第2話 前日譚。近づく影

「イマドキ転校生とか変わってるよな。」

「学園モノではあるあるだけどね。」

学校が終わり、家で萌歌と映画を見る準備をしていた僕はポテチの袋を

開けた。ジュースを冷蔵庫から引っ張り出し、コップに注ぐ。

「ほい、どうぞ」

「サンクス。マイベストフレンド。」

最近は配信サービスに幅広いジャンルの映画があるので、

5年前のアニメ映画、「完全嬢ミクシトラス」を見ることにした。

物語はざっくり説明すると親を宇宙人に殺された少女が完全無敵を

目指し、日々旅を続けるお話である。オリジナルアニメシリーズのため

知名度は低いもののオタクからすれば名作なのである。

少しワクワクしながらリモコンの決定ボタンを押した。

「章。コーラおかわり。」

「早くないか?まだ映画始まってないんですが…。」

まだ主人公たちや仲間の写っていないところで

萌歌がジュースを飲み干したらしい。

トイレ行きたくなっても知らないぞと言いながらも

コーラを萌歌の持つコップに注ぐ。

「しかしやはり映画にはコーラが一番だな。」

「章に激しく同意。コーラを超えるジュースは存在しない。」

少し駄弁りながらも映画を見進める。

敵キャラの過去も凄く細かに描いているこの丁寧さ。

とにかく味方のカッコいいバトルシーン。

そして文句のつけようのないこの繊細かつ大胆な作画。

素晴らしいとしか言いようが無い。

「お。やっぱりモヒクマンが出てきたな。」

「声優が三色だんご先輩と一緒なの面白いよね。」

と二人で意見を言いながら映画を見ていた。

そんな二人を密かに覗いている人物たちがいた。

「こんな眼鏡のバカップルが魔能使いってマジですか?」

「片方の男の魔力を見てみろ。明らかにあの五神派閥を

圧倒できる力がある。」

「どうやって引き入れますか?コチラの世界にわざわざ足を

突っ込む理由が彼らにはありません。最悪政府から処分が…」

多くのコンピュータの前に人の影が9つ。

全員が怪しげに光る模様のコートを着ており、

手には何かの紋章が刻まれている。

「だから送り込むんだろ。この裏社会の最強魔能使い、

日花時雨を。」

男が口の口角を上げ、つぶやく。

「簡単な作業をすればいいだけだ。なんたって時雨さんは」

夜のビル群の間を何者かが浮いている。月明かりに照らされた

その人間の姿は

「最強なんだから。」

この世を滅ぼす悪魔のようなオーラを醸し出していた。



「へっくし!」

「誰かが章のウワサしたのかな?」

「んな馬鹿な。」

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