第8話 俺のパートナーは意外と脳筋らしい

 「相変わらず早いわね」


 コービスが振るった刃は火花を散らして空中で停止する。

 ガンと鳴り響いた音や左手をこっちに向けているミミルの体勢……間違いない、こっちの攻撃をバリアで防いでる。


 「結構本気で切りかかったんだけどなぁ。ミミルのバリアはやっぱ硬いね」

 「アンタなんかの貧弱なバリアと一緒にしないでもらえるかしら?」


 オレンジ色の炎を纏ったミミルの右手が動く。

 恐らく炎の攻撃が来る。


 この至近距離だ、いくらコービスでも躱すのは難しいだろう。

 だったら俺が壁を作って守るまでだ。


 コービスの両手の至る場所からとにかく沢山の刃を生やす。

 錆びた刃達は人間ぐらいのサイズなら覆える大きさの球体になって、コービスを迫りくる炎から守るバリケードの役割を果たした。


 「助かったよセンロク。良く反応出来たね」

 「何、ビビッてとっさに動いちまっただけだ」

 「それで良いよ。実を言うと私結界魔法はちょっと苦手でね、ミミルみたいに頻繁にバリアを使うのは避けたいんだ」


 コービスはそう言うと体をぐっとひねり、さっき俺が作った馬鹿でかい球状の刃の塊をグルンと持ち上げた。

 

 「その代わり、君が作った武器なら何でも使いこなして見せるよ。センロクは僕に構わず好きに能力を開放して!」


 刃の塊がミミルのバリアと激突する。

 衝突音は今までに聞いた事が無いほど豪快で、ミミルの体をバリアごと地面へめり込ませている。


 コービスの奴、意外と脳筋だったのな。

 まぁでも悪く無い。


 ネチネチ絡めてで攻めるよりも、こういう戦い方の方が俺は性に合ってる。

 コービスと戦ってる今を楽しいと思ってるのが何よりの証拠だろう。


 「ッ……フレイムカウンター!!」


 ミミルは右の手で指パッチンしながら技名の様な物を叫ぶ。

 すると彼女を守っていたバリアがオレンジ色の光を帯び、数秒後には熱風をあたりにまき散らす大爆発を起こした。


 その爆発により、さっきまでコービスが振るっていたどデカい刃の塊は全壊。

 けど、そんなの関係ねぇ。


 「コービス、突っ込め!!」

 「あいよ」


 あのカウンター、結構な威力が出るみたいだがバリアそのものを破壊する必要が有るみたいだな。

 こっちにとっちゃ厄介なバリアが消えてくれて好都合。


 何度でも生成できる俺の錆びた刃をいくら破壊されても怖くねぇ。

 攻撃あるのみだ。


 「セイヤッと!!」

 「来るわね、頼んだわよライル」

 「ああ、ここは僕に任せてくれ」


 コービスが右手で殴りに行った動きに合わせて彼女の右袖にそこそこの長さの刃を生成する。

 剣術的な動きで言えば突きの動きだ。

 

 そんな俺達の攻撃に対抗するのはミミルの繰り出した炎。

 だけど今回の炎はさっきまでの攻撃とは一味違う。


 空中の一点に集まって、炎の剣とでも呼べる物を形作っている。


 「ミミルは肉弾戦が苦手でね。ここは僕が相手をしよう」


 ライルさんの言葉が聞えた次の瞬間、その炎の剣はひとりでに動き始めてコービスが放った突きの軌道をずらす。

 漫画とかでよく見る剣の遠隔操作か?

 とことん妖精っぽい能力使うなこの人。


 「守る為の剣術は得意分野なんですよ」

 「だったら崩して見せようか?」


 俊敏に動くコービスと炎の剣が激しい打ち合いを始める。

 正直目で追えるのがやっとの攻防だ。

 

 俺がこの攻防を通して感じているのは二つだけ。


 二人の動きが互角だと言う事。

 そして、コービスはこの打ち合いで一本の刃しか使っていないという事だ。


 「もう一本刃増やした方が戦いやすいか?」

 「そうだね。私は基本二刀流の方が趣味に合ってるみたい」


 カン!!と甲高い音がなって二人の刃がはじけ飛ぶ。

 その一瞬の隙の間、俺はコービスの要求通りにもう一つの刃を左手の裾から生やした。


 「そうそう、これだよコレ!!」


 コービスは興奮した声を上げながら刃を振るって舞う。

 その舞はライルさんが遠隔操作で動かしているであろう炎の剣を圧倒的に凌駕し、しまいには待機していたミミルの方へ剣を吹き飛ばした。


 「やるじゃない。ライルの剣劇を退けるなんて」

 「センロクさんも、ちゃんとコービスさんの動きに合わせて能力を使っています。中々動きとしては良いでしょう」


 「やったねセンロク。褒めてくれたよ」

 「ありがたい限りだが、ライルさんの能力は中々に多彩だな。あれで半分も力使って無いんだろ?」


 バリアを触媒にしたカウンター。

 火炎放射の様な攻撃に、自動操縦で空中を舞う炎の刃。


 色々盛りすぎだろうよ。

 俺なんてさっきから錆びた刃を生成してるだけだぞ。

 

 「センロクさん、そう驚く必要はありませんよ。さっきから戦って感じていますが、貴方のポテンシャルは僕以上です」

 「それ本気で言ってるんですか?」

 「本気も本気ですよ。センロクさんはまだ、自分の力を上手に活用出来ていないだけなんですから」

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