おまけ54・久美子、素手で戦う

 山火事になってる北海山。

 まだ山河が産まれる前に、大河と……夫と一緒にマンティコアとユニコーンを処理しに行った山だ。


 この近くに原子力発電所を作るから、ここに華族の住宅地を作る。

 そのために派遣されたんだけど。


 そこに反社がロケット弾を打ち込んで山火事にしたんだよね。

 だから、そこに住んでるユニコーンが危なくなった。


 ……そのせいで。


 私たちは、ユニコーンを救助することが命じられた。


 このせいで私の家の一家団欒が、パァ。

 1か月前に計画していたことなのに。


 夫と息子と一緒に動物園。

 どれだけ楽しみにしていたか。


 デスクワーク調整したし、その他雑多な業務についても、邪魔にならないように頑張ったのに。


 ……許せない!


「久美子さん落ち着いて」


 私と組んでユニコーンの救助作業を任された小石川さんが、私にそう声を掛けた。


「何がですか!」


 一緒に山の中を走りながら、小石川さんに返答する。


 小石川さんは


「目がつり上がってるわ。平常心平常心」


 ……そんなに?


 それはまずい。

 夫に幻滅されたくないし。


 ……いや、恋愛脳的な意味合いじゃないけど。

 一般常識の範囲で。


 鬼嫁なんて言われたくないのよ。


 そのときだった。


「動くな」


 いきなり、複数の黒づくめの男たちが出現したんだよね。


 黒づくめで、突撃小銃を構えているヘルメット姿の男たちが。




 こいつら……!

 こいつらのせいで……!


「藤井大河の攻略に使用する。抵抗しなければ殺しはしない」


 なんかほざいてるね。


 ……そっか。

 人質に使えると思ってるのね。

 私を……


 男たちは6人くらいいたけど。

 私は飛び出した。


「……警告したぞ?」


 そう言いつつ。

 男たちは一斉に私に発砲してくる


 私は顏を庇って突っ込んだ。

 襲って来る銃弾。


 私は痛かったけど、意に介さないで突進し続ける。


「ちょっと待て! 何で死なないんだ!?」


「銃弾が無効なのは藤井大河だけじゃないのか!?」


 ……男たちが焦り出した。

 どうも、私が夫の魔力を双転写している事実は伝わっていないらしい。


 見たか……これが私と大河の愛の結果なんだよッッ!


 そしてそのまま男たちの1人にテレフォンパンチ……? を繰り出した。

 ……全力で。


 なんかで読んだけど、野生動物には有段者でも普通、素手の技が通用しないんだよね?


 つまり、何を言いたいかというと……


「うごおおっ!?」


 女の拳……いや、貫手なんて避けるまでもないというのが無意識であったのか。

 回避が遅れる。


 そう……私は拳ではなく、貫手で攻撃をしていた。

 武道の有段者でも無いのに。

 全力で、だよ?


 普通は脱臼して自爆するはずの技。


 だけど私は物理攻撃が効かないので。


 ……脱臼しないんだなあ。

 全力で突き指上等の貫手を繰り出しても。


 だからね、おそらく関節技も効かないんじゃ無いだろうか。

 いや、痛みは感じるかもしれないけど。

 関節破壊には行かないと思う。


 私の貫手は、そのまま男の1人の肩に突き刺さり。

 その男の肩を砕いていた。


 こんなの、格闘技でも何でもない。

 自分が得たスペックと、理詰めで動いた結果の人体破壊術。


「あぎゃああああ!」


 男が悲鳴をあげる。

 だが私は一切容赦しない。


 お前たちのせいで!

 私の息子は動物園に行く思い出を潰されたんだ!


 次はいつになるか分かんないのにッ!

 この国賊めッ!


「お前たちのせいで動物園に行けなくなった! 反省しろぉぉぉっ!」


 私は叫びながら、黒づくめのテロリストたちをぶちのめしていく。

 一方的に。


 ……男たちは「魔力・ネメアの獅子」の所有者と戦闘をする覚悟を決めていなかったのか。

 2分持たずに全員沈黙した。


 バタバタ倒れて、沈黙しているテロリストたちを足下に、吼える私。


「反社の連中なんて消えて無くなれッ!」

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