キミに贈る、幸せの花。2
「ごめんね。今までずっと隠してて。」
「え?」
「驚かないで。」
「雛が、殺し屋。。。?」
「うん。」
「え、、、?殺し屋って、人を殺す、、、?」
「うん。」
私の気にしすぎだろうか。「人殺し」ではなく、「人を殺す」と言ってくれていることが、無性に嬉しい。
「人殺し、じゃなくて、人を殺すって言ってくれるんだね。」
「だって、雛は。。。私の友達だから。」
「優しいね。」
「本当に、雛は殺し屋なの?冗談じゃなくて?」
「うん。」
「なんで、、、?」
「急にこんなこと言われても、信じられないよね。」
「だって、雛は、雛は、私の友達で、優しくしてくれて、家にも連れてってくれて、、、なのに、殺し屋、、、?」
「うん。ごめんね。」
「嘘、だよね。夢、かな。」
明日翔が私のとの絆を信じてくれてるのが伝わってくる。
「嘘でも、夢でもないの。ごめんっ。。。」
「一緒に、、、、、、いられないの?」
「うんっ。。。」
すると、明日翔は大粒の涙をぽろぽろと流した。
「何で明日翔が泣くの?」
「だって、雛、死んじゃうんでしょ?」
「死なないよ、私は。」
「ーーーーーーっ!」
「もう、気付いた?」
「ターゲットは、、、私?」
「うん。」
「!」
明日翔は、声にならない悲鳴を上げた。殺されると思ったのかな。しょうがないか。殺されるって言われたんだもん。
でも、次の瞬間、明日翔は私に抱き着いた。
「言ってくれてありがとう。殺して、いいよ。」
「なんで、私がこんなこと言ったか分かる?明日翔。」
「私を殺す前に、秘密を打ち明けるためじゃないの?」
「ううん。違う。私がこんなこと言ったのは、明日翔を助けるためだよ。」
「!?」
「ふふ、殺されると思った?」
「うん。。。。。。でも、雛は、こんなことして大丈夫なの?」
「大丈夫だよ。私、強いから。」
「でも、どうするの?どうやったら私も雛も生きる事ができるの?」
「私も、分かんない。だから、一緒に、考えよう。まだ時間はあるから。」
「分かった。必ず、二人で、生き延びよう。」
でも、どうやったらいいのだろう。この狭い世界で、どうしたら逃げれるのだろう。どうしたって、絶対に見つかってしまう。だって、あの西園寺グループの社長令嬢だ。誰だって手に入れたいだろう。
きっとお父様は、私たちを見つけるためなら、マフィアやヤクザ、誰とでも手を組むだろう。
そしたら、もうどうしようもない。
見つかったら最後、明日翔も私も、死ぬよりもっとひどい目に合うかもしれない。
だめだ、もう、死ぬ未来しか見えない。
「西園寺グループの所有してる、地下シェルターとかじゃダメかな?」
「地下シェルター、、、?」
「うん。西園寺グループの地下シェルター計画。結局、没になって、関係者以外誰も知らないんだけどね。実は、少しだけ作られたの。」
「そこに逃げるの?」
「うん。」
「でも、危険だよ。関係者を割り出したら、一瞬で場所が割れる。」
「でも、シェルターのことを知ってるのは、お父さんと、関係者5人。
それに、シェルターは複数あるし、計画書、その他情報が漏れる可能性があるものは、全部、西園寺グループの01倉庫に保管してあるから大丈夫。」
01倉庫!?
西園寺グループの社長しか入れない、実在しないとまで言われた、幻の倉庫!?
