昆虫標本 第一話
夜な夜な校舎内を何かが徘徊するという情報をキャッチした。
俺は怪奇現象を主に扱う雑誌記者 中岳 翔太。
大体この手の情報には尾鰭が付いて大きくなる事が大きく取材すると、記事になるものでないものが多い。
今回も期待はしていないが、問題の中学校にアポイントを取った。
すると、意外な返事が返ってきた。
夕方学校へ来てもらえれば鍵を貸してくれるというのだ。
調査取材が終わると、朝に鍵を返却してくれれば構わないとの事。
このご時世、セキュリティが厳しいところが多い中、意外に感じたが、うちの編集長がこの学校の理事長と親しい中である事。
加えて私立で防犯カメラが出入口全てに設置されていて、何かあっても防犯カメラで追跡調査が可能かつセキュリティが飛んでくるので、記者の俺に求められるものは社会人として常識の範疇で調査取材を行う事だった。
こちらとしてはいろいろな手続きがいらないので、もの凄く助かる。
それに俺以外の同行者がいると怪奇現象が起きない事もあるので、その点も助かる。
さて、この学校の怪奇現象だが、代々噂される学校の七不思議の一つ。
【夜な夜な昆虫標本が巨大化し、校舎内を徘徊するというもの】
まずは、理科室を調査。
さすがに備品などが置かれている部屋には勝手に入らせて貰えないが、教室や実験室には入る事ができた。
しかし、そう簡単に動く巨大標本に出会えることはなく、明かりの消えた不気味な廊下を淡々と移動しながら探す。
1階の調査を終え、収穫なし。
2階へ上がる。
少し歩くと何かの気配がした。
俺は慌てて、近くの教室へ入り廊下の様子を伺う。
“まさか!?“
目の前にとても信じられない光景が。
明かりがなくても分かるほど、大きなアリの存在。
身長はゆうに2mは超えている。
ゆっくりと後肢(うしろあし)で二足歩行で歩くアリ。
前肢だけでなく、中肢も動いている。
初めは着ぐるみかと疑ったが、2mを越える大きさに加え、6本の肢全て動いている。
人が入っているならば、せいぜい前肢と後肢くらいしか動かせないだろう。
そして全身には腹部、胸部に細かな毛が生えている。
巨大アリは時折、大アゴを動かしながら、俺の隠れた教室の前をゆっくりと通り過ぎて行った。
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