元厨二病、現裏社会の最強さん。

ぷろっ⑨

第1話 前日譚 ただの高校生

確かあれは路地裏の隅だった。

不良に一人の女の子が囲まれていた。

その現場に居合わせた僕は発症していた厨二病パワーとノリで

なんと勝ってしまったのであり。厳つい不良たちに。

あのときの僕はホントどうにかしていたと思う。

そして何であの時僕はあんなことをしてしまったんだろうと眼の前の

女を見て思った。

「貴方にはこの世界を護る使命があります。我々と共に戦うか。

オトモダチとココで死ぬか。選びなさい。」








第1話  前日譚 ただの高校生





僕、佐東章はごく普通の高校二年生である。

正確には現時点だが。

普段は教室の隅でアニソンを聞いている何処にでも居る

オタクなのだ。

中学生の頃は完全に周りがドン引きするくらいの

ネジが外れているタイプのヤバめな陽キャオタクだったのだが、

高校に入学する前に姉と妹に

「流石に高校でそのキャラはキツくない?」

と言われたことをキッカケに陽キャを晴れて卒業。

友達は出来るタイプの陰キャオタクへと進化したのだ。

教室の後ろの扉をそっと開ける。前の方ではバリバリ陽キャ達が

集まっているので現在陰キャキャラ状態の僕には

通りづらいものがあった。

今日は昨日音ゲーのランクのために徹夜したので少し眠い。

席に付き、荷物を降ろした僕の瞼は次第にゆっくりゆっくり

落ちていった。



「その汚い手を退け。愚者共。」

ハロウィンの仮装イベントで完全に気持ちがハイになっていた

僕は路地裏で女の子を襲おうとしている不良を見かけ

コレワンチャン俺でも勝てるのでは?と思い、

完全に痛いキャラを演じてヘイトを買ったのだ。

「あ?お前浦三幹事会うらさんかんじかいを知らないとはいい度胸じゃねえか!」

「俺等にはここらじゃ有名の鉢長さんがいんだぞ?分かってて言ってんのかぁ!」

そもそも中学生で不良グループで有名になるなよと今は思う。

「どれだけ集まっても知恵一つ出ないから貴様らは愚者なのだ。」

この時の僕は自作のジャックランタンを顔につけ、ちょっと硬めの杖を

装備していたので、顔バレもしなくて済むという発想で挑んでいたらしい。

「あの世間知らずなガキどうします?屋永さん。」

「ちょっとシバいたらどっか行くだろ。お前らでやってこい。」

不良に囲まれている

状況を作ってしまったらしいが、この時の僕は危機感を感じていなかった。

なぜなら、ジャックランタンの被り物では1からである。

何も知らなかった僕は目の前のモヒカンに思い切り蹴りを入れた。

体勢がズレたせいで思い切り踏み潰してしまったらしい。

「何だ⁉コイツ!この人数を前にビビってねぇ!」

「囲め!この人数ではどうにもなるまい!」

そのとき、完全に不良から意識を外された女の子がコチラを

見て何かを叫んでいた。


…あ…きて…も…く

…き…お…せんせ…る


「章。もう先生来るよ。」

ハッと懐かしい夢から覚める。

眼の前にいたのは陰キャオタク仲間の耳名萌歌である。

顔の半分が長い髪で隠れており、掛けている眼鏡もなんとなく

下がり気味である。自分以外に喋れる友がおらず、いつも放課後に

家に遊びに来るようにまでなった陰キャぼっちなのである。

「昨日のハラスモ見た?めちゃくちゃ良かったよ。」

「あぁ。ハンバーダ編ね。敵のキャラデザ好きだな。特にミイランダ。」

こんな感じで学校では席が隣のため、よく喋る。

さっき夢で出てきた女の子今はどうなっているのだろうか。

そう考えていると、担任が入ってきた。

「お前ら。明日うちのクラスに転校生が来る。女子校から

上がってきたから男子は適切な距離と処置を忘れんなよ。じゃ、

今日はコレで解散!」

「転校生だって。」

「転校生だね。」

クラスの大半が騒いでいる中、僕と萌歌はスマホゲームで

ガチャを回していた。転校生など我々三軍からしたらあまり

意味は無いと判断したからである。

「お。三色だんご先輩だ。」

「えー。いいな。ピック低いのに。」

ガチャを回していると、欲しかったキャラが出て少し声が

上がる。萌歌はどうやら爆死、頬が膨らんでいる。

「あ。今日はお邪魔して良い感じ?」

「良いよ。母さん今日遅いし。」

今度は久々に映画でも見たいと前来時に言われたので

お菓子もジュースも用意してある。

「にしても三色だんご先輩良いな。ビジュ。」

「しばくよ。章。」

このときの僕は知らなかった。まさかこんな陰キャキャラが

世界を背負う運命になるなんて思ってもいなかった。



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