あそこにあるのなら確かに安心だ。
「シェルターって、どこにあるの?」
「ちょっと待ってね。。。」
明日翔は、私たちの住んでる周辺のホログラム地図を取り出した。
そして、私の住んでいる邸をペンでタップした。
「そこって。。。。。。」
「西園寺グループの所持してる土地じゃないよ。でも、、、、、、」
「私の、家だ。。。」
「!?」
「ここ、私の家だよ。」
「え?でも、前は、雛の家、一軒家だったよ。。。?」
「あそこは別荘なの。」
「そうなんだ。。。でも、ここのシェルターが一番安全なの。」
「ほかのところを当らない?」
「。。。でも、ここのシェルターが一番安全なの。」
「私の家の地下だよ?」
「それでも。入口の仕組み、壁の厚さ、入るためのロック、出入りするときに場所を悟られにくいし、怪しまれない。
それに、灯台下暗しって言うでしょ?」
「分かった。」
それからは、もう早かった。
明日翔のお父さんの、西園寺さんに事情を話した。西園寺さんは私のことを受け入れてくれた。そして、私が明日翔を終わらせる年末にはシェルターを用意してもらえることになった。
でも、私たちがシェルターにいく一週間前、事は起こった。
お父様に呼び出されたのだ。
「雛。隠し事はないか。」
「隠し事?ないよ。」
いきなりどうしたんだろう。もしかして、シェルターに隠れることがバレてしまったとか。。。?いや、そんな訳ない。
「そうか。残念だ。」
そういうと、お父様は、8人のSPを部屋の中に入れて、私を囲ませた。
「お父様、、、?どうしたの?」
「捕らえろ。」
そういって、私を跪かせた。
「雛、もう一度聞こう。隠し事は、、、ないか?」
「隠し事なんてしてないよ。どうしたの?ねぇ、なんもしてないって。」
「そうか。それが雛の答えか。連れていけ。」
そういって、SPは私を地下牢に連れて行こうとした。
でも、私だって伊達に殺し屋をやってきたわけじゃない。SPごとき、私にかなうはずがない。
それに、武器も携帯してある。
私の武器の扇子は近・中距離戦用だ。扇子の扇形の弧の部分が刃になっているし、扇子の元の部分は、短剣としても使えるように改造してある。
「ぐっ!」
私は扇子を取り出し、立ったまま一回転し、私の周りのSPを撒いた。
でも、案の定SP達は入り口をふさいだ。でも、無理だ。100人で入り口をふさごうったって、この部屋の入り口は広い。上が全然守れてないから、高く飛べばいい。
私は、大きくジャンプしようとした。が、足を縄ですくわれてしまった。お父様の武器だ。
でも、足を大きく振り回して、縄をお父様の手から奪い、鞭のようにして振り切った。縄を切らなければ。
そして、大きくジャンプした。
私の部屋は目の前だ。扉を開けるのが面倒だな。扇子を投げれば開くかな。
ドアは大きい音を出して開いた。
でも、ドアの音のほかにもう一つ音がした。
ダダダダダダダダダダダダダダ!
この音、、、銃!
ヤバイ。防弾チョッキは着てるけど。。。足が!
っ!弾がかすった。でも、大丈夫だ。深くはない。
よし、このまま窓を蹴って外に出れば、私の勝ちだ!
ガシャン!
うわっ!高っ!まあ、私の部屋、三階だからなぁ。死にませんように!
私は窓を蹴って飛び降りた。そして、庭に着地した。
「生きてる!やたぁぁぁぁ!」
私の部屋の窓に誰かいる。持っているのは、、、銃!?
やばっ!タヒぬ!
飛んできたのは麻酔銃だった。当たったら本当にヤバい奴だ。でも、銃弾が大きいから、扇子で弾けばいけるかな。
SP!?庭まで下りてきたの!?みんな銃持ってるし。。。今度こそヤバイ?
私は扇子を使って何とか戦った。でも、この量の弾、全部はじけない!
しょうがない、この敷地から出るか。正門に行ったら、門番に殺される。じゃあ、やっぱり、柵がある方から逃げるか。
私は一目散に柵に向かった。
スッ。
はっ!どうしよう。サファイアのネックレスが外れた!
私は急いで引き返した。でも、無理だ。取れない。
どうしよ。あれは、大切な、大切なものなのに。明日翔からもらった。。。
「雛?」
*__________________________________*
雛が、黒い大勢の男たちに追われている。
胸元にはサファイアのネックレス。
両手には、二枚の扇子。
足からは出血している。
そして、こっちに向かって走ってくる。
あっ。ネックレスが落ちた。
え、、、?戻るの?死んじゃうよ?
「雛?」
ねぇ、ネックレス何ていくらでも買うから、引き返さないで!死んじゃうよぉ!
でも、雛は姿勢を極限まで低くし、何とかネックレスを取って見せた。
そして、私に向かって、大声で叫んだ。
「逃げて、明日翔!」
私は怖くなった。そして、自分の家まで全速力で走った。
*__________________________________*
明日翔は一目散に逃げていった。これでいいんだ。
「明日翔を捕らえろ!」
お父様は、西園寺 明日翔を逃がさぬよう、必死にSPに命じる。
でも、無駄だ。
私は扇子をたたみ、扇子の元についているナイフでSPを切りつけた。ナイフは毒が塗ってある。死にはしないが、数日もしないと動けないだろう。
そして、SPを全員気絶させた。
そして、お父様と1:1になった。
お父様は銃を構えている。一歩でも動けば殺される。あれは、銃弾チョッキを貫通する。
あまりにも不利だ。私が持っている扇子は近距離から中距離武器なのに。
でも、相手の間合いにさえに入れば、、、
私は思いっきり跳んだ。
銃を撃たない?
まさか!
