第5話 異世界グルメ食べたいじゃん?
「ここでは
「いや、食べたいものって言われても……この状態でどうしろって言うんだ?」
ディスホールと呼ばれる建物へ入って早数分。
コービスは食堂の様な所から一食分の料理を手に取ろうとしている。
「ドレスの状態なら味覚と食感を私と共有できるから心配ないよ」
「便利なもんだなぁ」
「今日はセンロクが私のパートナーになった記念すべき日だ。君の食べたいものを食べよう」
ふむ。
ざっと食堂を眺めただけでも様々な種類の料理があるな。
俺にとって馴染みがある料理をちらほら見つかる。
さすがは頻繁に異世界の住人が流れ着いて来る世界だけはあるな。
にしても、これだけレパートリーがあると悩むな。
選択肢が多すぎると人間は逆に選べなくなるって書いてあったビジネス本の事ちらっと思い出すぜ。
「……よし、決めた」
「お、どれにするの?」
「せっかく異世界に来たんだ。ここはドドンと知らない料理を食うべきだろ」
俺が選んだのは得体のしれない具材を挟んだサンドイッチの様な料理だ。
黒、紫、青が混ざったソースが垣間見え、パンの外側がバグが掛かったゲームみたいなえげつない見た目になっている。
「良い選択だね。ここでセンロクが故郷の料理を頼んでたらどうしようかと思ったよ」
「え、何?俺の事試す試験かなんかだったの」
「いやいや。私と君の価値観が似ていて良かったと思っただけだよ」
コービスはサラリとそんな言葉を口にして、例のゲテモノサンドイッチを手に取った。
コービスは他の
何か妙な視線向けられてる様な気がする。
ただの気のせいだと良いけど。
「センロク、君の世界で食事の所作があるなら教えて欲しい」
コービスは席に座ってサンドイッチを机の上に置くなりそんなことを言いだした。
「
「それなら一つだけ。飯食う前に『いただきます』って言ってくれ」
「それだけで良いの?」
「俺は元々マナーとか厳しい方じゃないからな。でも『いただきます』って言わないと飯食った気がしねぇんだよな」
「君がそう言うなら私はそれに従おう。それでは、いただきます」
そう言ってコービスは例のサンドイッチを口にした。
味は……正直言って微妙。
味の濃い調味料で素材の味を全部消した感じ。
あと若干くどい。
でもまぁ、食べられないって程じゃないな。
それよりも特筆すべきなのは何と言ってもその食感だ。
パンがフワフワしていると思ったら次の瞬間には固くなって、また次の瞬間にはフワフワになる。
中に挟まっている具材は口の中でパチパチと弾けている。
子供の頃好きだった知育菓子みたいな感じで面白い。
「こ、コレ面白い料理だな」
「実はこれは元々もっと刺激的な料理だったんだよ。これはその料理を一般向けにするために味とパチパチとした触感をマイルドにしてある物なんだ」
「あ、そうなの。オリジナルはこれに比べてどんな料理なんだ?」
「味はとにかく激辛、口中にパチパチと何かが跳ねまくるとんでも料理さ。あまりにも刺激が強すぎて特別な合言葉を伝えないと食堂で出してくれない」
「もしかして……お前その合言葉知ってる?」
「ほほ~う、よく分かったねセンロク。なんなら今夜試してみるかい、最高の刺激を」
「やってやろうじゃねーか。日本で虫料理100種バイキングを成し遂げた俺の実力見せてやるぜ」
やべぇ。
美味しい料理を食べたい欲求よりも好奇心を見たい欲求の方が強く出ちまう。
コービスは面白い異世界料理沢山知ってそうだし、これから毎日それらに挑戦するって言うのもありだな。
「やめときなさいよ。あんなゲテモノ」
「ん?」
最高の刺激への期待が爆発していた俺達に向かって不意にそんな声が欠けられる。
声がした方向に視線を向けると、そこにはコービスと同じ目をした白髪ツインテールの知らない女の子が立っていた。
「まったく、コービスのアホは何年経っても変わらないわね」
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