第4話 たどり着いた異世界は癖が強いらしい
例の戦闘が終わった後、コービスは「ボチボチ行くとしよう」と口にして歩きだす。
俺はとりあえずコービスに着いていくことを決めた。
コービスと契約をした以上は彼女に協力するべきだし……それ以上にさっきの戦闘経験をもう一度味わいたい。
モンスター達を切る時の爽快感、自分の思考とコービスの動きがピタリと一致した時に味わった達成感。
日本でずっと欲しいと思っていた『圧倒的な勝利』という物の片鱗をあの戦闘で味わった様な気がしたんだ。
「この道はモンスターに襲われない結界が張られてあるから安心して欲しい」
「そうなのか?それならお言葉に甘えさせて貰おうかな」
本心ではモンスターどもをバッタバッタとなぎ倒したい所ではあるんだが、こういう所で調子に乗るといつも碌な目に合わないからなぁ。
Youtubeでバズッた動画を擦り続けた結果アンチが増えたり、シュミュレーションで上手く行ったからって手を出したFXでは危うく全財産溶かしそうになったし、FPS系のゲームの戦績が良くて『プロゲーマに成れるわ』とか言ったら上級プレイヤーにボコボコにされた事もあったなぁ。
コービスが疲れてるって可能性もある。
ここは一旦滾る気持ちをセーブするべきだ。
それはそうと、ざっと周囲を見渡しただけでもここが異世界だって思い知らされる様な光景ばかりだな。
想像通りの剣と魔法のファンタジー世界に居そうなモンスターも居れば、個人製作のホラーゲームに出てきそうな独特な形をしたモンスターとか宇宙人みたいな見た目の奴もいる。
思い描いていた異世界に来たというよりは‥‥‥空想上の生物なんでもありの闇鍋世界だなこりゃ。
「そういえば、センロクにはこの世界について説明してなかったね。私としたことがうっかりしていたよ」
「俺もだいぶ気になってた所だ。俺のふるさとにも異世界って概念自体はあるんだが‥‥‥なんかこの世界はそのイメージとだいぶかけ離れてるんだよなぁ」
「それなら猶更私の説明が必要だね。そうだなぁ、最初にあれを見てもらおうか」
コービスはそう言いながら視線を空に向ける。
それに続いて俺も視界を上空に向けると、そこには小さくだが真っ黒な穴が空いてあった。
「あの穴は私達の暮らす世界、『ケィオスリンカネーション』を語る上で欠かせない物なの」
コービスは空を見上げたまま、この世界の歴史について語り始めた。
「元々魔物と家畜と小さな動物達が暮らすのどかで平和な世界だったらしいんだけど、ある時空にあの穴が開いてからその常識は大きく変わってしまったんだよ」
「何があったんだ?」
「異世界から来た未知の生命体達が頻繁に訪れる様になったの」
なるほどなぁ。
儀式とかで呼び出すタイプじゃなくて、元々そう言う特性を持った異世界なわけだ。
俺がこの異世界に来たのは単純に異世界の住人を呼び寄せるこの世界の得意な性質に引き寄せられただけ。
だから何の素質があって選ばれた訳じゃないし、強力な特殊能力をくれる女神様なんて存在も居ない。
まぁ酷い言い方をしてしまえば俺はただの不運でこの異世界に来てしまっただけと言う事だ。
そこに魔王を倒すだとかこの世界を救うなんて大層な意味はない。
まぁ、日本で恋人とか居なかった俺にとってはそこまでダメージは無くて、異世界という物に少なからず興味もあった事もあってむしろ嬉しいぐらい。
でも、この世界に誘われるのが子持ちの親だったり人生を掛けてきたイベントを控えた若者とかだったら今の俺みたいに呑気な事は言えないだろうな。
「今の話を聞く限りだとトラブルも多かったんじゃ無いのか?『元の世界に返してくれ~!!』とか『この世界を侵略してやる!!』みたいな事言い出す異世界人結構居そうなもんだけど」
「実際すごく大変だったらしくてね。事態を重く見た当時の実力者は混乱を抑えるために6つの大きな町を作ってこの世界を分断したの」
「そりゃぁ、またスケールのデカい話だな」
「町にはそれぞれ役目があるんだよ。さっきも話したけど、ここ
2番目に安全って、俺はあの時コービスと出会わなきゃ危うく死ぬところだったぞ。
これより危険な世界とかあんまり想像したくねぇな。
「そんな世界の変化に合わせて私達の祖先である魔族も異世界の住人と手を取り合えるような進化を遂げたの。そして誕生したのが私達
気が付けば視界の先に多くの建物が見えてきた。
木製で作られた沢山の建物の中心には、ひときわ目立つ大きな3階建ての建物があった。
いわゆる冒険者ギルド的な感じの活動拠点なんだろうな。
コービスの足取りもその大きな建物に向かっている。
「色んな異世界から色んな生命体が来訪する以上、この世界はいつどんな災いが訪れてもおかしくない。だから私達
「もしかしてそれが【花嫁修業】??」
「お、よく分かったね。勘が良いのは好印象だよ」
物騒な花嫁修業だなおい。
お茶とか料理とかイメージしてたからビックリしたよ。
そんな俺の困惑具合などいざ知らず、コービスは堂々とした立ち振る舞いで3階建ての建物の扉を開く。
そこには様々な意匠を凝らしたドレスと、それを着こなす白髪の
「ここが私達見習い
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