第33話 年上になった幼馴染、それが今では恋人に
翌日、悠陽は入院していた。
走りすぎて心臓の調子が悪化し──……たわけではなく。
「いやー、ゆう兄ちゃん、まさかあれで失神しちゃうとはねえ」
ニヨニヨと笑う美桜。
悠陽は病室のベッドの上で頬を赤くしていた。
精密検査の結果は異常なし。せいぜいが医師に「青春もほどほどにね」と言われたていど。
つまり、悠陽は美桜のキスで失神してしまったのだ。
(確かにあの瞬間は天にも昇る気分だったけど……そういうことじゃねえんだよ!)
「も、もういいだろその話は」
「だってえ。可愛いなあと思って」
「か、かわいくねえよ別に!」
子ども扱いをされたのが気恥ずかしく、ゴロンと寝返りを打ってそっぽを向く悠陽。
「ああ、
「……食べるけどさ」
悠陽はもぞもぞと体の向きを戻す。
目の前にくし切りのリンゴが浮いている。
「はい、あーん」
「あ、あーん……」
照れくささに頬染めながらも、悠陽は差し出されたリンゴにかぶりつく。
しゃく、と瑞々しい触感。
甘い。
「どう? おいしい?」
「んぐ……」
「へへ。またゆう兄ちゃんのお世話ができるなんて、嬉しいなぁ~♪ ふんふん♪」
「もごぉもがががもぐぐぐ」
「食べてるときは喋らないの、めっ」
「むぐぅ」
美桜は病室に来てからずっと嬉しそうな顔をしている。
「いや~、まだまだ私にできることがあって嬉しいよ」
「……んぐ」
悠陽はリンゴを飲み込むと、ぼそぼそと誤魔化すような小声で言う。
「いや、俺は別に世話とかそーゆーのじゃなくても美桜ちゃんが遊びに来てくれるなら嬉しいっつーか、なんつーか」
「え~? そんなに来てほしいの~?」
「う、そりゃ、まあ、うん……いちおう、付き合うことになったわけだし」
「きゃ~~!! きゃ~~~~!!!」
照れた美桜にバシバシと叩かれる。
(おかしい、俺が告白をしたはずなのに、どうして美桜ちゃんの方が余裕あるんだ? なんかおかしいって)
晴れて悠陽の彼女となった美桜はゲームで言えば無敵状態。
恐れ知らずの負け知らずだった。
「ふふん。まぁ、さすがに私だって今なら分かるよ。お世話するだけが私の価値じゃないって」
「そうだよ。最初からそんなこと思ってないって」
「にひひ、
「う……そうだよ!
「ぐふ、ぐふふ……」
美桜がワルそうな笑みを浮かべる。
「な、なんだよ」
「ゆう兄ちゃんが退院するのが楽しみだなぁ~、ぐふふふ。ナニしよっかな~」
「ナニって、なにさ」
「ぐふふ、ぐふふふふ。まあまあまあ、まずは私が捕まらない範囲で、ね?」
すっかりオトナのお姉さんになった美桜が茶目っ気たっぷりにウィンクする。
悠陽の心拍数が跳ね上がり、スマートウォッチがピコンと鳴いた。
______
結になります!
こちらカクヨムコン9に参加している作品となります♪
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