第56話 下町広場の屋台で朝食
やって来たのはもうお馴染みの下町広場である。
そこでは、冒険者たちをターゲットにした屋台や新鮮な野菜や果物などが売っている露店も多くある。
ティティが最初に目指すのは屋台だ。
「どうするか。腹に溜まるものと、肉は必須だ、それとスープは絶対買ってくぞ!」
湖から上がった後の、スープ、きっと涙がでるほどうまいに違いない。
<容器はあるのか?>
くっ。心話で鋭い突っ込みが来た。腹が空きすぎて、ドリムル武器屋よりも先に屋台に来たから、容器はない。
<今日はお椀に入れてもらう! すぐに亜空間にいれれば大丈夫だ、きっと>
零れる事はない筈。だよな?
<何でもいいが、買うものを早く決めろ。時間が押してるぞ>
<せかすなよ!>
これはスヴァもお腹ぺりぺりだから、せっついているな。最もな理由を付けても、ティティ様にはお見通しだ。けど、優しいティティ様はそれを指摘はしないであげるぞ。しかし言っておかねばならないことは言っておく。
<朝食は大事なんだぞ! 一日の活力は朝食で決まると言ってもいいくらいなんだぞ!>
<お主はすべての食事が大事だろう。すぐに活力がなくなるではないか。味も大事だが、量を確保せよ>
<うっ!>
ぐうの音も出ない。
<お前だって、食べるなら、美味しいものを食べたいって思うだろうよ!>」
<それは否定しないが、今日は遠くまで足を伸ばさなくてはならないんだ。目的をはっきり決めて買え。腹に溜まり、かつ歩きながらでも食べられるものがいいのではないか?>
<私は食べながら歩けるけど、お前は無理だろうよ>
<我よりもお主のほうが、燃費が悪い。気軽に食べられるものも買っておくのがよかろうよ>
ぐぐ。言葉ではかなわない。頭のできの差か。
悔しくなんてないっ。
<こうやって言い合いしているよりも、まずは串焼きを買って食べようぜ。お互い腹が減りすぎて怒りっぽくなってんだよ>
<うむ>
スヴァはティティの方がより腹が減ると言っているが、スヴァも同じようなものなのだとティティは知っている。ただ、スヴァの方が我慢強いだけだ。
2人とも、栄養不足なのか、とにかく腹がすくのだ。
食費で金欠になりそうだ。
今日の湖の検証がすんで、情報が確実であれば、さっさと冒険者ギルドに報告して、がっつり褒賞金を貰いたい。
<どうせ立ち食いだし、しっかり食べてこうぜ。大した時間もかからんだろ。私たち早食いだしな>
孤児院ではのんびり食べていると脇から取られたりするのだ。
<泳ぐし、スヴァの言う通り沢山買ってこう! おむすびと、串焼き、具沢山スープ! 後、あったかいお茶も欲しい」
そこで、ティティはふと思いついた。
<なあ、スヴァ、コップに蓋があったら、零れないよな。便利じゃね?>
<そうか?>
<そうだよ、うん。ちょっとあったかい飲み物が欲しくて、部屋で飲みたいときとか、カップに蓋して持ち帰りって、いいんじゃね?>
<ああ、なるほどな>
折角あったかいお茶を買って飲む時、立ち飲みもいいが、ゆっくりとくつろいで飲みたい時もある。
うん。蓋作ってもらおうかな。これもデルおじに相談だ!
<おい。考え込むのは後にしろ>
「いけね! さっさと買って、食って出発しよう」
<やれやれ、お主は本当に、横道にそれやすいな>
「なんだよ! ふいに思いついたんだから、しょうがないだろ」
<わかったわかった。早く食べ物を買え>
「ぶう! わかったよ!」
ティティは近くにあったおむすびを売る屋台に頼んだ。
「お姉さん! お姉さんがおすすめの具が入ったのを合わせて10個ください!」
「おねえさんなんて、まいったねこりゃ。そう言われたら、おばちゃんおまけしちゃうよ!」
女性はいつまでもお姉さんなのだという孤児院での教えを実行する、ティティである。
結果、おむすびを1つおまけしてもらえた。
やったね。
さて、どんどん買い込むぞ。
それにしても、スヴァとの心話スムーズに話せるようになったなあ。
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