第6話 食べ物はどこですかぁ♪

「すぐに食えるもの、すぐに食えるものはどこだあ」

 とにかく、腹が減っている。あのくそ親はどうせ捨てるのだからと、この子に何も食べさせてないのだ。

「普通、最後ならって、美味しいものを食べさせてやらねえか?」

 それが親の情ってやつじゃないのか。

 それすらないのは、この子を疎ましく思っていただけなのだろう。

 ティティは自分の胸に手を当てて言い聞かせる。

「大丈夫だ。俺が、この子を可愛がってやる」

 だから、いつでも出てこいよ。すぐ、この体を返してやるから。

「なんだ? 自己愛の強いやつだな」

「ちげえわ!!」

 叫んだ途端にお腹が、ぐうっと鳴る。

「おう。早く何か食わないと、倒れる」

 それでなくても、がりがりのひょろひょろなのだ。

「木の実、木の実と」

 ジオルの知識を使い探していく。

「おっ!トゲボウシ!」

 秋の定番の木の実である。

 とげとげの小さい赤黒い実で、知らなければ、食べようと思わないかもしれない。

 ティティも教えられるまでは、食べようと思わなかった。

 しかしこれが口にいれると甘酸っぱくて美味しいのだ。

 ティティは素早く3、4個をとると、口にがばりと入れた。

「ん~!んまい!!」

 次に採ったものを、スヴァにも取ってやる。

「ほいよ」

「うむ」

 スヴァもはぐりと食べる。

「少し酸っぱいな。だが、旨い」

「だろっ! もっと食えよ!!」

 自分も口に入れながら、スヴァの分も取ってやる。

「むっ!」

 突然スヴァが、びくりと身体を強張らせた。

「どうした!?」

「受肉した」

「はあ?!」

 何を言っているのだ、こいつは。

「お主から出た時から、食べ物を口に入れるまで、我は実態がなかったのだ」

「どういう事だ?」

 ちゃんと肉球の感触がしたよ? 気持ちよかった。それは魂が繋がってたから感じたのか?

「魂だけの存在で、とても不安定だったのだ。しかし、食べ物を食べた事で、実態が安定したようだ」

「そうかよ」

 なんだかわからんが、存在が安定したのならいい。

「これなら、狩りもできそうだ」

「おっ! それは期待してる!」

 なんせ、自分は今戦闘力は皆無だ。動物を狩るなんて無理だからな。

「そういうことなら、力を出す為に、たんと食え!」

「うむ」

 しばらく、2人は無言で食べた。

「ふう。満腹だ」

 ティティは普段あのくそ親に遠慮して食べていなかったから、小食で胃が小さいのかすぐに満腹になってしまった。

 今はいいが、これでは力が付かない。

 これからは沢山たべるようにしないと、剣も持てない。防衛もできない。

 がりがりから脱出せんとな。

 ティティはトゲボウシを取れるだけとると、亜空間に入れておく。

 食べ物はすべて確保だ。

「さてお次はっと」

 腹が満ちた事で、少し歩みが早くなる。

 とはいっても、足もぽっきん行きそうなほどほっそいから、気をつけんと。

「おっ! アケカズラ!」

 アケカズラ。他の木に蔦を絡ませ、たわわに実をつけた山で定番の木の実を次に発見。

 楕円形の紫の実。中に白く甘い果肉と黒い種がぎっしり詰まっている。

 これはナイフか何かで実を切らないと食べられない。手ではちぎれないのだ。

 残念。

 が、もちろん確保である。これも次々にとって亜空間にいれる。

「おおっ!ノルビルもあるな」

 ノルビル。細長い葉を持つ。雑草に見えるが、これは根が食べられる。

 辛みのある調味料をちょっとつけると酒にあうのだ。

 そのままでも食べられるが、さっぱりしすぎて味気ない。

 今は食べずに亜空間に放り込んでおく。

「秋だから、キノコが欲しいな」

 自分たちで食べる分も欲しいが、金にする為の素材として欲しい。

「マツボリダケがあれば、超嬉しいんだけどなあ」

 マツボリダケ。そのままでは苦くてとても食べられないが、薬やポーションの材料になり、とても希少な素材なのである。

 ジオル時代に山でとっては金に換えていた。

 希少なだけに、滅多には見つからないものだ。

「むっ!」

「どうした?!」

 横を歩いていたスヴァがいきなり、走り出した。

 ティティの問いに答えることなく、トップスピードで駆け出していく。

 子供とはいえ、四つ足の獣が全力疾走に、追いつけるわけがない。

「おーい! なんだ? なんか見つけたかあ?」

 仕方がないので、しばらく待つ。

 匂いで追ってくるかとも思ったが、はぐれても怖い。

 手持無沙汰なので、周りを見て、木の下に落ちている。枝を見繕う。

 今のところ、魔物や動物を見ていないが、これから出て来る可能性が高い。

 武器を持っておこう。

 ちょうど、ティティが持っても負担にならない程度の重さの枝を見つけた。

 軽く振ってみる。

 うん。いい感じである。

 武器がこの枝一つというのは、心もとない100パーセントだが、仕方がない。

 ないよりましだ。

 街にでたら、ナイフは必ず手にいれなければ。

 そう考えているうちに、スヴァが何かを咥えて戻ってきた。

 おっ!早速捕まえたのか?!


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