3.世界は?

さぁ〜て、俺が転生した世界を説明しよう。


この世界は一つの大陸を中心に無数の大きな島が周囲にある。

気候や地形は場所によって異なるが、俺が転生した場所は比較的温暖で日本に近い気候だ。


季節は地球とは違う。

この世界では春夏秋魔冬の五つが季節だ。

[魔]とは。

簡単に言うとその期間だけ魔物が大量発生するのだ。

さらに不思議なことにその期間の気候はどこも同じになり、春に近い気温になる。


ここで、俺の功績を紹介しよう。

この世界では一年が400日間ある。転移した時点で具体的な月の区切りがなかったため、俺は月を一月から十三月に区切った。

十三月は三十五日間あり、その月が[魔]の期間となる。

後の月は日本と同じで季節も合わせてある。


さて、俺が転生した時代だ。


俺が転生して生まれたのが前世の俺が死んでから428年後。暦でいうとタイガ暦428年というらしい(俺の名前がつけられているとは・・・)。


俺が建国した国は健在で、ヴィネトリア帝国となっていた。俺が生まれたのも帝国の帝都ヴィーネだった。ラッキー!

帝国の他にも周囲に王国や共和国などが存在している。


このヴィネトリア帝国はとにかくでかい。

大陸のほぼ全てが領土で数カ国の従属国がある。


皇帝がトップであり、主に貴族議員政で平民も議員になれる。

貴族は上から公爵、侯爵、伯爵、子爵、男爵、騎士爵の順になっている。

中でも力を付けているのが五公と呼ばれる公爵家たち。

アルレンス、フィール、オフトス、グレイル、ナーバナ。

この五家だけで帝国の三分の一の領土を持っている。


歴史で言うと、俺が死んだあと子孫たちはそれぞれ分裂し、嫡流の王家を含む七家が権勢を誇っていた。俗に[一王六公]と呼ぶらしい。

しかし六公の内のティーグラ家が没落したことでバワーバランスが崩れ、内乱が勃発。さらに今から約200年前に王家が断絶したことで内乱がさらに激化。周囲の国を巻き込んだ大戦争に発展した。

この乱を収めたのが【レオン・ルーロ・ティーグラ】。没落したティーグラ家の三男だった者だ。

実力で当主となり周囲の敵を倒していき王になったのだ。王国を帝国にまで押し上げた、この国の勇者であり、英雄だ。前世の俺とレオン二人を『二大勇者』、または『英雄』と呼ぶ。

今の皇家もレオンの子孫のティーグラ家だ。


この国は地域ごとに産業は分かれており、特色も違う。経済の中心地でもあるため物流が多い。特に帝都では手に入らないものが無いぐらい外から物が入ってきて栄えている。奴隷は存在しており、合法となっている。

帝都は大陸の中心から南に少し行った大河に面しており、人口300万人の大都市。政務をしている多くの貴族も住んでいた。


そうそう、俺の説明がまだだった!


俺の転生後の名前は【レイド・ルーロ・インフィルス】。

レイドが名前でインフィルスは家名。ルーロは男子か女子かを表している。ラが女性、ロが男性。ルーが前に付けば貴族、バーが付けば王家だとわかる。


俺の家、インフィルス家は子爵家。父が【ブラット・ルーロ・インフィルス】、母が【レーナ・ルーラ・インフィルス】だ。姉弟は三人。三つ上の姉の【ナーシャ】二つ下の妹が【レイナ】、五つ下の弟が【レガル】だ。


俺のことだが、見た目は普通。黒髪に黒い目。少し長めの髪で顔は至って普通。強いて言うなら目鼻立ちがしっかり整っているぐらい。

体格は少し細めだが筋肉には多少自信がある。


ま、俺のことなんてど〜でもいい。


ところで、この世界に存在する[魔素]。俺でも詳しく説明できないが、簡単に言うと空気のようなものだ。空気中にそこら中に存在し、それを体に集めて物質に変換するのが[魔法]。不思議な力で、要するに無を有に変える事ができる。

