おまけ55・久美子、最終決戦場に踏み込む

 そしてまたしばらく時間が経った。

 あの後また時間を作って、やっと家族で動物園に行けたときは嬉しかったな。


 マンティコアの檻の前では、息子にマンティコアの話している言葉をマイルドに通訳して、教えてあげたら。


「お母さんすごい」


 みたいな目で私を見て来たので。すごく気分良かったよ。




 あれ以来、大きな事件は起きて無くて。

 そろそろ、2人目を作ろうと夫に持ち掛けているんだけど。

 ……彼、何か悩んでる。


 理由がよく分からない。

 これは1回かっちり話し合うべきだよね。


 私は山河を産むの大変だったけど、自分が兄が居たから子供は2人以上欲しい。

 できれば次は女の子が欲しい。


 彼が2人目の子供を持つことに悩む理由って何なのか。

 ……色々考えたけど。


 魔力保持者カップルの間に産まれる子供が魔力保持者になる確率は、非魔力保持者のカップルの場合と比較して高くなる。


 このことかな……?

 この国で魔力保持者に産まれてくることって、実のところ不幸な部分あるからね……


 私たちは幸せになれたけど、歴史上、不幸になった人、沢山いたと思うし……。



 そんなことを考えて日常を過ごしていたある日。


 こんな事件が起きた。


 国立原子力発電所が赤い牙に占拠された。


 とんでもない事件だ。

 連中はそれを使って、皇帝陛下の退位と、政権の明け渡しを要求していた。


 当然、四天王の出動要請が出る案件なので。

 私たち4人は、原発に向かった。


 そこで出会ったのは……


 石化している国防軍兵士の人たちと……


 3体の魔物。


 コカトリス、ストーンエイプ、そしてケルベロス……


 そして私たちは何だか嫌な予感がしたので。

 この3体の魔物は私たちが受け持ち。

 夫を先に行かせることにしたのよね。


 私の夫は強いから。

 多分ひとりでも何とかしてくれる。

 そう信じて送り出した。




 私はコカトリスを受け持った。


 佐倉さんがストーンエイプ。

 そして小石川さんがケルベロス。


 ケルベロスは火炎のブレスを吐くから、火炎無効持ちの私か小石川さん担当になることは決まってて。

 そしてコカトリスは石化能力を持っているので、距離を取って戦うのが基本。


 だったら、ドラゴンキラーを使える私に、コカトリスのお鉢が回ってくるのはある意味当然だと思う。


 コケーッ!


 ……鶏そっくりの鳴き声。

 大きさは全然違うんだけどね。


 コカトリスは鶏と蛇を合体させたような姿をした魔物で。

 大きさは3メートルくらいだ。


 私の前で、コカトリスは警戒してる。

 私のことを舐めてない。


 ……私の構えているドラゴンキラーが伊達でないことに気づいているのか。


 ドラゴンキラーは対竜種ライフル。

 撃ち出す徹甲弾は、命中すればドラゴンでもひとたまりもない。

 当然コカトリスも即死すると思う。


 ……命中すれば。


 装弾数7発あるから、こっちとしては余裕あるけど。

 弾丸がね、1発5000円もするから。

 予算を減らさないために、確実に当てて行かないとダメだ。


 急激に踏み込まれて危険な状況の発生しにくい距離。

 1メートル半くらいの距離が良さそう。


 コカトリスがその距離に入って来るのを、私はひたすら待った。

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