第16話 やっと一日が終了

「うーん。旨かったなあ」

「うむ。美味であった」

 冒険者ギルドの酒場の主人の料理、思い出すだけでもじわりとよだれが滲むほどだ。

 もっと食べたかったが、酒場と化したギルドのフロアに長居するはよくないと、早々に宿にとやって来たのである。

 また是非とも食べると心に誓う、ティティである。

 イリオーネが今晩泊まる宿として薦めてくれた宿は、なるほど冒険者ギルドの真裏で迷う事はなかった。

 特にこれと言った特徴はない2階建ての建物だ。

 宿の名前はギルドの裏宿。まんまだ。

「こんばんは~」

 中に入ると左側のカウンターに初老の男が1人。

「いらっしゃい。泊まりかな」

「はい。一泊お願いします」

「銀貨3枚先払いで。朝食付けるなら、プラス大銅貨3枚だ」

「では朝食付きで、それと従魔も部屋に入れてもいいですか。朝食も私と同じものをお願いしたいのですが」

 そう言いつつ、スヴァを示す。

「そんなチビんこなら、かまわんぞ。そいつの朝食もなら倍の大銅貨6枚だ」

「わかりました。では銀貨3枚と大銅貨6枚です」

 ティティはカウンターにお金を置いた。

「部屋は2階の205を使え。ほら、鍵だ」

 男は鉄の鍵を一つカウンターに置いた。

「ありがとうございます」

 ティティは鍵を取った。

「朝食は6時頃から食べられる。一階のテーブルにこの木札を2枚だせばいい」

「わかりました。それと、できれば、お湯を貰いたいのですが、それとできれば、タオルを一枚譲ってもらえませんか?」

 男はちらりとティティを見ると、口を開く。

「お湯は銅貨5枚、タオルは大銅貨2枚でいい。用意しておくから少ししたら、下りてこい」

 宿屋の主人、色々な事情があると察してくれたのだろう。

 何も聞かないでくれて助かった。いちいち説明するのも面倒である。

「助かります! お金、ここに置きますね!」

 ティティは右端にある階段を昇り、部屋へと向かった。

 部屋はすぐに見つかった。階段を上がってすぐの部屋である。

 鍵を差し入れて、中へと入る。

 部屋はベッドと椅子が一つあるだけの簡易な部屋だった。

 けれど、寝るには十分だ。

「ふう。疲れたな」

 ベッドに両手を広げて身を投げ出す。

 それとともに、なぜか腹の虫がまたきゅうっと鳴った。

「なあ、スヴァ、俺また腹が減ったんだけど、早すぎねえ? さっき食べたばかりだぜ?」

「それだけ、身体が栄養を欲しているのだろう」

「そっか。それだけかな」

 ティティが身体を起こして、首を捻る。

 すると、きゅっとスヴァの腹からも音がした。

「‥確かに、早すぎるか」

「な」

「うむ。一日では何とも言えん。心に留めておこう」

「頼むぜ」

「お主も考えろ」

「俺? 俺、スヴァみたいに頭よくないから、考えても無駄だと思うけど」

「考えようとすることが大事なのだ。わからないからと投げ出したら、そこで終わりだ」

「そっか。そうかもな。わかった。俺も考えてみる」

「うむ」

「けど、それはお湯で手足洗って、亜空間に入ってる食い物食ってからだな」

「そうだな。しかし、言葉使い、元に戻ってるぞ」

「あー。はいはい。明日からはちゃんとするって。それよりお湯をもらってこないとなっと!」

 ティティは勢いよくベッドから立ち上がった。

「それにしても、足りないものばかりだから、明日は買い物メインだな。ま、捨てられたんだから仕方ねえか。やれやれだ」

 ティティはぼやきながら、部屋のドアを開けて、一階へと向かった。


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