そして、炎をイメージして唱えれば炎が出るし、水も作れる。魔素を体に溜めることもできて、溜めた力を[魔力]という。

他にも詳しい仕組みがあるらしいが・・まあ、俺はそこらへんを知りたいとは思わない。


それから、この魔法には属性がある。俗に言う五大属性。

この世界では炎、水、風、土、金のことを言う。その他に聖と闇、無の属性も存在する。

炎は火を、水は水を、風は風や雷を、土は土や木を、金は付与や錬成の魔法だ。

聖は救う力を、闇は倒す力を生み出す。無は身体強化系のモノだ。

人それぞれに得意分野が分かれる。ただし、魔法を使えない人も存在する。


ついでに剣術についても話そう。

俺が生きていた時代には流派が『源流』しか無く、俺は勇者時代にそれを極めた。しかし、今の時代にはその源流を元に、攻、守、多、水、無と五つの宗派がができた。源流よりよっぽど進化したのだ。


さあ、ある程度の説明は終わった。

え?俺が無双できたかって?

それは次のエピソードを見てもらってから話そう。




レイドが七歳の時。遂に魔法を打てる日が来た。


ククク。これで俺の力を見せつけてあっと驚かせてやる。意気込みながら家の庭へと向かう。

帝都内だが、さすが子爵家。家も庭もものすごく広く、魔法練習所やプール、家の中庭まである。

俺は庭に呼ばれ魔法の打ち方を教わる。話半分に聞いていたら、遂に打つよう言われた。

両親は心配そうな顔をして見守る。


父さん、母さん、心配ないよ!ここで全員の度肝を抜かしてやる!


十五メートル先に置かれた的に向かって狙いを絞る。


壊れても知りませんから!


家族全員に見守られながら魔法を詠唱した。


一大炎火メガ・フレア!」


直径五十センチの火の玉が、的めがけて飛んでいく。


 バッッーーーンンン!!!


大きな音を立てて当たる。

俺が持つ最大火力で打ったため煙が大量に起きる。


「よし!・・・・・・え?」


壊れたと思い喜んだが、煙が消えると少し焦げた的が露わになった。


そ、そんな馬鹿な。前世では的が毎回壊れていた。俺の魔力に勝てるものなどなかった・・はずなのに。


「良かったわ〜。に魔法が打てるわ」

「ああ、そうだな。に打ててたな!」

「ふん、あんなの七歳ではよ!」


両親と姉の言葉に驚く。


この威力が普通?しかもこの歳で?

いやいや、そんなはず無い。そんなはずは・・・


家族や周りの執事もそこまで驚いていなかった。


ど、どういうことだ!!!!!


その後俺は調べて分かった事がある。

この世界の魔法は進化していたということ。魔法の種類も増え、威力も格段に上がっていた。


俺の前世の時代では、威力の段階が三つ。

炎魔法で例えるなら、炎火フレア大炎火グランド・フレア一大炎火メガ・フレア、と強くなっていく。

しかし、この時代はさらに五段階威力の段階がある。

二大ギガ三大テラ四大ペタ五大エクサ六大ヨタ

魔法を使える人は大体三大テラから四大ペタまでが使える。俺は二段階下までしか使えない。


え?何で使えないかって?


それは、もう・・・思い出しただけで腹立たしい。

堕天使は俺を転生させた時、二つの条件を言った。

[未来]と[今のステータス]を強調していた。

未来(魔法が発達した)に今のステータス(メガまでしか使えない)で転生させたのだ。

そのせいで縛りを受け、俺は魔法の威力、剣術までも上げられないのだ。


ふ、ざ、け、る、な!!!!だ。


ただ、俺も確認しなかったのが悪い。確認していれば変えられたかもしれないが・・・後の祭りだ。


そんなこんなで俺は無双生活を諦めた。最強の力どころか最弱の力だ。


俺の人生がぁぁぁ!!!!!


と、絶望した時期もあったがすぐに立ち直った。

楽をしようとしたから行けなかったんだと気づいた。


これからは真っ当に生きて生活する!


そう決心した。


もう捻くれもやめだ!真面目な大人になる!



◇◇◇



四月。

俺は十二歳になり、中学に入ることになった


この国の貴族は小学校に入らない。なにせ家で家庭教師を雇えるのだから。

十二歳になると中学校に入ることになる。


入学するのは帝都の帝立学園。

国が運営する名門学校で中高一貫校。

厳しい入学試験を突破して入ることができる。


え?何で俺みたいな最弱が入学できるかって?


