第10話 新たなステージと昇格発表

的永製薬の襲撃実行犯、水履乾を始めとした計三人

の魔能使いの撃破に成功した章達は日花に呼び出されていた。

「何から言えば言いませんが…今回の初任務お疲れ様でした。

追加の任務に関しては報告がまだ出ていないようなのですが…。」

それを言われた章は胸ポケットから乾に託された、アルファベットで

(TREASURE)と書かれたキューブを取り出した。

「それについて僕からお願いがあります。」

「何でしょうか?」

「海外外出権が与えられる第二部局のライセンスの発行をお願いします。」

第二部局。九番の審判の1人、田中太郎率いる国外探索班であり、

マフィアの抗争などの制圧にも尽力していることで有名。

そんな第二部局の特権、一級ライセンス。

「…ライセンスの存在を教えた記憶は無いのですが…。」

章が自身の魔能をキューブに集めている。

「コレを見てください。」

魔能を流し込んだキューブが開き、中から映像のような

モノが映し出された。

『あー。あー。映ってる?コレ。』

『さぁ?まあ音声だけでも最悪ダイジョブでしょ。』

映し出されたのは、若かりし頃の水履乾と、青い髪のツインテールの女

だった。

「これは…?」

「乾さんから預かった映像保管ビデティリティキューブです。

任務成功後の夜に菊間先輩達に見てもらったんです。」

その場にいた全員の視線が映像に向いた。

『誰に伝わってるかは知らんが、菊間と屍音には見せておいてくれ。

収穫した情報と、今俺たちを狙う敵について、だ。』

乾はカメラに向かって地図を広げ、ある地点を指さした。

『俺たちを狙う敵の中にひときわ厄介なのがいる。

それがPURU-LANプルーラン。ココ最近魔能の研究をパッタリ

辞めたと聞いていたが、真っ赤な嘘だ。正確にはINGAUGE俺たち

捕らえるために研究を打ち辞めただけだ。』

空電くろさん。フロアの全画面をこのビデオのみの放送に切り替えてください。」

そばにいた秘書が近くのコンピューターに魔能を流し、キューブの

映像との接続を始めた。

「ダウンロードまであと70…80…」

ダウンロードが終わるまでの時間の間にも映像の中の乾は続ける。

『こいつらのボスを7年の間に倒してくれ…。そうでもないと…』

「接続完了!フロア独占配信ジャック!」

施設すべての画像が切り替わる。

プールの大音量で流れていた音楽も、企画室で案を練る職員の

パソコンにも、研究部のタブレットにも。

「なんだコレ?」

「さぁ…。」

第二部局共同スペース。

「田中さん…!これ…」

「…特別社員旅行に出掛けるメンバーを明日に選抜する。

第三部局にも連絡を入れておいてくれ。」

九番の審判の1人、田中は日花達のいる

応接カウンターへ走り出していた。

全画面に映し出された乾の口が静かに開かれる。

『この世の魔能使いが全滅する。』

言葉というものは不思議でそれが実力者から発せられた

言葉ともなると余計にだ。

「どういうこと…!?魔能使いが全滅って…。」

「アレって元九番の審判の乾さん…だよな…何で。」

「……。」

『プルーランの所有するネアギアと呼ばれる少女の力、            願いの信託者イージス・セイヴィーの能力は自分の思考を現実に巻き起こす。つまり願いを簡単に叶える力だ。』

騒がしくなったフロアを沈ませるようにその根拠が語られる。

『そこで頼みが有る。第二部局、第三部局。そして

おそらく来るであろう、新たな新入りを連れて砂漠地帯、エギラーゼに行って

世界の至宝、惑星の湧き水オアシスプラネットを手に入れてきてほしい。

それしか方法が無いんだ。』

日花達のいる応接カウンターに田中が滑り込んできた。

入ってきて真っ先にキューブに近づいた。

『お前ら。負けるなよ。私達は持って数年だが、私の目で見える新入りに

力を貸してもらうといい。』

隣りにいたツインテールの女がコチラを向いて話しかけた。

『俺たちの命がココまででも、信じてるぞ。じゃあな。』

そこで映像が途切れ、キューブは輝きを失い、再び元の形へ戻った。

「…田中さん…。」

「佐東くん、耳名さん、3ヶ月後だ。3ヶ月後に私達と共に

エギラーゼに来てくれないか?高校の方では手をできるだけ

回す。だから…力を貸してくれ。」

田中が章と萌歌に頭を下げる。

その様子を見ていた日花が息を吸い込む。

「最低でもあなた達には3ヶ月の登校した事実が必要なの。

ライセンスの発行は教育機関に10年と9ヶ月の月日を

必要とするの。だから私からもお願いします。」

「言われなくても…やりますよ。」

田中と日花が顔を上げる。

章の口が告げた、その宣言が後に彼を最強への道へといざなう。

「この厨二病げんそうからは高校でお別れだ。最強になってから

この称号をもう一度身につけていたい。そう思うんだ。」

そう言った彼の姿は、どこか総長にある何かを思わせていた。

「私も…章を支えるためにも頑張るよ。」

萌歌も章だけを行かせるつもりは無いらしい。

自分を理解してくれた最高の友達と共に戦いたいという

気持ちは本物だった。

二人の姿を見た日花は微笑んで言った。

「では…明日からはココから高校に通わなくてはなりませんね。

明日は早いでしょうから、また後日お話しましょう。」

『了解。』

菊間と屍音がカウンターから二人が去った後に口を開く。

「何か…あの頃の乾先輩に似てますね。」

「ええ。物凄く。」

この3ヶ月を過ごす彼らを見送った日花は、昇格分布表に、

昇格連絡を追加した。

【佐東章、耳名萌歌を今回の報酬として第二部局に推薦。これにより

位を新人から七人の賢者セブンスブレイダーに任命。

同じくクリアした者として、屍音、菊間を八刑の座朱エイティ・メイズに任命。今月の前期昇格発表は以上となります。】

「さぁ。見せてください。章さん、萌歌さん。

この世界を変える魔能使いとしての真の力を。」


各自の思いが決まり、新たな扉が開く。

章達の進む未来に待ち受けているものとは何なのか。

魔能使いの命運は高校生の元厨二病へ託された。





    序章 終わり…。






一ヶ月後。

章達の高校生活は再び再開し、平穏な生活がまた

送られて…いなかった。

「章くん!章くん!今日こそ私のお弁当食べてよ!ねぇってば!」

廊下を走り回る紫の髪の女。階段の影裏に章と萌歌はいた。

「章…あと二ヶ月…帰るの大変。」

「俺の厨二病辞める宣言撤回しても良いかな?」

二人の生活は、転校してきたやばめな女に悩まされていたのだ!









次回  新章 第一話 ヤンデレ女とマイフレンド





続く。












「作者より」

というわけで序章は以上となります。まだ序章なのに

たくさん読んでくれた皆様には感謝しかありません。ありがとうございます。

次の新章には、新たな魔能使い達がバンバン出てきます。

プロフィールに出てきたヤンデレちゃんの活躍、そして章と萌歌の

戦いを応援してやってください。次の話は休日の話を投稿する予定です。

では、次回会いましょう!


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