第15話 うっまーい!!
さて、ギルド登録も終わり、買い取りも満足のいく金額で終わり、今日終わらせなければならないことはすべて終わった。
もうすでに時間は午後の6時を過ぎている。先程時を知らせる鐘が鳴ったから確かだ。
ちなみに1日は24時間。区切りごとに鐘で知らせてくれる。
今日これから急いで買い物しようにも、店は閉まっているだろう。
買い物は明日だ。
ならば、今日これからしなければならないことは。
きゅっきゅるるっるるるる。
うむ。このお腹の虫をだまらせる事が最優先である。
かといって、これから街に1人繰り出すのは危険だ。
となれば、解決方法はただ一つ。
ティティは迷うことなく、ギルドの夜は酒場と化している場へと進んだ。
そしてカウンターの端にちんまりと座る。
そして酒場のマスターに頼んだ。
「あの、マスターご自慢のお腹に溜まる美味しいものを2皿ください!」
「ぬ!それは俺に対する挑戦か?!」
頭つるり、身体ムキムキのマスター、どうやらノリがいいらしい。
「どうとらえていただいてもかまいません」
わざとツンとお澄ましして答えるティティ。
「ふはははは! 受けて立つわ! 待っとれ!」
そうして待つ事数分。
ことりとティティの前に置かれたのは、美味しそうな匂いを漂わせた一品。
ほわほわに炊かれたご飯を丸く握られたおむすびを、絶妙の焼き加減で巻かれた肉。
その上にアクセントで、置かれた荒く刻まれた香味の葉。それにとろりと塩ダレがかかっている。シンプルだが、絶対旨い奴である。
「うわあ~」
ティティの中で目覚めてから、初めて調理された食べ物だ。
匂いだけで、もうよだれがじゅるじゅるである。
「くくくっ。食え!」
マスターがティティの反応に満足そうに頷いている。
すぐにでも食べたいが、1つマスターに頼まねばならないことがある。それの許可が先だ。
「マスター、2皿頼んだうちの1皿、皿ごともらえないですか?」
「なに?」
「1皿は私の相棒の、スヴァの分なんだ。私とこいつは相棒になったばかりで、こいつ専用の食器を持ってないんだ。やっぱ、獣に使った皿は客には出せないだろう? だから皿を買い取りたいんだ。だから頼むよ。」
「ああ、かまわんぞ」
「やった。ありがとう! これで心置きなく、この絶品を食べられるよ!」
「くくっ!どこまでも、俺を面白がらせる奴だな。ゆっくり食えよ!」
マスターはそういうと、その場を去っていった。
「ほら、スヴァ! 旨そうだぞ!」
カウンターに置かれた皿を足元にいるスヴァの前に置いた。
<うむ。いい匂いだ>
「だろっ! 味わってくえよ!」
ティティは椅子に座り直すと、早速ホークを手に取った。
そして肉むすびに、ホークの腹を当て力を入れる。
肉は引きつることなく、むすびと一緒に綺麗に一口大に切れた。
マスター! 恐るべし!
それを少しの香味の葉を乗せて、口に運ぶ。
「うんまーーーーいっ!」
生き返ってよかったと思った瞬間であった。
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