そこへは子爵以上の位の家の子は自動的に入ることができる。つまり入れたのは転生先が子爵家だったからだ。

初めて堕天使に感謝したが、そもそも力を与えなかったのでブラマイ、マイナスだ。

半分コネ入学だし・・・これからのことを考えると胃に穴が空きそうだ。


◇◇◇


今日は入学式。

制服は白いシャツに金色のボタンが付いている青いブレザー。ネクタイは赤く、ズボンは薄い黒。女子は赤いリボンに短めの青みがかったスカートとなっている。

おれは髪を整え、白い靴下に革製の靴を履いている。


姿は普通だが街を歩いていると、同じ新入生からの目線を感じる。

まあ、理由はわかっている。


「あれが、最弱の」

「ええ、そうみたいよ」


誰もが俺のことを指差しコソコソ話す。

俺は、すでに最弱として有名になっていた。あだ名が[最弱のレイド]。

不名誉すぎる。どこに行っても嘲笑され、俺のことはどんどん知られていく。

俺の学校ライフは入学前からすでに終わったも同然だ。


「レーくん〜!!」


俺がそそくさと歩いていると後ろから呼ぶ声がする。


「イーリスか」


俺を呼んだのは幼馴染の【イーリス・ルーラ・フラウド】

クリーム色のサラサラの髪でハーフアップにしている少女。きれいな金色の目に健康的な白い肌。男子が思わず目が行ってしまいそうな豊満な胸部で、俺と同じぐらいの背丈。

天然・・・というより純粋すぎる優しい心の持ち主だ。

俺の近所の男爵家の一人娘で、よく遊んでいたため仲がいい。


「先に行かないでよ!」

「いや、別に一緒に行く約束もしてないじゃん」

「っ!・・・意地悪!」


頬を膨らませてムッとする表情は可愛く、世の男子は惚れてしまいそうになるが俺は恋愛対象として見ていない。


なぜかって?


理由は簡単。前世では既婚者だったからだよ!しかも三児の父親。

新しい人生とはいえ他の女性に目移りするのは少し気が引ける。


「そんな顔したって何も出てこないぞ。ほら、行くぞ」

「レーくんはいつも素っ気ないね。だから嫌われているんだよ!」

「っな!そ、そんなことはな、ないぜ」

「目が泳いでるよ〜」


してやったりする顔をするイーリスを睨みつけ、俺は足早に学校へと向かうのだった。


「ま、待ってよ〜」


女性に優しく?知るか、そんなもん!



学校についた俺らは案内に従って必要な書類を渡して、代わりにパンフレットや書類などを貰う。

貰った名札を胸につけ、入学式に臨むのだった。


そう言えば、いじめを受けて引きこもっていた俺が何で学校に行けるのか、疑問に思ったでしょ?

確かに転移直後の俺は絶対行きたくないが、長く生きているうちに人付き合いを結構覚えた。

まず、いじめをするような奴はおつむの足りてない弱い奴らがやる行為だから、自分は強いって言い聞かせれば案外俺は克服できた。・・・実際は弱いけど。(テヘッ)



白い髭を蓄えたエナンを被った校長の話が終わり、新入生代表の挨拶となった。

挨拶をするのは【ルーレンス・バーロ・ティーグラ】、この国の第三皇子だ。

金髪の美しい髪を後ろで束ね、顔は目鼻立ちも輪郭もはっきりしている美形。女性的というか中性的な容貌をしている。背は高く、手足もスラリとしている。さらにその動きには優雅さが見られ・・・うーん、羨ましすぎるぐらい完璧だ。


「春の息吹を感じる季節に―」


どこでも聞きそうな挨拶なのに、あの皇子が言うと優美に聞こえるのが腹立たしい。

まあ、一生関わらないだろうし、せめて記念にその姿を目に焼き付けておこう。


それに、俺は俺で将来のためにやらなくちゃいけないことがある。


え、それは何かって?


そりゃ〜もちろん、幼馴染のイーリスを勇者にして、その師匠として国からお金をガッポガッポ貰う作戦のための準備だ!


第二の人生は貰ったお金で優雅に暮らしていきたいと思います!

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