第23話 雑貨店は宝の宝庫
「ここだな」
見上げた先にあるのは、白地にピンク色の文字が踊る看板。
ステラ雑貨店である。
「さて、イリオーネさんの連勝記録は続くのか?」
宿については少し悶着があったものの、お風呂もお部屋もお値段も快適なので、文句なしである。なので、連勝は続いているのだ。
「こんにちは~!」
刹那カランコロンと来客を告げるベルが鳴る。
それに合わせて、1人の女性がティティの前にやって来た。
「はい。いらっしゃい」
ふっくらした優しそうなおばさん、いやお姉さんである。
「今日は、この子と私の食器が欲しくて買いに来ました。あまりお金がないので、安いので、できれば、可愛いのと凛々しいのと欲しいんです」
「可愛いはわかるけど、凛々しいって?」
「はい。可愛いは、私ので、凛々しいはこの子のです」
そういって、足元にいるスヴァを示す。
「まあ、可愛らしい」
「はい。でも、可愛いは禁句です! この子は男の子なので!」
「まあ」
そう、男に可愛いは禁句だ。言われると地味にへこむ。
けど、自分(ジオル)は結構言っちゃうから、変に敵を作ってたなあ。
「うふふ。わかりました! もう言わないわ。では、食器ね、こちらにいらっしゃい」
「はい!」
ティティは誘導された方向に進む。
すると、ワゴンの中に、色々な食器が無造作にある。
「この中のものはどれでも3つで銀貨1枚よ。どうかしら?」
「はい、見てみます!」
うん値段も手ごろだ。この街は酒造りが盛んで、酒を入れる陶器を作る職人も多い。
その為、庶民が使う皿などが、他の街より遥かに安い。見習いが練習で作るからだ。
この街でなければ、木の皿やコップを買うところだ。
さて、じゃあ、まずはスヴァに選んでもらうか。
よっと掛け声をかけて、ワゴンの中が見えるように、スヴァを抱き上げた。
<よし! スヴァ! この中から、好きな皿を選べ! 水飲み用深めの皿とちょっとした時用の小皿、それとメインで使う中くらいの皿を3つ選べ!>
<我は、なんでも構わぬ>
<ばっか! お前! 毎日使うものだぞ! こだわりを持て! そういった小さいところから楽しんだ方がおもしろいだろうが!>
<人生を楽しむか>
<そんな大げさな事言ってねえって! ただ何事も楽しんだほうが勝ちだって話だ!>
<うむ>
スヴァは納得したのか、ワゴンの中を見て、悩んでいる。
<水を飲む深皿は、底に緑の葉の模様があるのがよい。小皿、中皿は、端にある同じデザインで紺のラインが入ったものでよい>
「これと、これと、これだな?」
<うむ>
「よし! 予備を考えて2つづつだ! 次は私だね!」
スヴァを下ろして、じっくりとワゴンを見る。
本当に練習用のものなのだろう、変に傾いたりはしてないが、いいものだね!って感じはしない。それでも予算の範囲内で、気に入ったものを選ぶ。
「うーん。私は、お皿は緑のラインが入ったのと、赤いワンポイントが入ったものを2皿づつだな。お椀は底にオレンジの実の模様がついたのにしようかな。よし、これも2つ。コップはどうするかな。うーむ。縁にラインが入った奴にするか。これは色違いで3つ買おう。あ、そうだよ。カトラリーも買わないと。それと食料を入れておく容器! ああ、後水筒! 水筒も買わないと! 忘れるところだった! すいませーん!」
「はい、決まりましたか?」
「はい! ばっちりです!」
「うふふ。そう」
「あ、後、フォークとスプーンを2つづつください。木のものでいいです。それとおかずがたくさん入る容器とかありますか? あ、後皮の水筒が欲しいです」
「フォークとスプーンはこっち。容器はあちら。色々大きさがあるわ。水筒は一種類しかないからこちらで用意しておくわね」
「お願いします。じゃ、入れ物とか見てきます」
「はい。また何かあったら、呼んでちょうだい」
「わかりました!」
ティティは元気に返事を返した。
スプーンやホークはすぐに決まった。
さて、容器は。
あまり大きいと使い勝手がよくなさそうだ。それとこのリュックに入るくらいの大きさじゃないと、怪しまれるよな。となると、このくらいの大きさか。串肉が10本入るくらいの大きさの木の箱を選んだ。本当はもっと可愛い絵柄があるものが欲しいが、きっと高い。節約して、木目を生かした素朴な箱にした。
値段を聞いて、何個買うか決めよう。
「すいません! この箱はいくらですか?」
「はいはい。そうね、この箱なら、銀貨1枚ね」
うーむ。思ったより高い。けど、蓋もぴっちりでずれもなく、仕上がりもよい。妥当な値段か。
「では、この箱を3つください」
「まあ、沢山買ってくれるのね。うふふ。それじゃおまけしちゃおうかしら?」
「本当ですか! ありがとうございます!」
「カトラリーはおまけしてあげる。全部で銀貨8枚でいいわ」
「助かります!」
ティティはお金を手渡した。
品物を受け取り、背負い鞄に入れて行く。
木の容器2つは手で持つ。店を出た後に亜空間へ入れよう。
「いい買い物できました。ありがとう! おねえさん!」
「ふふ。お姉さんって、お世辞でも嬉しいわ。こんなおばあちゃんにありがとうね。でも、これからはステラと呼んで」
「わかりました、ステラさん! 私はティティルナ! ティティって呼んでください!」
「ティティ、可愛らしい名前ね」
「ありがとうございます! 今日は時間がないのでゆっくり見れなくて残念です。また見に来ていいですか?食器の他にも色々な雑貨があってもっとみたいです。ここは宝物が発掘できそうだから! あ、買いに来るって言わなきゃダメだったですか?」
「うふふ。大丈夫よ。次はゆっくり見に来てね」
「はい!」
ティティはそれにブンと頷くと、お店を出た。
いやあ、小物が沢山あって楽しい店だ。本当に今度ゆっくり見に来よう。可愛い小物大好きだ。
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