第22話 屋台で食べ歩き
「おお~! 屋台がいっぱいだなあ」
昼間にひと風呂浴びるという贅沢を堪能した後、ティティとスヴァは下町のほぼ中央にある広場に来ていた。
そのティティの格好はぴらぴらな服ではなく、リッシュの店で購入したしっかりした厚手の服に、クレじいのとこで買った靴を身に着けていた。隣を歩くスヴァの首元にも白に碧い花の刺繍がついたリボンが巻かれている。
これで見てくれは立派なちびっこ冒険者である。
さて、広場だが、真ん中に建国の父である初代グロシルバ国王の彫像が立っている。その彫像は右手は水平に左手はわずかに下を指さしている。それは右手は恒久なる平和を祈り、左手は民の安寧を願うとされている。お顔も大変凛々しく、立派な考えを持った国王様であったらしい。
それを見上げつつ、ティティは呟く。
「あいつと少し似てるかな」
それはジオルが死ぬ前に気にかけていた少年。この初代国王の血を引く少年である。
金がたまったら、ぜひとも少年の安否を調べてみたい。
そうシリアスに考えたところで、ティティの腹がきゅうっと抗議の声を上げた。
「まずは飯だな!」
ティティはずらりと並んだ屋台を、見て行く。
「スヴァ? 何が食べたい?」
<肉>
まあ、そうだな。獣だものな。
頭に響く説得力のある一言だ。
「了解!」
ティティは手近な屋台へと足を向けた。
「おっちゃん、すげえいい匂いさせてんな! この串の肉はなんの肉だ?」
「羊の肉だよ」
あやあ。つい先日ゴールデンシープに助けれらたばかりで、複雑だが、空腹には代えられない。
「おっちゃん、2本くれ!」
「あいよ! 毎度あり! 大銅貨6枚な」
おお、思ったよりもリーズナブルである。
お金を渡して、2本受け取る。
そのうちの1つに、ティティはがぶりとかじりついた。
「うめえ!」
少しくせがあるが、焼き立て最高である。
少し屈んで、スヴァにもう一本の串を差し出す。
すると、スヴァが器用に肉を抜き取ってもぐもぐと食べる。
<うむ!>
どうやらスヴァも気に入ったらしい。
再度自分もがぶりと食べる。
見る間に、二本の串は一人と一匹の腹に収まった。
備え付けのごみ箱に串を捨てる。
「おっちゃん、旨かった! また来るな!」
「おお! 坊主! 待ってるぜ!」
おっちゃんが、いい笑顔で答えてくれた。
うん。ちゃんと男の子に見えるらしい。
よかった。
「さて、次は何を食べるかなあ」
きょろりと周りを見ながら歩く。
「お! あれは腹に溜まりそうじゃねえ?」
そうして近づいた屋台に売っていたのは、肉巻きにぎり棒なるものだ。
みため肉が棒に巻いてあるようにしか見えないが、かなり厚みがあるので、肉の中にご飯があるのだろう。
うん。旨そうだ。
売っているのは、さっきよりも少し若そうなおっさんである。
これは少しおまけして声をかける。
「お兄さん、この肉巻きの棒2本!」
「おう! 1本4大銅貨で合わせて8大銅貨な!」
おっさん少し嬉しそうだ。
うむ。いい事をした。
「はい! 大銅貨8枚!」
ティティはおっさんにお金を渡すと熱々の肉巻きおにぎり棒を受け取った。
さっきに引き続き、はむりと食べる。
「んん~!」
肉の油とたれがご飯に染みこんで絶妙にうまい。
「ほら、スヴァも食べてみろよ!」
屈んてスヴァに差し出す。
スヴァはこれまた器用に地面に落とすことなく、食べる。
1人と1匹、しばし無言になる。
「はあ。うまったなあ」
<ああ、先程の肉もよかったが、こちらもまた味わいが違ってよい>
「もっと食べたいけど、これから買い物もあるし、腹八分にしとかんとな。なあ、スヴァ。今日の夕飯も、屋台で買って食べようぜ」
<いいのではないか。まだまだ、食べた事ないものがあるだろうからな>
「うん。それに色々買ってキープもしときたいよな」
<そうだな。食べ物が買えないという事態が今後起こるかもしれぬからな>
そうだ、不測の事態はいつ起こるかわからない。
せっかく亜空間があるのだ、金のある限り、食べ物はキープしたい。
その為には、食器や容器が必要だ。食べ物をそのまま、亜空間に入れたくない。取り出しにくいし、整理しにくい。
「よし! 午後の初買い物先は、食器や容器を売ってる店。ステラおばさんの店に決定だ」
<ティティよ、いちいち宣言しなくてもよいのではないか?>
「いいんだよ! 買い物はテンション上げてくほうが楽しいんだから!」
<そういうものか?>
「そういうものだよ! お前もテンションあげろよ!」
<うむ>
スヴァの真面目な頷きが面白い。
こいつも自然に色々楽しめればいい。
そう考えつつ、ティティは下町中央広場を後にした。
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