私はお父様にどんどん近づいて行った。そして、お父様の真上まで来た。扇子を振りかざすよりも早く、銃弾が届く位置。
終わる。もう、無理。
でも、生きるって決めた。意地でも生きなきゃ。
全てがスローモーションに見える。
銃弾が飛んでくる。
狙っているのは、頭?
なら、割と遠いから、時間が稼げる。
どうしよう。何も物がないから、勢いに任せて体が動く。
もういいや。死ななければいい。
私はそのまま突っ込んだ。
アーチ型に体を反れば、致命傷は避けられる。
銃弾が、私の体を突き抜けた。
そして、お父様の手を切り落とす勢いで切った。
「ゔっ。。。」
お父様はうめき声をあげる。
私は疲れで地面に倒れこんだ。
そして、そのまま意識が遠のいた。
「雛?」
「、、、明日翔?」
私は病院のベットにいた。
「銃弾は取り除いたから、、もう大丈夫だよ、雛。」
「手術したの?」
「うん。あの時、逃げちゃってごめんね。」
「ううん。逆に、逃げてくれてありがとう。」
「なんで?だって、私のせいで、雛がこんな怪我しちゃったんだよ?」
「うん。それでも。もしも、今回みたいなことがあったら、明日翔は必ず逃げるんだよ。誰かを守りながら戦うのって、とっても難しいの。
だから、ちゃんと逃げてくれてありがとう。
それに、私を助けてくれて、ありがとう。」
「ううん、あれは私の執事がやったことだから。」
「執事が?」
「うん。執事の伊万里。わたしのSPでもあるの。
とっても優しくて、かっこよくて、、、強くて。」
「伊万里さんが好きなんだね。」
「うん!大好き。」
「お父様は?」
「雛のお父さん、、、、、伊万里が戦ったんだけど、逃げられた。」
「っ。きっと、すぐにでもシェルターに逃げなきゃ危ないね。特に明日翔。もう、いつさらわれてもおかしくないよ。すぐにシェルターに隠れなきゃ。」
「雛はどうなるの?」
「私は大丈夫。」
「絶対に死なない?」
「うん。」
「分かった。絶対だよ。もしも雛が死んだら、私も死ぬからね!」
「そんなの絶対だめだよ!」
「じゃあ、絶対生きてね。」
「明日翔!大丈夫だったか!?」
あ、明日翔のお父さんだ。
「私は大丈夫。でも、、、」
「娘を守ってくれてありがとう。」
「いえ、私が巻き込んでしまったので、逆に、本当にごめんなさい。」
「いいんだ。私の娘の命の恩人だぞ。」
「明日翔さんはすぐにでも伊万里さんとともにシェルターに移動してください。」
「分かった。じゃあ、明日翔、行こうか。」
「ちょっとまって!?雛はどうするの!?」
「明日翔は狙われているんだよ?」
「それは雛も一緒じゃん!」
「。。。雛さんには悪いが、明日翔、これ以上雛さんと一緒にいると命が危ないんだ。」
「その通りだよ、明日翔。」
「なんでよぉ!一緒にシェルターに逃げる予定だったじゃん!」
「明日翔には生きてほしいから。」
「でも、そしたら雛は。。。」
「ごめん、でも、私とお父様がグルで、明日翔を騙してるかもしれないんだよ?」
「え、、、、、、騙してるの?」
「もしもそうだったら、明日翔はどうするの?
私、伊万里さんより強いよ。」
「でも、でも、、、」
「これは、私たちにどうこうできる問題ではないんです。行きましょう、明日翔お嬢様。」
「嫌だ、伊万里、離して!お願い、雛と一緒にいたいの!」
「お嬢様、行きますよ。」
「やめて、嫌だ、ねぇ、雛ぁぁ!」
「明日翔、バイバイ。」
あれ、明日翔のお父さんは一緒に行かないのかな?
「どうしたんですか。西園寺さん。」
「入院費とその他諸々の、怪我が治るまでの費用は全てわたくしが出します。」
「ありがとうございます。」
「明日翔の為にやってあげられることはこれ位ですから。」
「娘さんのこと、大切に思われているんですね。」
「ええ。それでは。」
そういって、西園寺さんも行ってしまった。
そして、私は一人、病室に取り残された。
なんで、一緒にいられないの?
