第55話 ランクアップはこつこつと
宿のカウンターの前を通りかかったところに丁度良く支配人が居たので、延長をお願いした。
ラッキーな事に、スヴァの分値引きをしてくれた。ありがたや。
それでも、もうお金が大分だいーぶ減ってしまった。
これは稼がねばならんとの思いを深めつつ、ティティとスヴァは冒険者ギルドに向かった。
「今日も混んでるなあ」
当たり前か。朝は新たな依頼が出やすい時間帯だ。人が集中するのは自然の流れだ。
ティティは依頼ボードに群れる人だかりに見切りをつけると、買取兼依頼完了受付カウンターへと向かった。昼間はそうでもないが、朝は依頼受付とその他の受付と別れている事が多い。
ギルド職員も限られている。効率重視なのだろう。良きことである。
「おはようございます。カミオさん」
「いらっしゃい、ティティちゃん」
「先日お受けした依頼4つ、終わりましたので、確認お願いします」
「かしこまりました。では、ここに出してもらえる?」
「はい!」
ティティは元気に返事をすると、リュックを肩からおろして、そこから薬草を次々と取り出した。
「ミツルギ草、ペンリの花、タルマランの花、それぞれ10本ずつと、タンキッドの球根を10個。はい、確かに」
カミオは手早く、薬草の状態を確認すると、にっこりと笑った。
「はい、報酬です」
カミラはトレーにお金を置く。
「それにしても、ティティちゃん、まだ初心者なのに、薬草の採取方法が完璧ね。普通は違うものを持ってきたりするのに」
ティティはぎくりと身をすくませる。
「はは、そうですか?」
間違いなんてある筈がない。ジオル時代、薬草採取はかなりやったからである。しかしこれはこれで不審がられたか。少しは間違ったふりをした方がよかったか?
「とっても助かるわ~。これからもよろしくね!」
どうやら、カミオの言葉に裏はないらしい。
ほっとして元気よく返事をする。
「はい! がんばります! 早くランクアップして、お金が欲しいですから!」
そうなのだ。今もらったお金も、少し買い物すれば、アッと言うまに消えてしまう。
欲しいものは沢山、お金は少し。
切ない。
でも、今日湖の状態を確認すれば、たんまりお金が入る筈だ!
おもわず、にんまりとしてしまう。
「ティティちゃん?」
いきなり笑みを浮かべたティティをカミオが不思議そうな顔をする。
「はは、なんでもありません。ちょっとランクが上がった時のことを考えてしまって」
いかんいかん。植物スライムの事はまだ内緒なんだから。
「ふふ。ランクアップするには、まだ依頼数が足りないわ。でも、向上心は大切よ! がんばってね」
「はい! じゃあ、私、ボードを見てきます! いこ! スヴァ!」
ティティはぺこりと頭を下げると、依頼ボードに歩いて行った。
幸い、人が少なくなったので、小さい身体を生かして、前へと行く。
<依頼を探すより、早く湖に行った方がよくないか?>
スヴァが心話で語り掛けて来る。
<褒賞金も大事だけど、先々の事を考えれば、ランクアップの為に、依頼をこなすのも重要だ>
<そうかわかった>
早く自分の疑問を解消したかったのであろうが、ティティの答えに納得がいったらしく、素直に引き下がってくれる。うちの元魔王様は素直でよい。
「さて、今日はどんなのがあるかな?」
ざっとみたところ、今日はめぼしいものはない。
「常時依頼はあるけど、少し安いんだよな」
できれば、同じものなら少しでも高く買い取って欲しい。
「仕方ない。今日は諦めて、明日また見にこようか。常時依頼の品も一応チェックしとこう」
ティティは鞄から、メモ帳を取り出し、常時依頼品を書き留める。
多少安くとも、ランクアップとお金の為に努力は必要である。
やはり、手元の金が寂しくなってくると、心もとない。褒賞金もすぐにもらえるとは限らない。
小銭を稼ぐしかない。
そこで、くーるるるという音がティティとスヴァの腹から2つ。
ティティはスヴァの目を見下ろして、言った。
「腹が限界、朝ごはん食べに行くぞ!」
スヴァはしっかりと頷いた。
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