リハリビ

よしし

リハリビ 悪役

 

 僕は昔から嘘をつくのが得意だった。


 最初はただ、友達の会話に入りたかっただけだった。


 小学生の純粋な心につけこむのは簡単で皆すぐに僕の話を信じた。

 嘘をつくたびに友達が増えていき、休み時間になったらクラスメイトが何人も僕の席を取り囲んでいく。


 それが気持ちよくて、僕はまた嘘をついた。


 けれど、嘘とはやはりばれるもので一人、また一人と僕から離れていった。中には「嘘つきとはもう話しなんかしない、絶交だ」そんな事まで言う子も出てきた。

 

 でも僕は気にしなかった。


 また面白い嘘でもつけば元通り向こうからやってくるだろう。そんな無根拠な自信が僕にはあり、同時に「嫌われて絶交されてもそれはそれで構わない」という気持ちもあった。


 人とは不思議な物で、好意に近い物を渡され続けたら、例え嫌いな人でも嫌ではなくなってしまう。時間がたって嫌いな所を忘れてくれるのも相まってだろう。

 絶交だと言われた翌日に相手から無視され続けても、こっちは関係なく「おはよう」なんて挨拶だけでも作り笑顔ですればいい。

 

 一日……二日……いや、一週間ぐらいは無視されるかもしれない。

 だが、それが一ヵ月続いたらどうだろう?

 

 相手にとって僕の嫌いな所は薄れ始め、「笑顔で挨拶されるが無視する自分」という構図が出来上がり、罪悪感が芽生え始めるだろう。


 そんな時、別の友達に「なぁお前って■■になんで嫌われてんの? ■■はお前が悪いって言ってたけどさ。それにしてもずっと無視はひでぇよな。」

 なんて言われたら僕は心の中で笑いが止まらないだろう。

 向こうはこっちを意識している。嫌いの反対は好きだが、好きの反対は無関心とは良くいったものだ。


 すかさず俺はこう言ってやる。


「あーいいんだよ、向こうは悪くない、俺が悪いんだよ俺が」


 こうなったらもうの思惑通りだ。

 この会話の内容は友達を通じていずれ相手の耳に入り、更に罪悪感が増すだろう。

 後はいつもどおり挨拶を続け、向こうからのコンタクトを待つだけ。簡単だ。


 …………え?


 それでも相手が俺の事を嫌いなままだったらどうするかだって?

 その時はもうしょうがない。


 俺からみてそれはもうひとではない。

 モブキャラ、NPC、意思の無いロボット。こっちから挨拶をするだけの物だ。

 

 もし俺の邪魔をするような事があれば、その時は……



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リハリビ よしし @yosisi-ex

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