人体模型 第八話

筋肉を脱ぎ終えると、骨と内臓だけになってしまった。

真っ暗なところで見たら、この姿で動ける事自体あり得ないので見た人は腰を抜かしてしまうだろう。


当然だが、内臓や骨の下には黒いラバースーツを着用し、そこに骨や内臓が絶妙な凹凸でくっついている。

これではまだ、中の人の顔は確認できない。

すると、首元に骸骨の指を左右両方から入れて首元を開き、二の腕辺りまで引き下げる。

黒い背景で見ると、頭蓋骨だけが宙に浮かび、肩辺りがへしゃげた妙な事になっている。


骸骨の指は首元、頭蓋骨の真下を捲ると、肌が出てきた。

続いて、頭蓋骨のマスクを取ると顔が出てきた。

髪は汗で湿っているが、その顔は紛れもなく紗弥香先生だった。


俺は思わず紗弥香先生を抱きしめてキスを迫ったが、あっさりと手で止められ、押されて距離をあけられた。

「もう、お終い、約束通り顔は見せたわ、堂上先生のとこへ戻るわよ!」

何故か強引に終了を言い渡された俺。

語気を強めた紗弥香先生の言葉は、俺を従わせるには十分であった。


紗弥香先生は骨と内臓の上からセーラー服を着ている。

よく見るとそのセーラー服は通常のものとは異なり、ラバーでできているようで、月明かりで光沢を放っていた。

もうあまり校舎に人は残っていないと思うが、もしバッタリ誰かに遭遇したら、骨と内臓だけで歩いていると騒ぎになりかねないので、紗弥香先生がセーラー服を着る事は俺も賛成だった。

それより、何より紗弥香先生の高校時代を彷彿させ、また俺は興奮してきた。


紗弥香先生は脱いだ皮膚と血管、それに筋肉の人体模型スーツを腕に抱えると、ハイヒールにもかかわらず、なかなかのペースで歩き出した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る