第10話 魔法騎士団②
ソラに言われ、私は我に返り、思わずビクッとすくみあがった。
や、やっぱり言われていた通り魔力操作が全員うまい。洗練された魔力の流れをこの部屋からうっすら感じる。
やっぱり魔法騎士団と名乗っていただけあって、所有する魔力の量がけた違いだ。
でもしっかりと経験が積まれているような気がする。
多分、魔法騎士団は凄腕の人たちばかりが集まってるんだろうなぁ……。
ソラも、私を見て少しも驚かなかったし、冷静だった。
だから、この場にいる人たちと同等、いやそれ以上の実力を持ってそう。
「は、初めまして。ラン、です……」
緊張と、あと大人数の魔力の流れのせいで、声が少しだけ震えた。
私はここにいて大丈夫だろうか?
長くいれば、だんだん体も慣れてくるってことらしいけど。
私は魔力多い分、結構魔力に敏感だし。
「あ~! 指名手配って散々騒がれてた奴じゃん! そろそろこっちにも依頼来るんじゃねって話題になってた問題児!」
それを聞いて、よくわからないが先の白い黄色髪の男が手を口元にやってクスクス笑った。
私はイラっと来たが、息を吐いて落ち着く。
そしてしっかりと前を見ると、一番奥のイスに座っていた男が立ち上がった。
少し黒の混じった赤い髪に、高い身長、がっしりとした体格。
いかにもここで一番鋭いオーラを放っていて、私は目を細めて警戒した。
魔力の流れを……読み取る……。
「来た来た。ほんと、ソラに頼むとすぐに終わって助かるよなぁ。ども、俺は『天空の羽翼』団団長、ツバサだ」
にっこりと笑って上から私を見下ろした。
私はまだ十歳になったかなってないかの肉体に転生したようだから、結構上から見下ろされて、少し怖い。
けど、言葉に悪意や冷たさは感じないし、騙されたってわけでもなさそう。
本当に、私を探していた……?
「ソラとは俺、幼馴染でな。結構前から魔法の特訓をしてたもんだから、こうやって王都に出てきたら、一緒に団を作れたんだぜ」
にやっと笑ったところから白い歯が見えて、やっぱり怖い。
完全に信用はできないけど、外ほど危険な場所じゃ……ないよね?
「もう、その癖直しなさい。どんどんいろんな方向に脱線するんだから。さっさと本題に入って」
低い背丈のソラが、かなり身長のあるツバサをたしなめているのは、かなり笑える光景で、思わず口元が緩む。
ま、魔力探知は研ぎ澄ましたままだけど。
「すまんすまん。待たせても悪いしな」
頭をかいてから、ツバサは私の方に向き直った。
そして、向かいのイスに座るように指さす。
私が警戒しながら座ったのを確認すると、ツバサは話し出した。
「そもそも、魔法騎士団というのは、一般的には『
とりあえずここまでは分かるよね。
魔力情報だけで凄腕ってことは十分伝わってるし。
「魔力は大体生まれた時から持っていて、属性は固定。そして、鍛錬を積み重ねるごとに、魔力量は増えていく」
へえ……。
もともと増やさなくてもチート級だから、知ってもあんまり得なしだけど。
「しかし、やはり才能というのは存在する。魔力量が、生まれた時からものすごく多かったり、属性が強力だったり、な。そんな人物が、国の人助けのために入る、それが魔法騎士団」
真剣な表情から冗談抜き、ということが伝わる。
でも、国の助けってことは、結構危険なんじゃ?
それをツバサに伝えると、ツバサは「その通りだ」とうなずいた。
「騎士団に来る依頼の中には、危険な魔物の討伐だったり、危険視されている組織の殲滅だったりする。だからやっぱり、死傷者は毎年出るんだ」
だろうね。
命がけじゃなかったら、こんなふうにならなそうだし。
「それと、試験を突破するのがかなり難関なんだ。ペーパーテストとかじゃなく実践だからな。その2つの理由で、魔法騎士団への入団数は毎年減少傾向にある」
ツバサはソラの方を見た。
そしてフッと笑ってから続ける。
「ソラの魔法は正確だ。だから、君に、この一週間魔法騎士団で噂された、『国家転覆』や『大規模テロ』みたいな可能性はない」
嘘、まってそんなこと噂されてたんだ。
ショック、というか笑いの方が先に来る気がする。
「だからこそ、膨大な魔力を持つ君に、この魔法騎士団に入ってほしいんだ」
ツバサは空中でくるっと手を動かす。
そこから一枚の紙がひらりと落ちてくる。
テーブルの上に落ちてきたそれを、手に取って見てみる。
題名は……「『
長い題名……。
一番下にサインするところがある。
「こっちの都合だ……断られても引き止めない。だがどうか、魔法騎士団に入ってほしい……手筈はこちらでやる……!」
ツバサが頭を下げた。
ここまで言われたら、断るなんて、私にできない。
いやでも、後々面倒なことになるんじゃ……でも、国から追われるのも嫌だしなぁ。
ここは、引き受けた方が得策……かも?
もうわからないけど、ノリと勘で行けば何とかなる!
「……分かりました。入団します」
「本当か⁉」
ツバサが頭を上げた。
ちょっと安心しながらもうなずいて、用紙にサインをする。
するとシュゥッと溶けてなくなった。
「あ、あれ……?」
「ああ、それはサインされると、自動的に試験官の元へ送り届けられるんだ。あとは、試験をクリアしてうちの団を選択するだけだ」
勢いごんでツバサが言った。
「試験は三週間後。それまで、ばれないようにやらなきゃいけないことがある」
え、と顔を上げると、立ち上がったツバサがまた元通りに笑みを浮かべていた。
魔導書を棚からとって私に見せる。
「
――そして、当日。
私は入団試験を受けることになった。
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