第6話 任務と陰謀
「てかそもそも魔能使いって何なんだ?」
作戦までの3時間で合わせたいやつがいると言われ、
萌歌と共に案内されることになった。
ここの施設はある都会のビルの地下を改造したものらしく、
スカウトした(半強制的に活動させている)魔能使いが
複数生活してるとのことだ。
章と萌歌は先程までノリでOKを出してしまったが、
魔能使いとやらについては聞いておくことにした。
「魔能使いってのははるか昔から存在している超能力者みたいなもんだな。
個人それぞれで使える能力は変わってくるし、能力の数は未知数だ。」
エレベーターのガラスの向こうを菊間は指さした。
そこには、まるで会社のようにパソコンと睨み合い、資料をまとめるものや
大型プールの中を泳ぎ回っている高校生や大学生、怪しげな液体を調合している
実験室など、様々な施設があった。
「え?地下って言ってませんでした?」
「うん。ココが地下だよ。まぁこれも魔能の一種さ。」
どんどん上がっていくエレベーターの階数は89を示し、
ついに90階で止まった。
「これからお前らが合うのはこの組織の最高戦力、
エレベーターを降り、赤のカーペットが続く廊下を歩く。
「そのナインなんとかには俺らもなれるのか?」
「なれる?」
今の二人の処遇やこれからに関してより、その最高戦力という
ワードに反応した厨二病二人には、せっかくならその称号が
欲しいと考えたのだろう。
少しうーんと考えた菊間が答えた。
「一番簡単で…夫婦制度の使用かな?」
「夫婦?」
「なぜ?」
「この組織には決まりがあって、男は組織内の女とくっついて
より強力な魔能を持つ子を産ませる。それによって生まれた子供の
親はこの九人よりも優先される。親が権力を持つことで子供の
周りを見れるからね。」
ほら。とスマホの画面を章と萌歌に向ける。
そこには歴代の九番の審判が書かれており、その中には今を
輝く芸能人の名前も多数確認できた。
「あれ?もしかして結構簡単?」
「この方法が簡単ってだけ。」
そんな話をしている間に扉の前についた。
黄色や紫の光を放つ扉が静かにギギギと開いた。
「ようこそ。私達の組織、INGAUGEへ。
佐東章、耳名萌歌。あなた達は犯罪組織KERONIZUの
メンバー、次幻流の刀賀の確保に貢献した戦績によって
認められました。」
章と萌歌の体がゾッと冷える。
扉の向こうの異様な威圧感。魔能という特別な力に
目覚めた上での恐怖。
扉が開ききった部屋の中には九人の魔能使いが円を囲むように
して座っていた。
謎の圧力に気圧された二人の動きは止まる。
肌で感じた。この場での動きは下手をすれば命取りになる。と
「まずは自己紹介をしましょう。私は…」
と喋る魔能使いの言葉を遮るように席から影が2つ飛び出した。
「久しぶりです!章様!」
「やっと私の所有物になりにきたのか?待たせよって!」
いきなり飛びつかれた章の体は勢いよく倒れた。
「章!?だいじょ…」
倒れた章を見て動こうとした萌歌の体がいきなり地面に
押し付けられる。
「…痛っ!!」
誰かに押さえつけられているわけでも無いのに体が地面に
ミシミシとめり込む。
倒れていて動揺していた章が萌歌の様態に気づき、
飛びついてきた二人を思い切り引き剥がし、そして
投げ捨てた。
「アイツらが何でいるんだよ…。って大丈夫か⁉萌歌!」
慌てて萌歌の体を起こす。
「…淡木。この代理二人をつまみ出しなさい。」
「御意に。」
席から立ち上がった淡木と呼ばれる男が投げ捨てられた二人を担いで
扉から出ていった。
「あんまりですぅうううううううう!」
「許さんぞそこのメガネぇええええええ!」
バタンと扉がしまり、女が再び喋りだした。
「申し遅れました。私は日花時雨。この世界の万物を操る魔能使いです。
一応総長様から貴方達に送り込まれる予定だったのですが…。刀賀の
件で早く来てくれて助かりました。」
「送り込まれるって?」
「一応転校生として高校生のふりをして接近を試みようと
思ったのですが…魔能反応が移動したのでこうして帰ってきたのです。」
悪い人ではなさそうだと、まだ気を失っている萌歌を
おんぶして、面を合わせた。
「あの二人の処罰はコチラのお任せください。
本題ですが、今回あなた達に課された任務。その裏で何やら
厄介な事が起きているみたいなのです。ですからあなた達に
もう一つの任務をお願いしたいのです。」
先程見ていたタブレットの任務内容が追加された。
(的永製薬の関係者の確保。および
「この任務をあなた達に任せるのは少し心配ですが…」
日花の言葉を完全にスルーして章が立ち上がった。
「報酬は俺らの新しい生活場所とあのバカ二人への立会禁止だ。
親には当分帰って来ないことにしてる。」
メッセージ画面の中に少しの間家を開けます。大体三ヶ月後には
帰るのでお許しくださいというメッセージに対し、了解とスタンプが
返されていた。
「さっきの任務におまけがついたぐらいだ。こなしてみせる。」
そう言って部屋を出ていった。
「…屍音、菊間二人をお願いね。」
『了解』
飛び出していった章の魔能が凄まじく大きくなっていくのを
九人は見ていた。
「なるほどね。総長が選ぶわけだ。」
「後は見届けましょう。」
日花が立ち上がり、部屋の灯りを消す。
やがて何も見えなくなった部屋の中でぽつんと呟いた。
「彼らが成し得るこの先の未来を。」
続く
次回 的永製薬
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