最終話

休日の侯爵家。

わたくしは攻略対象の婚約者たちを我が家に誘い、午後のティータイムに花を咲かせています。


「そういえば私、婚約解消になりましたの」


「奇遇ですわね。私もですわ」


騎士団長子息の婚約者だった子爵令嬢の言葉を皮切りに、皆さん近況について話し始めました。

わたくしの予想通り、皆さん攻略対象との婚約が解消となったそうです。


「ビクトリア様が改良した魔法のおかげで、同性同士でも子供ができるようになりましたから、わざわざ婚約を続ける必要もありませんしねぇ」


魔法で同性同士で子供ができるようになりました。

おかげで政略というなら候補は同性同士まで広がりましたから。


「ビクトリア様がアラン殿下との婚約が解消されたのも理由の一つにありますけどね」


そうなのです。わたくしアラン殿下との婚約は解消となりましたの。

ロレーネ侯爵であるお父様に、これまでのアラン殿下たちの学園での振る舞いと改良した魔法の術式を材料に、陛下に交渉していただきましたの。


「アラン殿下たちはほんとうに――」


と婚約解消から攻略対象たちの愚痴大会がわたくしたちの間で繰り広げられていたところ、とある準備をしていたメイドがサロンに入ってきました。



リードに繋がれたアニエスを伴って。



「ビクトリア様のペットの、アニエスちゃんは相変わらず可愛らしいですわね……」


「今日は犬の耳と尻尾ですか……」


メイドの持つリードはアニエスの首輪につながっており、メイドの歩みに合わせて四つん這いでこちらに歩いてきます。

アニエスは生まれたままの姿で、犬耳と尻尾を生やしています。

ペットに服は不要でしょう?

あと、犬耳は魔法で直接頭から生やしています。

尻尾は魔法ではありませんよ。そちらの方が尻尾弄ったときの反応が楽しめますからね。


「皆さま? 今日はアニエスと何して遊びます?」


「先に学校でのビクトリア様に対する振る舞いの教育からでは?」


「いいですわね? とりあえず鞭使います?」


「わたくし、お尻叩いてみたいですわ♪」


「それは赤子のしつけでは?」


と各々思いついたことを言い合っております。

そんなことばっかり言っているとアニエスが怯えて……


「全部! 全部お願いします! ご主人様!」


アニエスは目をトロンとさせながら訴えてきた。

……立派に育って嬉しいことです。





こうして乙女ゲームのヒロインだったアニエスは、侯爵家次期当主であるわたくしビクトリアの専属侍女兼ペットになり、生涯に渡ってわたくしや、攻略対象の婚約者だったわたくしの友人たちから、可愛がられることとなりました。



その後、アニエスは毎年のように立て続けに子供を出産していきました。

その子供たちの髪色は、わたくしや友人たち誰かの髪色をしていたそうな……





え? 乙女ゲームの攻略対象はどうなったのかって……?


あー……攻略者たちのその後は良く知りません。

特に興味ないので。

聞いた話では、皆さん廃嫡されて家から追放されたそうです。

果たして今はどこで何をしているやら……


まあ乙女ゲームの攻略対象だった方たちですし、どこかで逞しく暮らしていることでしょう。



そんなことより、アニエスの教育の方が大事です。

今日はどんな教育調教をしましょうかしらね……





わたくしは悪役令嬢……無事、ヒロインを攻略対象から寝取りました♪

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

わたくしは悪役令嬢……そうだ、ヒロインを攻略対象から寝取りましょう♪ Ryo-k @zarubisu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