ねえ、明日翔、絶対に私達、離れ離れにならいから。
絶対に迎えに行くよ。
*
_______________________
*
なんか音がする。もう夜の12時なのに。。。
「柴田!?」
柴田はお父様の部下だ。何で私の病室がわかったんだろう。
いや、柴田なら当然か。こいつ、ハッカーだもんな。
機会オタクで、ハッキングの天才、柴田。毒舌で、相手に恐怖を与える眼光の持ち主。私とは5歳違いの20歳で、いつも、なんだかんだ仲良くしてた奴。
まさか、敵になるなんて。
「娘の弱ったところを狙うなんて、お父さんも卑劣ですよねぇ。」
「柴田は、私を殺しに来たの?」
「いいえ、明日翔さんの居場所を吐かせに来たんです。」
時間を稼がなきゃ。暗くて、今どんな状況なのか分からない。柴田の情報がないから、安易には動けない。
「あんたなら簡単に居場所を特定できたんじゃ?まさか、私を頼るしかないなんて、天才ハッカーも落ちぶれたものね。」
「おやおや、相変わらず毒舌ですね。でも、大口もいつまで叩けますかねぇ?」
柴田は遠くにいる。手に持っているのは、なんだろう。
「。。。」
柴田の眼光、実際に向けられる側になってみると、めっちゃ怖い。
「少し、眠っててください。」
「っ!」
私は思いっきりジャンプした。いつの間に私の近くに来たんだろう。
「相変わらずの飛翔力ですねぇ。」
「柴田も、相変わらず強いわね。」
「でも、雛さんには及びません。」
「でしょうねっ!」
私は何か飛んできたのを感じて、とっさによけた。飛んできたのは、槍?だとしたら、かなりまずい。槍は柴田の得意武器だ。
とりあえず、広いところに逃げなければ。
ここは6階だから、窓からは降りれなさそうだし、ドアからしか出れないのか。でも、ドアには柴田が。。。まあ、扇子は近距離戦が得意だし、大丈夫か。
私はスピードを上げて、一気にドアまで向かった。そして、一気に姿勢を低くした。
柴田とは幼馴染だから、私の飛翔力を知ってる。それだったら、それを逆手に取る!
柴田の股の下をすり抜ける。外に行けたら、いくらか私が有利になる。
ふう、とりあえずは病室の外に出られた。人目に付いたらヤバいから、屋上に行くか。
私も強いから、屋上は広いし、一対一だから、私にも有利なはず。
「屋上ですか。いい墓場ですね。」
「どっちの墓場でしょうね。」
「もしかしたら、僕かもしれませんね。」
攻撃が来る!でも、どこ、どこから?
「上ですよ、雛さん。」
「。。。。!」
まさか。柴田がこんなに飛べるなんて!見くびってた。
私は柴田と距離を取った。
そして、一方の扇子をブーメランのようにして飛ばした。
もう一方の扇子を片手に柴田との距離を詰めた。
案の定、柴田は後ろに下がろうとした。でも、後ろには下がれない。
さっき私が投げた扇子のブーメランがあるから。
柴田の逃げ道は、上か下だ。
でも、長い槍を持っている柴田の選択肢は実質一つ、上に絞られた。
そう、上だ。
私の飛翔力を考えれば、きっとこれが最善だろう。傷の一つや二つくらい付けられる。
でも、柴田は急に姿勢を低くした。
ヒュンッ。
柴田に傷をつけるはずだった、手に持った扇子が空を切った。
ヤバイ、足を切られる。
前のめりになった私は、後ろに下がれなくなってしまった。
でも、勢いをつけずにジャンプなんてしたら。。。私の扇子のブーメランが自分に当たる。どうしよう。。。
でも、扇子のブーメランは叩き落せば、、、!
私は思い切ってジャンプをした。
キン!
そして、扇子のブーメランを叩き落し、もう一方の扇子も、私の真下にいる柴田に向かって投げつけた。もう、これで終わりだ。
「・・・」
「相変わらずの強さですね、雛さん。」
「あったりまえでしょ。」
「さすが、ボスの娘。肩を結構深くやられましたね。」
「あんたと話してる暇なんてないから。」
そういって私は、柴田を終わらせた。
なんでだろう、殺し屋を辞めたいと思えば思うほど、この手が真っ赤な血で染まっていく。。。
なんで?私、幸せになっちゃいけないのかな。
「柴田の脈の確認をしなきゃ。」
脈は。。。ある!?確実に急所にナイフを入れたはず。。。。。。
いや、私、急所から外したな。覚えてる。ちゃんと。私、何をいまさら躊躇ってるんだろう。今まで星の数ほどの人を終わらせてきたのに。いまさら躊躇うなんて。
しょうがないか。戦ってる途中だって、ずっと悲しかったんだもの。
まさか、あの柴田と戦うなんて。まさか、好きな人を殺すことになるなんて。
柴田のさらりとした髪を私は優しくなでた。
「止めなんて刺せないよぉ。。。」
「なら、永遠に、僕と一緒にいてください。」
「柴田。。。。。っ!?」
うっ。。。なんで、私は柴田を見上げているの?なんで、空が見えるの?
あぁ、もう考えるのも疲れちゃった。もう、意識が持たない。。。
「明日翔、だいすき。」
キミに贈る、幸せの花。 @tyoko_reta
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