第25話 お裁縫は得意です

「ふう。これで今日の買い物は大体終わったな。後は、下町の中央広場に戻って、夕飯買って、宿に帰ろうぜ」

<宿に帰るにはまだ早いのではないか?>

「明日に備えて、作りたいもんがあるから、今日は少し早めに宿に帰ろうと思ってな」

<そうか>

「そ。だから、お前は部屋でのんびりするといいよ」

<うむ>

「さ、そうと決まったら、屋台へGOだ!」

 ティティは下町の中央広場に向かって駆け出した。


「ふんふんふん♪」

 下町の中央広場で夕飯や串焼きのストックを買った後、ティティは宿へと帰って来た。

 そして、風呂に入って身体を清めた後、ベッドの上に座り込んで、ちくちくと縫物をしていた。

「お主のやりたかったこととは、裁縫か」

「そうだよ。亜空間に採集したものや、これから買おうと思ってる、野菜や果物を入れる袋が欲しいなって思ってよ」

「なるほどな」

 ベッドの上で身体を伏せながら、スヴァが呟く。

「それにしても、手慣れているな」

「はは。そうだろ! 孤児院では繕い物は男でも当たり前にしてたかんな。なんだったら、刺繍もできるぞ。俺超うまいんだから」

 そう話をしながらも、ティティは大中小様々な大きさの袋を次々と作っていく。

 リッシュの古着屋で買った布。大活躍である。多少黄ばんでむらがあっても、支障はまったくない。

「そうだ。怪我した時のために、包帯も作っとかないとな」

 ティティは器用にナイフで布を細く切っていく。

 そしてほつれないように周りを縫っていく。

「子供の肌は柔いからなあ。ちょっとしたことでもすぐに血がでちまう」

 ジオルが孤児院にいた時、よくチビたちが怪我をしたものである。

「あいつら、どうしたかなあ。7年も経ってりゃ、もうみんな成人しちまってる奴が多いだろうなあ」

 暮らしが落ち着いたら、ジオルがいた孤児院も覗いてみたい。

「それにはまず金を稼がないとな。今日大分使っちまったからな。心もとなくなっちまったぜ」

 そこで、ふと思いついた。

「そうだ! 孤児院でも作ってた刺繍入りのハンカチ作ってみるか!」

 雨の日なんかで、採集に行けない時のいい内職になるかもしれない。

「そうと決まれば、リッシュの店に行くか! 古着屋だけど、半端で流れてきた新品の刺繍糸やハンカチにできる布があるかもしれない。もしあれば、安くあがるぞ!」

<お主、色々できるのだな>

「おうよ! でもな、俺には仲間がいたからな! 楽しくやってたよ!」

 孤児院の仲間、冒険者の知り合い、そして従魔ー。

 ティティの手が止まった。

「あいつら、どうしたかなあ」

 ジオルには2匹の従魔がいた。

 魔王城に入る時に、もしかしたら生きて帰れないと思い、契約を解除したのだ。

 せめて、あいつらだけでも生き残って欲しかったからー。

「生きていてくれるといいな」

 探しに行ってみるか?

 魔王領に?

 ティティは首を振った。

 今行ったら、死にに行くようなものである。

 行くにしても、もう少し強くなってからだ。

「それにしても、気になる事が多いなあ」

 公爵家の少年、孤児院、従魔たちの行方。

「せっかく戻って来たんだ。気になることはちゃんと解決しないとな」

 その為には、今やれることをやる。

 ティティは裁縫を再開した。


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