影裏に隠れ、スマホの電源を入れた。


時は遡り、一ヶ月前。

乾に託されたメッセージに従い、砂漠地帯への遠征許可書、

ライセンスを発行するために再び高校へと戻ってきた章と萌歌。

「って言ってもあと3ヶ月を乗り切るだけだ。」

「私達二人なら楽勝。」

いつものようにスマホのゲームアプリを開き、いつものように

マルチプレイを朝礼までやる。いつもと大して変わらない。

乾さんから託された作戦を実行するには必要事項と言われ、

一時はどうなることやら思考にまでなっていたが、特別凄い危険なことを

するわけでは無いので、普通に3ヶ月を過ごせば迎えが来てそのままレッツゴー

という流れで問題は無かった。急な転校生イレギュラーがいなければ。

「急遽うちのクラスに転校することになった子がいてな。」

朝礼の先生の言葉を聞きつつも、前と同じ様に、三軍が一軍に絡まれるのは

厄介極まりないので反応せず、ボーッと窓の外を見つめていた。

「まぁ、仲良くしてやってくれ。入っていいぞ。」

そう言われて入ってきたのは、紫の髪が目立ち、とても清楚なイメージが

強い女の子だった。身長は平均的といったところだった。

「私、天冥東から転校してきた加賀美彩と言います。どうぞ何卒よろしくお願いします。」

「結構可愛いよな。」

「声かけてみようぜ。」

前の席の陽キャ共に後は任せてぐーたらする。そのつもりだったのに。

「そーだな…席が無いから耳名と佐東の前の席に座ってくれ。」

よりによってコッチを指名してきやがった。あのハゲ。絶対呪ってやる。

見られたいわけでも無いのに人気者を陰キャにやるなっての。

加賀美さんがコッチの席に近づいてくる。

萌歌がよろしくと挨拶をしたので、俺も無いもの扱いで挨拶を

してしまった。

「よろし…」

よろしくと言いかけた瞬間、加賀美さんが俺の机を思い切り叩いた。

教室の皆の視線がこちらへ向く。

へ?いつから陰キャは挨拶もしてはいけない理由ができたんだ?

戸惑いながらも眼の前の彼女をしばらく放っておく。

「…?章大丈夫?」

「ん?ああ、大丈夫だよ萌歌。」

萌歌の手が章の手にふれる。

その瞬間、かつて無いほどの殺気が教室を襲った。

その発生源は、目の前にいる加賀美さんだった。

「…に…た…の」

加賀美さんの口からブツブツと何か呪文のようなモノが

流れ出した。

「おい⁉加賀美⁉早く席に戻っって…」

「邪魔するなら消しますよ?先生。」

担任が殺気に威圧され、動かなくなる。

そんな加賀美の視線は俺の方へ向いていた。

なんで俺が…陰キャでありたい俺がこんな目に…

「彼女もいない俺ですが…何かしましたか…?」

おそるおそる尋ねる。

「隣りにいるのは彼女さんじゃないの?」

「残念ながらどう足掻いてもマイベストフレンドです。」

そう言うと、少しづつ教室の中に充満していた殺気が

霧散していった。何とか落ち着いたと思った俺を、転校生は

許してくれなかった。

「久しぶりですね。章くん。中学二年生の秋に助けていただいた

あの時を覚えています。早速で悪いのですが…私の婚約者に

なっていただけますか?」

顔を赤らめ、コチラに視線を送る加賀美。

周りが驚愕と悲惨な声で埋め尽くされる中、元厨二病

二人は状況を飲み込めず、ショートしていた。

「コンヤクシャッテナンダッケ?」

「アタラシイキャラノナマエカナ?」

だが、此後の物語を大きく左右する人物となってくると、

このとき二人はまだ知らなかった。





続く。






次回 同居人と異常執着者

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