第14話 身分証をゲッド! お金をゲッド!

 10分後。

 無事にギルド登録を済ませたティティはスヴァを連れて、買取カウンターに戻って来た。

 登録内容だが、ランクは最底辺のFランク。これは仕方ない。ティティは初心者なのだからだ。

 これから最低限Cランクくらいまで行かないと生活するには厳しい。まあ、山でとって来た素材やゴールデンシープの角があるから当分は困らないがな。

 けれど、これで身分証は確保できた。

「お帰りなさい! 待ってたわよ!」

 イリオーネが凄いよい笑顔でティティを迎えてくれる。

「ありがとうございます」

 その笑顔にティティは後ろに足をひきそうになった。

 マージは可愛いが、こちらはがっつり美人だ。綺麗だが、とっても圧がすごい。

「うふふ。やっぱり、依頼残ってたわよ! ささ、ここにサインして! それとギルドカードも貸して! 早速の依頼達成を記録するから」

 ティティが差し出した銅色あかがねいろのカードを受け取ると、嬉しそうに手続きを進める。

「んふ! 薬師のギルエッタさんがとっても喜ぶと思うわ! ずっとボルイモ探してたから!」

「よかったです。お役にたてて」

「こちらこそ、助かったわ! ボルイモは探すのも大変だけど、ジギーネだってこのあたりじゃ殆どとれなくなってたから。今、全体的に品薄なのよ。まあ。薬草に限らずなんだけどね」

「門番さんにも聞きました。なんかここのところ作物も不作だって」

 そう髭面のおっさん、俺が親に捨てられた話したら、そんな話をし出したんだよな。親を恨むなって。いや、恨むよっ。がっつりな。俺は人間できてないんでね。

「農作物だけでなくて、他も採集が難しいんですか?」

「そうなの。植物の育ちが悪くって。まあ、それを言うなら、家畜もなんだけどね。エサになる草花が元気がないからなのかなあ」

 元気がない。それが分かるのは、エルフの特性だからか。

「原因はなんですか?」

「それがわからないのよ。天気だって大きな崩れはないし、日照不足でもない。ここは湖も多いから、水不足でもないわ。みんな真面目に働いてる。なのに田畑の収穫が激減してるの。放牧してる家畜たちも育ちが悪くて。今領主さまやお役人、騎士たち、そして私たちギルドもだけど、原因を突き止めようとしてるわ」

「そうなんですね。だから、なんか町が少し元気がないように思えたんですね」

「えっ! 初めて来たティティちゃんでも、そう思ったの? これは私たちが思ったより深刻かも」

「いや! はは。気のせいかもしれないです!」

 ティティは初めてだが、ジオルは来た事がある。だからつい昔と比べてしまったのだ。

「ううん。ティティちゃんの話、とても参考になったわ。ありがとう。さて、買い取りだけど、、結構なお金になったわよ。全部持っていく? それともギルドカードに貯金しておく?」

 イリオーネは小型の黒板に金額を書いてティティに見せた。金額を言わないのは、危険回避の配慮だろう。うむ。金貨5枚か。これなら、きのこ類は今売らんでもいいな。

「金貨2枚はギルドへ預けます。残りは持って行きます」

 お金はギルドカードを通して預ける事ができる。またいつでも引き出し可能だ。

「保管料が少しかかるけど、いい?」

「はい。全部持ってると万が一の時困りますから、預けるお金からひいておいてください。あ、それと使いやすいように両替もお願い致します」

「わかったわ。では、ここにサインしてね」

 ティティは金額を確認後、言われた場所にサインをする。

「あの、ギルドの事ではないのですが、少し聞いてもいいですか?」

「ええ! 何かしら?」

「カバンや洋服、靴、後食器を安く買える店、よい武器を買えるお店、そして子供が1人で泊まっても良さそうな宿を紹介してもらえますか?」

 イリオーネはじっとティティを見つめた後、力強く頷いた。

「もちろん。とっておきのお店を紹介するわ」

「ありがとうございます」

「ティティちゃんは、この町初めてなのよね?」

「は、はい」

 綺麗なお姉さんに嘘をつくのは心苦しい。まあ、ティティとしてはしては初めてだ。嘘ではないか。

「じゃあ、地図を書いてあげるわ。少し待ってね」

「あ、あのおすすめの宿がここから遠い場合は、近くて素泊まりできるギルドおすすめの安全な宿があれば、教えてください」

「あ、そうね。私おすすめの宿は少し歩くから。今から1人だと危ないわね」

「わかったわ。一晩はギルドの裏手にある宿に泊まるといいわ」

「ありがとうございます!」

「いいのよ。しっかりしてるわね! それなら、冒険者としてやっていけるわよ」

 イリオーネがウインクしながら、紙を取り書き出し始める。

 年端もいかない子供が1人で冒険者ギルドに登録、それで色々察してくれたのかもしれない。このお姉さんは新人に対する以上に親切にしてくれた。

 ありがたい。

「イリオーネお姉さん、本当ありがとうございます」

 右手を胸に当てて、頭を15度下げる。

「まあ! まるで騎士の礼ね! ご丁寧に! じゃ、もう少し待ってね」

「あ、はい」

<気をつけよ。山の村の出身の子供がそんな礼せぬぞ>

 傍らにいるスヴァからのするどい突っ込みが頭に響く。

<わかってるよ! ついくせで>

 ジオルは騎士ではなかったが、魔王討伐軍に加わった際に、最低限の作法を叩きこまれたのだ。国の恥になるなとのことで。

 それは確かにジオルを見る貴族様の目を少し変える役にはたった。だから、自然に身についてしまったのだ。

<本当気を付けなきゃな>

 目立って何かの事件に巻き込まれるのは避けたいティティである。

 めんどくさいのはごめんである。


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