第5話 魔能使いと厨二病

謎の空間に飛ばされた二人の厨二病の前に現れた謎の

女達。世界を滅ぼそうとする悪の怪物を…という言葉を聞き、

完全にイッっちゃっている人たちだと認識した章と萌歌。

そんな二人の前に待ち受けていたのは新しい日常の幕開けだった。




「とりあえずお前らの情報は探らせてもらった。高校二年生の

佐東章と耳名萌歌だな。いきなりで悪いが今回の作戦に参加してほしい。」

謎のオッドアイの女が消えたと思った矢先、ピンク髪の女によって

二人の脳みそは完全にぶっ壊れた。

「まずさっき説明しかけた魔能使いについてだが…。」

喋りかけようとした女の胸ぐらを萌歌が掴み、章は

どんよりした目で女を見つめる。

「待って。情報量が追いつかない。あとココ何処。」

「コッチは謎の刀プロフェッショナルの襲撃にあって

困惑しとんじゃい。まずは状況の説明してくれや。」

息を切らせながら震える拳を抑える。なんだこの

厨二病ごっこは。欠伸も出ない。

胸ぐらを掴まれた女は少し考えたような顔をした後、

口を開いた。

「お前らは…魔法を信じるか?」

「正直に言うと無理があります。」

「無いモンは信じられんだろ。」

いきなりの宗教勧誘的なセリフを言われ、溜まったストレスが

今にも溢れ出しそうになる。

「だったらお前さっきの異空間どうやって抜けてきたんだ?」

「それは俺がアイツ殴ったからだろ…ってアレ?

そういえば何か俺の体が光ってたような…。」

「私も十字架に居る時に目が光ってた。」

二人の体は、異空間に飛ばされた経験により、ある力が

解放された。それが二人のである。

「お前らに目覚めた魔能はそれぞれ強力だ。

まず章。お前に芽生えた魔能は〈衝撃の一刑インパクト・ワン

自身の触れたモノや人に衝撃を加えることができる。

そして萌歌。お前に芽生えた魔能は〈見通す光眼ネーザー・アイ

だ。その能力は見たものの数秒先の動きを読むことが出来る。

故にこの能力があることに目をつけた我々のもとで作戦を行う。」

二人は顔を見合わせ、前のピンク髪の女を見た後再び顔を見合わせた。

「あのー。」

「今の話は嘘です的なことは…。」

「あー。無い。」

キッパリ言い放たれ、俯く章の心はとてつもない黒歴史に

よって動かされた。

「分かった。つまりヤバイヤツを倒すのに協力しろ。

簡潔に言うとそうなるんだろ?」

萌歌はそんな章を見つめ、決心したように掴んでいたピンク髪の女から

手を離した。

「てことだが…こうなったら楽しむのが一番だと思うんだがどう思う?

マイベストフレンド。」

「こんな展開は人生そうそう無い。エンジョイ勢が正義。」

「決まりだな。」

グータッチをした二人を見て、先程まで一言も言葉を発しなかった

パーカーが伝言のようなものを喋り始めた。

「総長命令。条件の二名の新組員の了承を確認。任務坂ミッションボード展開オープン。これより任務を言い渡す。」

章と萌歌の昂る心を沈めないようなそんな最高かつ最難関な試練が

表示された。

「的永製薬の黒本入りブラック・ブック魔能使い、水履乾の捕獲。」

それがパーカーの持つタブレットから映し出された初の任務。

「参加組員は菊間、佐東、耳名、屍音の四人。3時間後にスタートします。」

捕獲や、ブラック・ブック、ミッションという字に目を輝かせ、

章と萌歌はハイタッチする。

「来ましたよ来ましたよ!この展開!俺ツエーかな?かな?」

「どっちが狩れるか勝負。」

喜ぶ二人を横目に、ボードに映し出されたミッションを見て、

ピンク髪の女、菊間とパーカーの男、屍音は苦い顔をする。

「こりゃ新人に任せるしかねえな。」

「まぁそう云う意図でしょ。あの総長さんは。」





一方、的永製薬本社地下フロア3階。

薬品の倉庫に何人かの黒い影があった。

近くには職員と思わしき白衣をまとった男性が倒れて

おり、女性職員は部屋の外で血まみれで倒れていた。

「で?刀賀の魔能反応が消失。アイツがやられたってことですか?」

「関係ないさ。全てはこの世を貪り尽くす…悪魔を呼び戻すため。」

明るい厨二病達期待の新人とともに、裏では怪しい影が動き始めていた。



果たして章と萌歌は初任務をクリアすることができたのか。

そして任務先で待ち受ける謎の影とは。

二人の厨二病群像劇せいしゅんはまだ始まったばかり。

「ところでピンクの貴方って誰でしたっけ?」

「菊間だよ。コイツが屍音。ほら、挨拶しな。」

「…。」

「まぁ、慣れてけ。」




次回 任務と陰謀

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