第4話クリスマスは終わらない
クリスマスの朝。
少し遅めな時間に起きた俺がリビングに行くと、クリスマスツリーの下に親からのクリスマスプレゼントが置かれていた。
バイトを始めてからはお金に余裕もあり、欲しいモノは自分で買えるようになったとはいえ、タダでもらえるのは嬉しい。
俺はツリーの下からプレゼントを手に取り中身を確認する。
出てきたのはスニーカーだ。事前に何が欲しいか聞かれたので、スニーカーが欲しいと伝えたので当然の結果である。
で、親からプレゼントを貰ったことで俺は正気に戻った。
いくらなんでも、雪菜に
高校生になりバイトを始めて稼げるようになったとはいえ、湯水のごとくに使えるわけじゃないしな。
勢いに流されるまま雪菜にお金を使い続けるのはやめよう。
そう思いながら、俺はすでに仕事に行ってしまった父さんと母さんにお礼のメッセージをスマホで送った。
すぐに履けるようにと、貰ったスニーカーを玄関先に持っていこうとしたときだ。
スマホに雪菜からのメッセージが届く。
雪菜
『今、家にいる? いるなら行きたいんだけど……』
どうやら雪菜はあとで俺の家に遊びにくるらしい。
家にいるし今日は予定もないからいつでも平気だと返信をすると、程なくして雪菜が俺の家にやって来た。
「おはよう」
朝ということもあってか、少し雪菜は気怠そうにしている。
そんな彼女に俺は改めて聞いた。
「あー、プレゼントはどうだ? 一応、店員さんに雪菜の好みを色々と話して相談に乗って貰ったし、そんなにチョイスは間違ってなかったと思うんだが……」
「……まあ、いいんじゃない?」
「それなら良かった。で、朝から俺の家にやって来て何の用だ?」
「昨日、ちゃんとお礼を言えてなかったから一応ね」
律儀にも雪菜はプレゼントへのお礼を言いに来てくれたらしい。
いや、律儀でもないか。
俺も雪菜から1万円を超えたプレゼントを貰ったら、今みたいな感じで直接お礼をしに行くだろうしな。
「わざわざ悪いな」
「別に……。で、その……」
雪菜はどこか落ちつきがない。
あー、あれか。
さすがに1万円を超えるモノをあげたのは気を使わせちゃったのかもな。
ちょっと失敗したなと思っていたら、雪菜は髪の毛の穂先を弄りながら俺に言う。
「お母さんに晴斗から化粧品を貰ったのがバレて……。で、あれ。私からは何も上げてないって言ったら、何かあげろって言われた」
「……あー、別に無理しなくても」
「そう思ってたんだけど、お母さんにお金も渡されたから」
流れ的に何も貰わないってのは無理そうだな。
俺は欲しいモノを考えたのだが、そうすぐには思い浮かばない。
なので、俺は雪菜に任せることにした。
「雪菜が好きなモノでいい」
「それはそれで困るんだけど……」
「んー、定番だとマフラー、手袋……。高校生だし、文房具とかもありだな」
などと考えていると、雪菜のお母さんからメッセージが届く。
雪菜母
『今日はクリスマスデート楽しんでね。ちゃんと雪菜にはお金を持たせといたから、そこら辺は心配しなくていいわよ』
「なあ、おばさんからデート楽しんでねって来たんだけど……」
「普通に勘違いするでしょ。わざわざクリスマスイブにプレゼントを渡しに来といて、ただの幼馴染って言う方が無理あると思わない?」
お前は何を馬鹿なことを言っているんだと呆れた感じで雪菜に言われてしまった。
確かに、あんなことをしておいて、おばさんに俺と雪菜が付き合ってると勘違いされない方がおかしいな。
「てか、デート行かないの?」
「逆に聞くけど行きたいの? 私、デートには行ったふりして今日は晴斗の家でゴロゴロしてようと思ってたんだけど……。ほら、プレゼントを買ってあげたって言えば、デート行ってきたように見えるし」
なんで、私がお前とお出掛けしなきゃならないの? と雪菜は少し嫌そうな顔だ。
そんな彼女に対して、俺は意地悪なことを言う。
「じゃあ、俺へのプレゼントはデートってのはどうだ?」
俺がわざとらしく告げると、雪菜は頬をぴくつかせて嫌味たっぷりな感じで俺に文句を言う。
「ほんと、私が嫌がることするのがお好きなことで……」
「好きな子ほど虐めたくなるってやつだな」
「はぁ……、こんな奴に……なんて、昨日の私を殴ってやりたい」
「ん? 何か言ったか?」
「何も言ってない」
イマイチよく聞き取れなかったので、聞き返すも雪菜は教えてくれないようだ。
よくあることなので、俺は気にも留めず話を続けた。
「着替えるからちょっと待っててくれ」
「本当に出掛ける気?」
「いや、暇だし別にいいだろ」
「……はいはい」
呆れたように俺に答える雪菜。
そんな彼女に俺は出掛けようと思ったもう一つのワケを言った。
「俺があげた化粧品でメイクしてくれているんだ。なのに、家でゴロゴロするだけってのも勿体ないだろ?」
いつもと違った化粧をしている雪菜は少し狼狽えながら聞いてくる。
「き、気づいてたんだ。別に晴斗に見せたくて貰った化粧品を使ったわけじゃないからね」
「そうだったとしても嬉しいからな。自分があげたモノを使ってくれるのってさ」
「……出掛けるんでしょ? 早く準備したら?」
さっさと着替えて来いと雪菜に急かされたので、俺は着替えるために自分の部屋に向かうべく雪菜に背を向けたときだ。
俺の服をきゅっと雪菜が引っ張ってきた。
そして、俺にとんでもない爆弾発言をする。
「あのさ、本当に彼女っぽいことしてあげよっか」
思いがけない雪菜の発言。
俺はその場でカチンと固まってしまうのであった。
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